3月の帰省(2)〜やるしかないのか、ヒッチハイク

4時半、アラームが鳴る。半分寝つつも、気をつけてね、行ってらっしゃいと言ってくれるみっきーを残し、寮へと帰る。結局1枚余った銭湯の回数券は、寮の同部屋の子にあげよう。使ってくだされとメモと共にテーブルに置く。支度をしてバスに乗る。5:40くらい発で京都駅には6時10分台に着いた。
先に、新大阪発のばり得こだま切符を発行しておこうと、発券機前で予約確認メールを探す。しかし、なんでだ、見つからない。
え、なんでだ。確か予約はしたよな。え、まじで、、?
とりあえず新大阪までの切符を買って電車に乗る。車内でもう一度確認。PCなら見れるか?たった状態でパソコンを開いてメールを確認するが見つからない。予約履歴のページをいくら更新しても小倉行きのひかりの予約は現れない。予約サイトを見返す。確か全て入力したよな、いや、うん、したよ。あ、、クレジットカード情報、入力した記憶ないかも。ない。ないわ。
それに気づいた瞬間、うっすら細い声を出しながら車内でうずくまった。

あ〜、どうしよう、、どうしよう、、あ〜〜、、
確かに、そう口に出してしまっていた。向かいに立っていたスーツのお兄さんにも、なんだ大丈夫かこの人、と見られている感覚はあった。にしてもどうしようか。とりあえず代替手段を考えよう。新幹線、今から普通に予約すると1万4千円。予約したつもりだったのが8千円なので倍近い。嫌だ、払いたくない。夜行バスか?でもこの時期そんなに安くはない。なんせこんなに朝早く出てきたのにもったいないじゃないか。在来線で行く?いや、疲れるな。あ、あ、ああ、思い浮かんでしまった。
昨日の先輩との会話にも出てきたからか。ああ、でもこれだとこの落ち込んだ気持ちも挽回できるかもしれない。コロナも、だいぶ落ち着いてきているし。久々にやろうか、ヒッチハイク。せっかくまだ朝の7時だ。なんなら福岡まで行けたらタダで済むかもしれない。

そうとなれば大阪のICを探す。ネットによると、規模の大きい吹田が良さそう。一度通り過ぎてしまったが、新大阪に着いてから戻る電車に乗ろう。乗り換え時間の少ない中、新大阪のホームの階段を駆け上がる。平日の朝なのでそれなりに人は多い。人をすり抜け走り、ドアが閉まる直前、なんとか電車に乗れた。駆け込み乗車。少しばかり他の乗客の視線を感じつつ、恥ずかしくなったのか乗車したドアの次のドア前のスペースまで無駄に進む。
最寄りの茨木駅で降りてからはタクシー乗り場で待機中の運転手に聞き込み。なんなら近いけれどIC付近まで乗せていってもらおう。

「すみません、お聞きしたいんですが、吹田ICの入り口ってどこですかね」

運転手さんは丁寧に教えてくれた。「車で来てるの?」

「いや、訳あってヒッチハイクをしなくてはならなくなって」
なんだ、その説明は。お前の都合だろ。と自分でも思った。

「それは厳しいと思うよ。中央線だから車のスピード速いしね。」若干呆れつつも助言をいただく。ありがとうございます。

ううん、確かにな。ならば、サービスエリアだ。さっき「吹田SA」で調べると徒歩で従業員入り口から侵入できるという情報がでてきた。岸辺駅が最寄りらしい。駅から30分歩けば着くのか。それはいいな。また電車で茨木駅から岸辺駅へ移動し、歩いて北へと向かう。途中でセブンを見つける。よしよし。
まずは太マッキーを購入。そして廃棄予定のダンボールを譲ってもらえないか店員さんに聞いてみる。これに関しては断られたことは今まで一度もない。今回もバックヤードから3つほど出してきてくれて、一つを選んだ。イートインスペースがあるので、おにぎりを二つ買って、そのうち一つを食べながら看板を作成する。私に乱暴につなぎ目を破られた段ボールを見て、「あれ、破れてましたかね」と店員さん。「いや、自分でやりました、すみません」「あら、いえいえ、すみません」と、なんて素敵な店員さん。その店員さんも私がイートインのテーブルで「岡山・広島方面」と書いているのを見て、どのような気持ちだっただろうか。店を出るときは他のお客さんに対しての「ありがとうございました」より声が小さめだったような気もした。まあ、自意識過剰な気はするが。

段ボールを抱えて住宅街を通り、SAへ向かう。無理に文字を隠したりしないぞ。やはり道ゆく人から若干の視線。そうだこの感じだ。なんせ久々なので緊張する。同時にワクワクする。茶色いオーバーサイズのオジジャケットに太めジーパン、中の半袖白ニットは短め丈でかわいいが、この風体はどうだろうか、ぱっと見の印象も大事だろうから少し心配する。まず、女性らしい格好は危険なのだ。まあ、それなりにボーイッシュだしそんなにボロボロで貧乏くさいって感じでもないし、悪くはないだろう。


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