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モーニングコーヒー
目覚ましのアラームが鳴る。多分鳴ったんだと思う。隣の人がムクムクと起きて、シャワーへと向かう。その背中を見送りながら、ゆっくりと身体を起こす。
シャワーを終えた人が、寝室をチラリと覗きながらコーヒー豆を挽き始める。次に目が合ったタイミングで「わたしも飲みたいな」とお願いする。
コーヒーをおねだりしたからには、ベッドから出ないといけない。寝巻きのままトイレに行って、そのまま歯磨きをして戻ってくるとハンドドリップされたコーヒーが手渡された。
挽きたてのお豆のコーヒーを、コーヒー屋さんにハンドドリップしてもらう。なんて贅沢な朝なんだろう、とそのたびに思う。起きるのがしんどいような寒い朝でも、このコーヒーが飲めると思うと頑張ってベッドから出ようと思える。
でも、真冬はベッドの上でそれを受け取ってちびちび飲みながらしぶしぶベッドから出たっけねぇ……なんてことを思い出しながらそれを啜っていたら
「今日はいつもよりぼーっとしているねぇ。この後、気圧が上がるんじゃないの?」
なんて声をかけられる。
なんと。わたし的にはとても清々しい朝を満喫しているはずなのに、隣の人にはぼーっとしているように見えるのかぁ……とびっくりしながら気圧予報のアプリを開く。そこには、2時間後くらいから気圧が上がる予報が出ていた。
とりあえず調子が良いうちに、洗濯を済ませてお昼ご飯の下拵えを始める。そしてやっぱり、1時間半後くらいに気圧上昇特有の眠気がやってきた。
自分の身体の内側で起こることは、わたし自身が一番敏感だと思っていたけれども。実際は、自分より他人の方がよく見ていることは多いのかもしれない、なんてことを思う。
わたしも仕事柄、誰かの心や身体の変化に敏感なタイプで。でもそれって、専門職として当然のスキルだと思っていたから。なんていうか、プライベートで、自分が察される側になるというのはなんだかちょっとこそばゆい。
でも、人に察してもらう経験を通して改めて、人って人に支えられて生きてるんだなぁなんてことをじわじわと感じる。一人でも生きていける世の中だけれども、わたしのことをわたし以上に知っている人がこの世界に一人でも多くいるというのは、とてもとても心強いものだなぁ。
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