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アブザンパルへリオン解説

はじめに

こんにちは。
カードボックス青馬堂書店矢向店で2022/9/19開催のチャンピオンズカップエリア予選を現環境で使い続けていたアブザンパルへリオンで抜けることができました。
良い機会なのでアブザンパルへリオンについての解説を書きました。初めてのデッキ解説記事なので至らない点は多いと思いますが、読んでいただければ幸いです。

自己紹介

まずは簡単な自己紹介を。平山 怜です。普段は東京でマジックをしています。過去の実績としてはプレイヤーズツアーオンライン3の準優勝、Finals2019準優勝や、パイオニアフォーマットにおいては元パイオニア神などです。

アブザンパルへリオンとは

《大牙勢団の総長、脂牙》を出して墓地に落ちている機体を釣りあげるデッキです。3ターン目に攻撃してくる《パルヘリオンⅡ》は、何故《大牙勢団の総長、脂牙》が禁止になっていないか疑問を持つほど簡単にゲームに勝たせてくれます。

そしてアブザンパルへリオンのもう一つの特徴として、コンボ以外のゲームプランを持っていることが挙げられます。《エシカの戦車》《領事の旗艦、スカイソブリン》はスタンダードを席巻した強力なカードであり、それぞれが1枚で十分ゲームに勝つ力を持ち合わせています。

同じく《大牙勢団の総長、脂牙》コンボ+ミッドレンジプランをとるデッキにマルドゥパルへリオンがあります。単体で強力なカードでありながら手札の機体を捨てる手段になる《税血の収穫者》《鏡割りの寓話》を中心に、ラクドスカラーの優秀なカードと《大牙勢団の総長、脂牙》を合わせたデッキです。

ゴルガリミッドレンジは環境に存在しませんが、ラクドスミッドレンジは環境トップデッキです。そうなるとミッドレンジプランがより強力に見えるマルドゥパルへリオンのほうが強いと感じるかもしれません。しかし、マルドゥパルへリオンはアブザンパルへリオンとは違い《エシカの戦車》のような優秀な機体もいなければ《忌まわしい回収》のような強力な機体を落とす手段もありません。ミッドレンジプランが強力な代わりにコンボの成功率が低いのです。

結果として、《パルヘリオンⅡ》という手札では何もしないカードと《大牙勢団の総長、脂牙》という《踏みつけ》を失った《砕骨の巨人》を採用したラクドスミッドレンジのような、中途半端なデッキになってしまっているように思えます。

決まりやすいコンボプランと強力なミッドレンジプランのバランスの良さが、アブザンパルへリオンの最大の魅力です。

デッキリスト

エリア予選を抜けた際に使用したリストです。

メインデッキ

4 《大牙勢団の総長、脂牙》

デッキの中心。ただ強。

4 《パルヘリオンⅡ》
4 《エシカの戦車》
2 《領事の旗艦、スカイソブリン》

機体は10枚で一般的なリストに比べて多めに採用しています。たくさん入っているとその分墓地に落ちやすいからです。
《パルヘリオンⅡ》が釣り上げて最も強力ですが、《エシカの戦車》を釣り上げれば《トヴォラーの猟匠》、《領事の旗艦、スカイソブリン》を釣り上げれば《炎の大口、ドラクセス》になり、《パルヘリオンⅡ》以外の機体でも3マナの動きとしては十分すぎます。

《エシカの戦車》と《領事の旗艦、スカイソブリン》

《エシカの戦車》と《領事の旗艦、スカイソブリン》がコンボパーツでありながらミッドレンジプランを支える基盤になっていることで、コンボプランとミッドレンジプランの両方をデッキに取り込むことができます。

4 《忌まわしい回収》

めくる枚数が5枚とほかの墓地肥やしより多く、クリーチャーも拾える文句なく最強の墓地肥やし。
インスタントなので構えたくなりがちですが、機体の素出しに向けて土地が拾いたいときは自分のターン中に唱えましょう。ファストランドしかなかったときに悲惨なことになります。

3 《サテュロスの道探し》

クリーチャーであるため《未練残り》や《忌まわしい回収》に対応しています。めくる枚数も4枚と《忌まわしい回収》の次に多いです。ただしパワーが低くで機体に乗ることができず、マナフラッド要因であり、意外と欠点は多くあります。

3 《ウィザーブルームの命令》

めくる枚数は3枚と少々心許ないですが、代わりにいろいろなモードが書いてあるためいろいろなことができます。
特にこのデッキの天敵である《未認可霊柩車》《安らかなる眠り》を破壊できるカードであること、緑信心の《ラノワールのエルフ》や《狼柳の安息所》を破壊しながら墓地肥やしを行えることが高評価。
土地回収のモードについても中盤以降はすでに落ちている土地を拾えるため、外すリスクのある《サテュロスの道探し》より安心して唱えられる状況があります。

4 《ラフィーンの密通者》

手札に引いている機体を捨てるためのカードです。一見本当に構築で使うか疑いたくなりますが、即座に手札を捨てられること、2マナのクリーチャーであること、《領事の旗艦、スカイソブリン》に搭乗できるパワー3になれること、最低限とはいえドロー能力を持っていること….いくつか望ましい条件を並べていくと引っかかるのはこのカード以外ありません。

4 《思考囲い》
2 《強迫》

黒いデッキのお供。コンボデッキとは特に相性が良いです。
《思考囲い》だけでなく《強迫》までメインデッキに採用しているのは、基本的に2マナの墓地肥やし→3マナの《大牙勢団の総長、脂牙》と動くこのデッキにとって、アクション数を増やすためには1ターン目から行動できるカードが重要だからです。

《思考囲い》は自分に対して唱えて手札の機体を捨てることができます。《強迫》は対戦相手しか対象に取れないのでこの動きはできません。

2 《未練残り》

墓地に落ちた《大牙勢団の総長、脂牙》にアクセスするカードです。ほかのクリーチャーを釣り上げることで複数の役割をこなせたり、軽いためツーアクションを取りやすいカードではありますが、現在のリストは採用クリーチャーの枚数が少なく、被ると腐りやすいため枚数は減らしています。

2 《ウルヴェンワルド横断》

土地カウントを担保しながら《大牙勢団の総長、脂牙》にアクセスできるカードです。このカードを唱えられるということは緑マナはでているので、サーチ先の基本土地は沼と平地のみです。

1 《残忍な切断》

メインデッキ唯一の除去。多少ゲームが長引いたときに《フェイに呪われた王、コルヴォルド》《ゲトの裏切り者、カリタス》のようなシステムクリーチャー1枚に負けることが多かったので、なんでも触れる汎用的な除去を1枚採用しました。

サイドボード

サイドボードに採用するカードは以下のどれかの役割を持つことになります。
① 相手がサイドボードしてくるカードに対応するためのカード(例:《突然の衰微》、《沈黙》)
② ゲームプランを変更するためのカード(例:《茨橋の追跡者》《領事の旗艦、スカイソブリン》)
③ 相手のデッキに対する対策カード(例:《未認可霊柩車》《致命的な一押し》)
《大牙勢団の総長、脂牙》コンボには単体除去や墓地対策など、あらゆる角度のサイドカードが有効です。そのため、①の役割は相手が採用・引いてきた多様なカードに適切に対処できなければ引いてきた意味がありません。

《羅利骨灰》で《未認可霊柩車》を対策していても《引き裂く流弾》には無力ですし、逆に《沈黙》を唱えても《未認可霊柩車》がいればコンボが決まることはありません。アブザンパルへリオンは今非常に使用率の高いデッキで、対戦相手もサイドボードをしっかり用意しています。それらに対して真っ向から勝負を挑むのは非効率的です。
なので①の役割は《突然の衰微》のような③の役割も兼ねる汎用的なもののみに採用を抑え、対策の多い相手はミッドレンジプランで対応する構築を意識しました。

2 《茨橋の追跡者》

ミッドレンジプランをとる際に増量する用のクリーチャーです。単体で《エシカの戦車》に乗りながらコピー用のトークンまで供給することができます。元祖《不屈の追跡者》と比べるとすぐにパワーが4、タフネス3のため《砕骨の巨人》に《踏みつけ》られずに《鏡割りの寓話》のトークンを受け止めることができるサイズが優れています。

1 《長老ガーガロス》

除去されないと強い。デッキのほかのカードがソーサリー除去に強いので、《戦慄掘り》のようなカードはサイドアウトされがちです。1枚入れておくことで《ウルヴェンワルド横断》のサーチ先として優秀な選択肢になります。

3 《未認可霊柩車》

最強の墓地対策です。機体であるため破壊されても《大牙勢団の総長、脂牙》で釣り上げられることが魅力。引くかどうかでミラーマッチの勝敗に大きな影響を与えるので多めに採用しています。

1 《領事の旗艦、スカイソブリン》

サイドボードに追加で1枚とっています。《エシカの戦車》《パルヘリオンⅡ》をどちらかを抜く際に、入れ替えることで機体の総数を減らさないようにしています。
ラクドスミッドレンジがミラーを意識して採用するようになっているほど有効なカードであり、デッキにも非常にかみ合っているため伝説の重いカードであることを考慮したうえで3枚目を採用しました。

1 《強迫》

追加の1枚。《不屈の独創力》コンボやコントロール用に追加で採用しています。

3 《致命的な一押し》

クリーチャーデッキ用。軽い。強い。
デッキのコンボパーツがすべて2マナ以上であるため、1マナのこのカードは余ったマナを当てやすいです。

3 《突然の衰微》

《未認可霊柩車》《安らかなる眠り》のようなカードを対処しつつ、2マナと比較的軽いため除去としても使いやすいです。

1 《ポータブル・ホール》

《突然の衰微》と《致命的な一押し》の中間のカード。基本的には前述した2枚のどちらかのほうが優秀ですが、対緑単で2マナの単体除去は重すぎ、相手のマナ加速カード・サイドインされたカーンの置物を触れる1マナのカードがほしいと感じたので1枚採用しました。クリーチャーデッキにももちろん除去としてサイドインします。

非採用カード

《異界の進化》

《大牙勢団の総長、脂牙》をデッキから直接出すことができます。《ウルヴェンワルド横断》と比べた時の一番のメリットは3ターン目の《大牙勢団の総長、脂牙》のパターンを増やすことができることです。
しかし、このカードを使用するにはクリーチャー数をある程度確保する必要があり、そのために《縫い師への供給者》のようなコンボ一辺倒のカードを採用しなければなりません。デッキ全体がコンボに寄ってしまい、サイドボード後もコンボ一辺倒のカードが残ってしまいがちになります。
そうなるとこのデッキの魅力であるミッドレンジプランへの移行が難しくなります。少なくともミッドレンジプランが非常に有効なラクドスミッドレンジが環境トップである限りは、《異界の進化》を採用しない型を使うべきだと思います。

《ヴェールのリリアナ》

昭和

デッキに入れたいと思う理由がよくわからないので採用していません。
布告除去は他に盤面干渉手段を持たないため、一番弱いクリーチャーを生贄に捧げられるだけでありこのデッキでは強く使えません。手札を捨てる手段としては3マナのこのカードより優秀なものはいくらでもあります。

《墓地の侵入者》

墓地対策としては《未認可霊柩車》より弱く、追加のクリーチャー枠としては《茨橋の追跡者》より弱いと感じました。役割が明確な2種を採用しています。

《虚空の力線》対策

このリストでは、75枚に《虚空の力線》を対処できるカードを一切採用していません。《安らかなる眠り》等と違い手札破壊で落とせるタイミングもないので、対戦相手が《虚空の力線》を初手に持っていた場合はそのゲームは墓地とお別れすることになります。しかし、以下の理由で《虚空の力線》用のサイドカードは用意しないほうがいいと判断しました。

1. 触れるカードが弱い

《突然の衰微》で破壊できない《虚空の力線》は、対処手段で汎用的な強いカードがありません。《暗殺者の戦利品》《耐え抜くもの、母聖樹》は、《虚空の力線》を墓地肥やしを唱える前に破壊しないといけないことを考えると、早いターンに使わなければならず、土地を渡すデメリットが痛すぎます。《羅利骨灰》はキッカーで何でも触れるようになるため最低限の汎用性はあるとはいえ、世間一般の常識では4マナの単体除去は弱いとされています。

2. 《虚空の力線》を置かれる=負けのデッキが主要デッキにいない
《虚空の力線》を置かれた場合、《大牙勢団の総長、脂牙》での釣り上げは不可能になりますが、《エシカの戦車》《領事の旗艦、スカイソブリン》のミッドレンジプランは健在です。《虚空の力線》はカードの性質上相手のマリガン回数は増え、ほかの手札の質は落ちやすいため、ミッドレンジプランを狙える相手には置かれた上から無視して勝つことも多いです。現状主要デッキ内でサイドボード後もコンボ一辺倒を目指す相手は緑信心のみであり、緑信心はデッキの性質上《虚空の力線》を採用していないです。なので《虚空の力線》は置かれてもミッドレンジプランでの勝利を目指すことにしました。

キープ基準とプレイ指針

主にメインデッキ、相手がデッキがわからない想定で考えます。メインデッキは基本的には最速でコンボを決めることを目指します。そのときの簡単なキープ基準とプレイ指針について記載します。

キープ基準

アブザンパルへリオンは相手に干渉する手段が少ないデッキであり、コンボが決まっても直接勝つわけではなく、あくまで13点与えながら天使トークンが2体が出るだけです。相手の盤面がすでにそれ以上強力になっていればそこから負ける可能性があります。
参考までに、パイオニア界きっての不干渉コンボデッキであるロータスコンボは、おおむね5キルです。現環境であまりロータスコンボが勝っていないことから考えると、5ターン目始動のコンボは間に合っていないと考えられます。
なので、基本的には4ターン目までにコンボを決めることを目指します。

コンボに必要な要素は、以下の3つです。これらを用意できそうな手札をキープすることになります。

1. 土地三枚
2. 《大牙勢団の総長、脂牙》
3. 墓地に釣り上げる機体

この中で、ボトルネックとなるのは2. 《大牙勢団の総長、脂牙》になります。なので初手で《大牙勢団の総長、脂牙》に素引き以外でアクセスできる見込みのない手札は基本的にマリガンになります。
マリガン率自体は非常に高いですが、自分の動きを通せばダブルマリガンやトリプルマリガンをしても勝てるデッキなので積極的にマリガンしましょう。

サンプル初手1

マリガンです。《大牙勢団の総長、脂牙》にアクセスする手段がないです。一見すると初動の揃っているよさそうな手札に見えますが、実態はゴミをならべたあと、なぜ対面するアブザンパルへリオンだけ毎回《大牙勢団の総長、脂牙》を引けるか嘆きながら死ぬことになります。相手が毎回《大牙勢団の総長、脂牙》を引けるのは、《大牙勢団の総長、脂牙》がある手札をキープしているからです。
肥やすカードがたくさんあると《未練残り》と《大牙勢団の総長、脂牙》が落ちてフラッシュバックからコンボを決められると思うかもしれないですが、それでは揃ったとしても5ターン目になってしまい、キープに値する速度ではありません。

サンプル初手2

キープです。《忌まわしい回収》は単体で、《未練残り》《ウルヴェンワルド横断》は墓地肥やしとセットで《大牙勢団の総長、脂牙》にアクセスできるカードとして考えます。
《未練残り》があれば《大牙勢団の総長、脂牙》にアクセスするという観点ではすべてのめくりはドローと同じになります。この手札だと通常ドロー+《サテュロスの道探し》2枚のめくり8枚の中に《大牙勢団の総長、脂牙》がいればよいわけです。通常ドロー+《ラフィーンの密通者》のドローで《大牙勢団の総長、脂牙》を引かなければならないサンプル初手1とは大きな違いです。

サンプル初手3

マリガンです。《大牙勢団の総長、脂牙》がいればいいというわけではありません。
ただし、この初手の場合、墓地肥やしに加え《思考囲い》《ラフィーンの密通者》もコンボにつながるため受けは広いです。すでにマリガンした後なら妥協してキープしてもよいでしょう。

プレイ指針:カードを唱える順番

基本的にはなるべく早い《大牙勢団の総長、脂牙》で機体を釣り上げる動きを目指していきます。唱えられるカードが複数ある場合は、確率や回収するカードの選択肢を考慮しながら順番を決めましょう。最初のうちは確率計算ツールで各選択肢のコンボが決まる確率を計算しながらやるといいとでしょう。

いくつか具体例を挙げます。似た手札でも相手や状況によって最終的な選択肢は変わるかもしれませんが、基本的に考え方として覚えておくといいでしょう。

前提条件

  • 2ターン目です。

  • 画像は2枚目の土地を置いた後の手札です。

  • 枚数が足りない分はマリガンしたか影響なさそうな適当なカードだと思ってください。

例1

《大牙勢団の総長、脂牙》なし

《忌まわしい回収》を唱えます。
《ラフィーンの密通者》で《パルヘリオンⅡ》を捨てて、2ドローの中に《大牙勢団の総長、脂牙》がいる確率よりも《忌まわしい回収》を唱えて機体と《大牙勢団の総長、脂牙》をめくる確率のほうが高いからです。
ただし、青白コントロールのように《ラフィーンの密通者》の本体で相手にプレッシャーを与えることが重要で、最初に場に出しておく価値が高い場合はその限りではありません。

例2

3枚目の土地なし《大牙勢団の総長、脂牙》なし

《忌まわしい回収》を唱えます。
3枚目の土地がないのでとりあえず土地しか探せない《サテュロスの道探し》を唱えたいように思うかもしれませんが、《大牙勢団の総長、脂牙》がない以上、《忌まわしい回収》で拾いたいカードは《大牙勢団の総長、脂牙》です。
《サテュロスの道探し》を唱える→トップで《大牙勢団の総長、脂牙》を引く確率よりも、《忌まわしい回収》で《大牙勢団の総長、脂牙》を回収→トップで土地を引く確率のほうが高いため、《忌まわしい回収》から唱えるのが正解になります。
《大牙勢団の総長、脂牙》を回収して次のターン土地が引けなかった場合は《サテュロスの道探し》を唱えましょう。この場合でも《サテュロスの道探し》から唱えて次のターンに《忌まわしい回収》を唱えた場合とコンボが決まるターンは変わりません。

例3

3枚目の土地なし

《サテュロスの道探し》から唱えます。
例2の状況と違い、すでに《大牙勢団の総長、脂牙》を持っています。直近で確保したいのは3枚目の土地であり、《忌まわしい回収》は土地以外も回収できるので、選択肢を残すためにとっておきます。
例外として、ロータスコンボのような機体を素早く釣り上げさえすれば勝てるマッチアップでは、機体を落とす確率を少しでもあげるために、めくる枚数の多い《忌まわしい回収》から唱えたほうがよいです。

プレイ指針:《大牙勢団の総長、脂牙》の素出し

コンボを決める過程で《大牙勢団の総長、脂牙》は唱えなければなりませんが、このカードのみ3マナで、ツーアクションが取りづらいです。なので機体が落ちていない状態でも相手次第では《大牙勢団の総長、脂牙》を先に戦場に出しておいたほうがよい場合があります。

2ターン目の墓地肥やしで機体が落ちなかった場合でも、3ターン目に《大牙勢団の総長、脂牙》を出しておくことで4ターン目に墓地肥やしを2枚唱えることができるようになります。ロータスコンボのようなソーサリータイミングの除去がない相手には《大牙勢団の総長、脂牙》から入ることを検討しましょう。逆に《戦慄掘り》のようなソーサリータイミングでしか使用できない除去のあるデッキには出さないほうがよいでしょう。


プレイ指針:《パルヘリオンⅡ》の釣り上げ

《大牙勢団の総長、脂牙》で《パルヘリオンⅡ》を対象に取った際に、対応で《大牙勢団の総長、脂牙》を除去された場合、ほかのクリーチャーで《パルヘリオンⅡ》に乗れない場合は《パルヘリオンⅡ》はそのまま手札に帰ってしまいます。そうすると仮に《大牙勢団の総長、脂牙》をもう一枚持っていても、再度《パルヘリオンⅡ》を墓地に落とす手段が必要です。
相手が明らかに除去を構えていて、ケアする余裕がありそうな場合は以下の状況を作れないか検討してみましょう。

1. ほかにパワー4ぶんクリーチャーを並べるか、機体を出しておく。機体を出した場合は《大牙勢団の総長、脂牙》で機体に搭乗→乗った機体で《パルヘリオンⅡ》に搭乗することができます。

2. 墓地にほかの機体を用意する。《エシカの戦車》《領事の旗艦、スカイソブリン》は《大牙勢団の総長、脂牙》の能力に対応して除去をしても効果が薄いです。

このような状況を用意できれば相手はメインフェイズ中に《大牙勢団の総長、脂牙》を除去せざるをえなくなり、《未練残り》や2枚目の《大牙勢団の総長、脂牙》によるツーアクションで同一ターン中にコンボが決まりやすくなります。

サイドボーディング&マッチアップガイド

大まかなサイドアウト候補

サイドボード時に抜くカードの考え方を紹介します。

《大牙勢団の総長、脂牙》関連

・《大牙勢団の総長、脂牙》
常に残します。

・《未練残り》
墓地依存度を下げるためによく抜きます。墓地対策をとっていることが珍しく、除去で対処してくるイゼット系のデッキに対してはサイド後も強く使えるので残します。

・《ウルヴェンワルド横断》
墓地対策をされると基本土地しか持ってこれなくなります。しかし、墓地対策をされている=機体の素出しで勝つことになるので、土地を伸ばす必要があり、基本土地サーチだけでも価値があります。基本的に抜きません。

機体

・《領事の旗艦、スカイソブリン》
クリーチャーの少ないデッキ相手に抜きます。

・《パルヘリオンⅡ》
コンボの決まりにくい相手やミッドレンジプランを意識するときに抜きま す。

・《エシカの戦車》
基本的には残します。

墓地肥やし

・《忌まわしい回収》
一番強いカードなので基本的には残します。

・《ウィザーブルームの命令》
相手のデッキに破壊対象がない場合は抜く候補になります。また《虚空の力線》を置かれると土地も拾えなくなるので、《虚空の力線》が見えた場合も抜く候補になります。

・《サテュロスの道探し》
《ウィザーブルームの命令》が有効な相手には墓地肥やしの中で相対的に一番弱くなるので抜く候補になります。

・《ラフィーンの密通者》
《パルヘリオンⅡ》を減らす場合カードを捨てる役割の価値が下がるため抜く候補になります。ただしそれでも搭乗要因やビートダウン要因として優秀なので、《ラフィーンの密通者》本体に価値がないと判断したら抜いてもよいでしょう。

手札破壊

・《強迫》
サイド後は相手の対策が増え、除去を抜いて《大牙勢団の総長、脂牙》を押し通すことが難しくなります。そうなるとクリーチャーが抜けず、相手のゲームプランの妨害に使いづらいこのカードはよく抜きます。

・《思考囲い》
《強迫》と違い対戦相手のゲームプランの妨害にも使えるため基本的には残します。2点が痛く相手のカードの質が低いアグロデッキ相手には抜きます。


マッチアップガイド


主要なデッキに対する所感とサイドボード例を紹介します。サイドボード例は一例であり、相手の見えたカードや先手後手次第では調整してください。

ラクドスミッドレンジ

メイン:有利
相手のデッキは3マナ域が主力のため、こちらが《大牙勢団の総長、脂牙》を唱えたいターンあたりに除去を構えられないことが多いです。それに加えそもそもメインデッキに採用されている除去は《大牙勢団の総長、脂牙》に有効なものが少ないためコンボが決まりやすいです。
相手が除去を構え続けてきた場合も《エシカの戦車》《領事の旗艦、スカイソブリン》によるミッドレンジプランも有効です。

一番の負け筋はマリガンしてリソースが減りすぎ、手札破壊や除去でリソースが枯れることです。なのでデッキがわかっているならキープ基準をかなり緩めます。

コンボは決まらないが土地は伸びるし《エシカの戦車》もある

このような手札はほかデッキ相手とは違いキープします。
また《エシカの戦車》《領事の旗艦、スカイソブリン》は素出しで十分強力なため、《ラフィーンの密通者》で捨てるか手札から唱えるためにとっておくか検討しましょう。

サイド後:有利
ゲームプラン:ミッドレンジ
out
3 《パルヘリオンⅡ》
2 《未練残り》
2 《強迫》

in
2 《茨橋の追跡者》
1 《長老ガーガロス》
1 《領事の旗艦、スカイソブリン》
1 《致命的な一押し》
2 《突然の衰微》

対策カードが増えるためコンボが決まりにくくなります。コンボにしか使えない《パルヘリオンⅡ》や墓地対策に弱い《未練残り》を抜いてミッドレンジプランをメインにします。
一番の負け筋は《ゲトの裏切り者、カリタス》《黙示録、シェオルドレッド》の4マナクリーチャーたちにより制圧されることです。なのでサイドインする除去は《突然の衰微》によせず《致命的な一押し》と散らします。手札破壊も《大牙勢団の総長、脂牙》を押し通せなさそうなときはこれらを積極的に抜きましょう。

緑信心

メイン:五分
《大いなる創造者、カーン》で蓋をされる前にコンボを決めましょう。インスタントタイミングの妨害は《耐え抜くもの、母聖樹》しかないので、両腕を振り回してコンボ成立を目指します。
どうしても機体を釣り上げるまでいけないなら、《ラフィーンの密通者》《大牙勢団の総長、脂牙》のパワー3以上のクリーチャーを出して、少しでも《大いなる創造者、カーン》にプレッシャーをかけられるようにしましょう。

サイド後:五分
ゲームプラン:コンボ
out
3 《エシカの戦車》

in
1 《領事の旗艦、スカイソブリン》
1 《強迫》
1 《ポータブル・ホール》

ミッドレンジプランをとって勝てる相手ではないためサイドボード後もコンボを狙います。
《エシカの戦車》は《茨の騎兵》だけでなく《老樹林のトロール》にも止められてしまいます。そのため《エシカの戦車》で殴り勝てるということは基本的になく、《大牙勢団の総長、脂牙》で釣っても勝ちきれないことも多いためサイドアウトします。《領事の旗艦、スカイソブリン》を釣り上げて相手の盤面を破壊するか、《パルヘリオンⅡ》で対戦相手を破壊することに注力しましょう。
純粋な速度勝負であり、リソースはあまりゲームに影響を与えないので、積極的にマリガンします。特に後手は1妨害込みでコンボを決められる手札を目指します。

アブザンパルへリオン

メイン:五分
ただの速度勝負です。先に《パルヘリオンⅡ》で殴ったほうが勝ちます。しっかりしたキープ基準を持って人事を尽くしたら、あとは祈りましょう。

サイド後:五分
ゲームプラン:コンボ
out
1 《サテュロスの道探し》
2 《領事の旗艦、スカイソブリン》
2 《強迫》
1 《未練残り》

in
3 《未認可霊柩車》
3 《突然の衰微》

サイドボード後は干渉手段が増えるため、ただの速度勝負ではなくなります。
① 妨害の上からコンボを決める
② 《エシカの戦車》で地上を制圧する
の順で勝負が決まるので、基本的にはコンボを目指しますが複数妨害+《エシカの戦車》のような手札でもキープできます。
後攻時は《サテュロスの道探し》を抜いて《領事の旗艦、スカイソブリン》入れています。《領事の旗艦、スカイソブリン》は① コンボ勝負では出番のないカードですが、② 《エシカの戦車》戦においては有効です。① コンボ勝負では、先攻側が有利なので、先攻時はコンボパーツの《サテュロスの道探し》を、後攻時は逆に《エシカの戦車》勝負に持ち込みたいため、その際に有効な《領事の旗艦、スカイソブリン》を残します。

青白コントロール/エスパーコントロール

メイン:有利
《ラフィーンの密通者》などでライフを削りつつ、全体除去を撃たせた返しや手札破壊のバックアップでコンボを決めることを目指します。《大牙勢団の総長、脂牙》を着地させることができれば機体を打ち消されてもそのまま釣り上げることができるため、墓地に機体がなくても《大牙勢団の総長、脂牙》は打ち消されないタイミングで戦場に出しておきます。
《パルヘリオンⅡ》を釣っても対戦相手のライフを削り切れない場合、返しの全体除去後用の追加の攻め手になるなら後続の確保を優先して《エシカの戦車》を釣りましょう。

サイド後:微有利
ゲームプラン:コンボ
out
1 《領事の旗艦、スカイソブリン》
1 《未練残り》
1 《残忍な切断》

in
1 《強迫》
2 《茨橋の追跡者》

《領事の旗艦、スカイソブリン》は相手のサイドボードの《悪斬の天使》などの大型クリーチャーに有効で、プレインズウォーカーに対しても最低限の役割があるので1枚残します。
ゲーム感はメイン戦と大きくは変わりません。引き続き小型クリーチャーで圧をかけながらコンボの成立を目指します。攻め手の数が重要になるのでマリガン基準は緩めます。

イゼット独創力

メイン:有利
コンボスピードはこちらのほうが早く、手札破壊が有効なため基本的にはこちら側が有利です。
手札破壊はコンボが決まるなら除去を、長引きそうなら《鏡割りの寓話》や相手のコンボパーツを抜きましょう(当たり前)。

サイド後:有利
ゲームプラン:コンボ
out
2 《領事の旗艦、スカイソブリン》
1 《ウィザーブルームの命令》

in
2 《茨橋の追跡者》
1 《強迫》

ゲーム感はメイン戦と大きくは変わりません。クロックや手札破壊で圧をかけながらコンボの成立を目指します。

ラクドスサクリファイス

相性:有利
紛争を達成しやすいため《大牙勢団の総長、脂牙》が《致命的な一押し》で除去されやすい点には注意しましょう。《波乱の悪魔》《フェイに呪われた王、コルヴォルド》に盤面を制圧される前にコンボを決めることを目指します。

サイド後:有利
ゲームプラン:ミッドレンジ
out
2 《パルヘリオンⅡ》
2 《強迫》
1 《未練残り》

in
1《長老ガーガロス》
1《領事の旗艦、スカイソブリン》
3 《突然の衰微》

対ラクドスミッドレンジと同様に、サイドボード後はコンボパーツを減らして《領事の旗艦、スカイソブリン》によるミッドレンジプランを目指します。
サイド後に突然《湧き出る源、ジェガンサ》がいなくなったら《虚空の力線》注意報です。3本目はさらに《未練残り》《パルヘリオンⅡ》は抜いてミッドレンジプランに寄せましょう。


白単人間

相性:有利
《スレイベンの守護者、サリア》にはまりさえしなければどの機体でも釣りあげれば勝てます。コンボを決めたあとは《精霊への挑戦》で死なないよう、《エシカの戦車》を釣るなら《ラフィーンの密通者》を、《パルヘリオンⅡ》を釣るなら《サテュロスの道探し》を横に残せるようにクリーチャーをブロックに回しましょう。

サイド後:有利
ゲームプラン:コンボ/ミッドレンジ
out
2 《強迫》
4 《思考囲い》
1 《未練残り》
1 《パルヘリオンⅡ》

in
1 《ポータブル・ホール》
3 《致命的な一押し》
3 《突然の衰微》
1 《領事の旗艦、スカイソブリン》

除去をサイドインしてコンボだけでなくミッドレンジプランでも勝てるようにします。《精霊への挑戦》に加え《石の宣告》がサイドインされることがあるため、引き続きこれらで突然死しないようにブロッカーはしっかり残します。

イゼットフェニックス

相性:不利
《大牙勢団の総長、脂牙》に軽くインスタントタイミングで触る手段が多く、《帳簿裂き》《氷の中の存在》も非常に厳しいです。ゲームが長引くほど相手のリソースは増え手札は整っていくので、どこかで折り合いをつけて突っ張りましょう。対処手段が除去に寄っているので、《未練残り》を絡めたツーアクションが有効です。

サイド後:微不利
ゲームプラン:ミッドレンジ
out
2 《領事の旗艦、スカイソブリン》
2 《パルヘリオンⅡ》
2 《強迫》
3 《ウィザーブルームの命令》

in
1 《長老ガーガロス》
3 《致命的な一押し》
2 《突然の衰微》
3 《未認可霊柩車》

最も対処しなければならないのは2マナクリーチャーたちなので、除去を多めにサイドインします。対戦相手の除去が多く、早い段階でコンボが決まることが少ないため、機体を減らしても問題ないです。いつか落ちます。
基本的には《未認可霊柩車》《エシカの戦車》等の除去に強いカードでのビートダウンを目指しましょう。

上記のサイドチェンジ例では《ウィザーブルームの命令》を抜いていますが、相手が《若き紅蓮術士》や《未認可霊柩車》などの破壊対象を採用していれば《サテュロスの道探し》と入れ替えたほうがよいです。

バントスピリット

相性:不利
個人的に最もあたりたくない相手です。
《鎖霊》、《呪文捕らえ》、《鎖鳴らし》+《スカイクレイブの亡霊》など、メインギミックがこちらに対して非常に有効です。相手のクリーチャーが飛んでいるため《エシカの戦車》の素出しで盤面を止めることもできません。運よくコンボが通ることを祈りましょう。

サイド後:不利
ゲームプラン:ミッドレンジ
out
1 《ラフィーンの密通者》
3 《パルヘリオンⅡ》
2 《強迫》
2 《未練残り》

in
1 《ポータブル・ホール》
1 《領事の旗艦、スカイソブリン》
3 《致命的な一押し》
3 《突然の衰微》

除去を投入できるとはいえ、相変わらず不利です。コンボは通りづらいのでコンボパーツをサイドアウトします。《至高の幻影》《天穹の鷲》が並びすぎると《領事の旗艦、スカイソブリン》でクリーチャーを倒せなくなるので、その前に何とかしましょう。《領事の旗艦、スカイソブリン》でシューティングゲームが始まれば勝てる試合もあるでしょう。

おわりに

アブザンパルへリオン解説は以上になります。

私の第一印象ではアブザンパルへリオンはただ機体を落として《大牙勢団の総長、脂牙》を釣るだけのデッキでした。しかし、使っていくうちに細かいキープ基準やサイドボード後のゲームプランなど、つき詰めていくと奥の深いデッキだとわかりました。興味を持ったらぜひ使ってみてください。

最後まで読んでいただきありがとうございました。


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