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劇団笛さま「きりきりまい」
こんばんは! さのあやねです。
演劇サークル・劇団テアトルジュンヌのWebときどき作・演出です。
HP「ふくろうのうた」で脚本を公開しているので、ぜひ遊びにきてください!
公開中の脚本「きりきりまい」を山口大学の劇団笛さまが上演してくださったので、観劇レポートを書いてみようと思います💪
⚠️脚本の中身を知っている方向けです⚠️
観劇レポートから読みたい方は、目次から「観劇レポート」に飛んでください!
山口県。
自分の脚本が上演される一大事とは言え、観に行くには遠い距離です。
さて、なにが私の一人旅を後押しをしたでしょうか!
ぜひ「余談」までご覧ください。
「きりきりまい」概要
概要
劇団テアトルジュンヌ2024年4月公演のための書き下ろし。
上演時間は約1時間。
男1、女1、その他5〜の、7人から演じられるフリー脚本です。
はりこのトラの穴さまやHP「ふくろうのうた」で公開中。
あらすじ
新しい僕になるために、過去のすべてと縁が切れますように。
縁切り神社に訪れた桐谷に、そこに祀られている神は縁が切れるという〈縁切り鋏〉を与え、自分自身の手で縁を切るように言いつける。
「ただし知っておくといい──その糸は、誰かの臍の緒であり、どこかの電話線であり、いつかの子午線なのだと。」
意味深な言葉に怖気付く桐谷の前に、縁を切ってほしいと願う依頼人が現れはじめる。
山口大学劇団笛2024年夏公演 概要
日時・場所
2024年8月12日 14:00〜
19:00〜(中止)
山口大学 大学会館 大ホール
劇団笛さまについて
山口大学の演劇サークル。山口大学生で構成され、現在所属は16人。1990年5月19日「ガラスの動物園」で旗揚げ。プロの脚本家の戯曲を中心に上演し、様々な演劇活動を続けている。
劇団笛さま 各リンク
・公式X
観劇レポート(ネタバレ注意!)
開演前
![](https://assets.st-note.com/img/1724384014590-iMDp9KYFXJ.jpg?width=1200)
立て看板、発見!
初めてフライヤー(公式Xに飛びます)を見たときから思っていたことですが、宣伝美術さん(情報宣伝・制作さん)のレベルが高すぎる……。
あんまりかっこいいので、「いいんですかこんな贅沢……」と混乱しました。
受付でチケットと当日パンフレットをいただいて、会場へ。
チケットは本記事のサムネにもなっています。
![](https://assets.st-note.com/img/1724384514556-m5kLU0hDY7.jpg?width=1200)
とても読み応えのある当日パンフレット。
〈お題〉「繋がりたい縁」に、公演関係者が一言ずつ答えています。
「笑わせてくれる人」「割引」「優良企業」に、思わず頷いちゃったり。
それから演出挨拶を読んでいるうちに書いたときのことを思い出したりしました。
1人の人間がつくられるには、何が必要なのか
他の人と関わらず一人で生きていくことは不可能なのであって、それはとても嬉しいことでもあり、同時にとてもつらく思われます。
ところで、私が「きりきりまい」を書いたのは、新入生歓迎期間中の公演に向けてでした。つまり、新入生とのご縁がありますようにというスタンスで書いていたわけです。
それが、「新たな仲間との縁を大切に」(当日パンフレットより)、新入生を迎えての公演として上演されるということに不思議な感じがします。
舞台美術
舞台上には、色とりどりの布と糸が垂れかかった、白い2つの壁が立っている。中央に一つ。上手に一つ。上手には階段がついている。
この上手の階段からエノキが登場します。
椅子として白い箱が三つ。
テアトルジュンヌでも白い箱を三つ使ったので、白い箱×3にご縁を感じました。
色とりどりの布と糸は視覚的に賑やかなだけでなく、
縁の演出にも活用されていたことがとても印象的でした。
衣装・キャラメイク
・桐谷
桐谷は極限まで個性を削りとったかのようなキャラクターになっていました。彼は、きっと誰でもなくて誰でもあるような人なのだと思います。
・杉田
桐谷から一転、破天荒・猪突猛進なキャラクター。
彼女が物語を引っ張っていってくれました。
そうか……これくらい杉田をはっちゃけさせてもよかったんですね……。
杉田の演出に悪戦苦闘した思い出があるので、個人的勉強ポイントでした。
・集合的意識たち
白い半透明のフードの下には、スーツや制服などが透けて見える。
それが、彼らの所属先をさらに曖昧にしているように感じます。
縁を表す色とりどりの糸を持って縦横無尽に舞台を動き回る意識たちは、
舞台に動きを生み出していたし、何より話をとてもわかりやすくしていました。
・エノキ
驚いたのは、エノキのキャラクターでした。
上手の暖簾をくぐって現れたエノキは、どくろのついた杖でも持っていそうな、放浪する坊主風のエノキ(!)。
極端に静かな抑揚が人間味をなくしていました。
優しく話を聞いてくれるけれど、味方ではない。
どことなく一線を引かれている不安感が拭えない。
そんなエノキでした。
テアトルジュンヌの発声つよつよ・煌びやか・エノキとほぼ対極のキャラメイクなのに、こんなにしっくりくるのか……とびっくり。
・依頼人たち
もちろんそれぞれ個性があってよかったのですが、特に縁切り前後の差をきちんとつけられていて……本当に……すごい…… 泣
差を出すの難しいですよね……いや本当に……。
依頼人1はちゃんとウケていて、書いた人としては一安心!
依頼人2は、流れやすくなってしまうところかと思うのですがそんなこともなく。個人的には後ろで手を繋ぎ損ねる意識たちの演出がわかりやすくて、とてもよかったと思いました。
依頼人3は、「あれ? なんかまずいのでは?」となるターニングポイントでもあるキャラクターなので、一番”差”がわかりやすく演じられていました。
依頼人4は、最初の「すいません」が、声だけの登場だったんです。それだけで舞台の雰囲気がガラッと変わって、観客も「誰が来るんだろう?」と引き込まれる演出になっていて、そうか、その手があったのかと……。
本当に勉強になることばかりです。
演出
意識たちの動き、役者たちの会話。すべてがスローテンポで、それが「異世界」感を演出していました。
テアトルジュンヌ版と比べると、「異様」「不気味」「ホラー」感が強かったように思いますし、概念的でどことなく掴みづらい舞台という印象が強い演出でした。
このような世界観の演出が前述のエノキを”そういうもの”として顕現させるのに大きく作用していたように思います。
そういえば、エノキの世界には、波の音(風の音?)が常に流れていたように思います。
ざざー。ざざー。
音に合わせて意識たちが揺れる様子は、私たちの意識の揺らぎでしょうか。
衣装などを含め、仏教的な要素を強く感じるエノキの世界でした。
特に印象的だった演出は、やはり、桐谷が自分の縁を切るところでしょうか。
桐谷の周りを集合的意識が円になって取り囲み、彼らと桐谷は色とりどりの糸で結ばれています。その糸を切ってしまうと、舞台が真っ赤に染まって(照明)、桐谷がばたりと倒れる。次の瞬間、集合的意識たちが一斉にばたりと倒れてしまう、あのシーン。
とてもインパクトがありましたね……!(ペ○ソナ5の総攻撃シーンを思い出しました。趣味バレ必至の感想です)
恐怖と絶望を感じさせる演出で、演者さんと照明さんの息を合わせるのにたくさん練習されたのだろうと思いました。
終演後
終演後、少しだけ演出さんとお話ができて嬉しかったです。
「これ演出できないよね?」と悩みながら演出されたとのことで、「ですよね!!」と言ってしまいました。書くときと演出するときは脳みその違う部分を使うのか、自分で書いておいて「なにこの脚本!?」と頭を抱えていた思い出が蘇ります……😌
そんな演出さんのブログが公開されていたので、ぜひ読んでみてください!
こういった裏話はいくらでも聞きたいですよね。これをおかずにしてご飯食べます。
最後に
初めて自分の書いた脚本がよその劇団で上演されることになった、劇団笛さまの2024年夏公演。
演出の勉強にもなりましたし、なにより一歩引いたところから自分の脚本を見つめ直す機会になりました。
充実した時間を過ごすことができました。
劇団笛さま、特に演出のお二方、本当にありがとうございました。
この度のご縁に感謝いたします。
余談
山口県。自分の脚本が上演される一大事とは言え、観に行くには遠い距離です。
さて、なにが私の一人旅を後押ししたかと申しますと……
![](https://assets.st-note.com/img/1724409510602-yOsbhAOGeL.jpg?width=1200)
こちら、中原中也記念館です!
神保町の古本屋でたまたま詩集を買ってからどハマりしているため、在学中に一度は訪れたいと思っていた場所です。
劇団笛さまに上演のお話をいただいたときに真っ先に調べたのは、山口大学とこの記念館の距離でした。
なんと徒歩30分ほど。
なんというご縁!! 私にとって初めての経験となる上演が、あの中原中也縁(ゆかり)の地とは!! もう行くしかない!!
中原中也に会いに!!
……旅の主旨を半ば見失うところでした。
いえ、中原中也も「きりきりまい」も主旨にしてしまえばいいのです。
![](https://assets.st-note.com/img/1724410173106-kU8p3Ve6vH.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1724410283654-PmuYleoBdu.jpg?width=1200)
この後、演劇人にお馴染み・外郎も、そのほか色々なご当地お土産も、家で美味しくいただくなど……
食べ物の話ばかりしてましたね。
もちろん、中原中也のお墓にお参りしたり、記念館で豆本ガチャ(一回100円)やお散歩サコッシュを手に入れて、終始ルンルン気分でした。
こんなに楽しんでいいんですか……??
私にこのようなチャンスを与えてくださった劇団笛さまには感謝してもしきれません。