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牛乳と おじゃがとそれから 焼き鳥を 二月の雪と 共に帰らん。
今日の夜ご飯は、傷みかけている白菜を使ってホワイトシチューにしよう。
と、冷蔵庫を覗く。
にんじん、玉ねぎ、お肉、シチューのルー……あぁ、牛乳がない。
なくても、サラッとしたシチューができあがるのは想像できる。でも、シチューは、特にホワイトシチューはトロッとしていて欲しい。あと、今日は休日だからと家から一歩も出ていない。お出かけの口実にと、牛乳を求めてスーパーへ。
家を出たときからなんとなくそんな気はしていたけれども、ぴゅうと吹く風がえらく冷たい。なんならちょっと、痛いくらいに。立春を過ぎたというのに、花粉も飛びはじめているというのに、この風は紛れもなく北風のそれで。
それでも。心も身体もホワイトシチューを求めているので、と足早に向かったスーパーはやっぱり人がまばらで。こんばんは、みんなお家に篭るような寒い日なんだなぁと改めてしみじみしながら、牛乳を。せっかくだから、おじゃがと納豆も。
そういえば。お昼はなんだか食欲が湧かなくて、インスタントのお味噌汁で済ませてしまったんだった、ということを思い出す。食材たちをみていた急にお腹がすいてきてしまった。かといって、取り急ぎと陳列棚を眺めても「どうせこのあと、あなたはホワイトシチューを食べるのだから」ともう一人のわたしがセーブをしてしまう。
スーパーを後にして、はぁっと吐くため息が、やけに白い。ふと空を見上げると、真っ黒な空から白いモノがハラリハラリと。
雪が、静かに舞っている。これは、寒いはずだ。これは、お腹が空いてしまうはずだ。と、心細さがグッと増す。白いそれを眺めながら振り返ると、いい匂いをさせたキッチンカーがオレンジ色の灯りを灯していた。
引き寄せられるようにその灯の元へ駆け寄って「つくねをひとつ」と呟くと「お昼はあんなにあったかかったのにねぇ。寒くなっちゃったねぇ。あなたのつくねを焼いたら、わたしもお家に帰んなきゃあ。」とニコニコ話しかけてくれるその人に150円を渡して、10円のお釣りを受け取る。
オンライン決済が主流になりつつある今日この頃、小銭を出したのはいつぶりだろうか……なんて思いながらタレのたっぷりついた焼き鳥を受け取って一口、もうひとくちと頬張りながら来た道を戻る。
ぴゅうと吹く風は心地よく、ハラハラと舞う雪は美しく、口の中は甘じょっぱい。心も身体もほっくほく。今日カゴに入れたどんな材料たちよりも、このつくね一本の方が高かったのはここだけの秘密。
さぁて、白菜をコトコトと煮てとろっとろのホワイトシチューを作るんだ。
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