デザインの値段
値段の根拠
デザインの値段、というとなんだか無いものに値段をつけるみたいな認識があるのはなんでだろう。多分「付加価値」みたいな言葉にされる「よくわからないけどいいもので価値もあるんだ」みたいなふんわりした認識があるからかもしれない。
実際の所、デザインの値段の根拠をどれだけのデザイナーが意識して提案しているかはわからないけど、うちの場合、収益分岐点や損益分岐点から固定経費を割り出してそれから逆算して1時間あたり人が手を動かすといくらかかる、みたいな計算をしている。それがいわゆる当社のデザイン費。
1,000円カット
美容室の質やセンスはさておき、田舎には比較的多いのが1,000円カットの美容室。シャンプーもない、細かいアレはさておき10分1,000円でさっぱりした頭になる。10分で1,000円と言うのは工業などでもよく出てくる1分100円という人件費が如実に出たビジネスだと思う。一人の美容師が10分手を動かすと1000円の売上が上がる。
対していわゆる美容室はどうか。4500円(シャンプー2回分含む)くらいのカット料金が多い?と思うが実際かかる時間は1時間弱。1分75円。実は1,000円カットは一般的な美容室よりも高収益高単価。
別に1,000円カットすげーみたいな話をしたいのではなく、人件費やその他固定費を全て計算したうえで自分の会社が提供するサービスを提供しているか、ということ。周りはこのくらいで売っているからうちもこのくらいで良くない?みたいなことでは安すぎればショートするし、高すぎれば根拠の無い値段と言われてしまう。裏付けがあればいいけどね。こうゆう精度の出る設備を使っててこのくらいの固定費がかかる、みたいな。
ただし実際の所、金額をかけた分の費用対効果が消費するお客さんにはあって、「この値段の割には良い、悪い」という感覚や印象をどうコントロールするかが、値段の根拠を出したうえでの本当の付加価値だと思う。10,000円のコース料理を食べた場合と1杯700円のラーメンを食べた場合でも同じようなことが言える。
工業や小売業と同じく、デザインにも値段がある。僕は「この人が作ればこのくらいの値段がついて当たり前」みたいな超一流のカメラマンやデザイナーではないけれど、維持すべき会社と従業員、設備があり、それらに裏付けられた価格がある。打ち合わせはタダみたいな風潮にもこうゆう考えが浸透して欲しい。パソコンやカメラをに使っている時だけが料金が発生している時間ではなく、打ち合わせやロケハンを行っている時も、人が動くという物理的な作業が発生しているということを。
いろんなビジネスがもっともっとこの地域で生まれて欲しいけど、だいたいこうゆう考え方をすると無理なく、続けることができるんじゃないかな。
悪い順番
起業したら自分は月にいくら欲しい→月にこれくらいの仕事を受注しないと!→受注件数が下回る→想定よりも価格設定を高くしないとやっていけない→さらに受注減
良い順番
営業資料や電話のアポイントをとっている時間も固定費としてカウント→家賃やその他全ての固定費に自分の人件費を加えて1週間単位くらいの収益分岐点を決める→無理のない、裏付けのある価格設定の商品、サービスを提供→個人が提供しているので固定費が安い分、サービスとしての価値に対して利用料が安い→買う&発注する側のメリット
起業したけれど結局運営が厳しい会社を見ていると、このサービスの価格の根拠はあったのかなとよく思う。提供するサービスの良し悪しはもちろん大事だけど、それを一過性の流行りやブームで終わらせないためにも、きちんとした正直な根拠と計画が必要だ。