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愛おしい地元の車窓たちが、危機を迎えている。
新幹線の見える駅前を背に、青々とした木々の並ぶあおば通を眺める。ずんずん進んでいくと、青葉城址を抜け、山道を抜ける。山の頂上でバスを降りると、乗車時よりもちょっぴりひやっとした風が吹いている。
わたしは、心から楽しい大学生活を、この駅前から20分の山の中で過ごした。たった4年、されど4年。講義に部活にサークルに、それからバイト。あちこちと目まぐるしく駆け回りながら、仲良しと食堂に集まってはトランプに勤しんだ楽しい日々。
眠い目をこすりながらバスに乗り、うとうとしているとちょうど着く絶妙な立地。バスの中には必ずと言っていいほど知り合いがたくさんいて。そういえば、バスの中で友達に手話を教えたこともあったけ。
そんな思い出の道を横目に、私の家へ向かうバスは左へ曲がった。
今はもう、あの思い出のバスに乗ることがかなわない。
そう。市民の足だというのに、仙台市営バスはまさかの全路線が赤字運営。毎年毎年減便され続けていて、わたしが大学生の頃に使っていたあの路線は、在学中に廃線になった。
それは、大学4年生の12月のことだった。ラストランの翌日からは、地下鉄が開通することになっていた。中学時代からもっぱらバス通学だったわたしは、念願の電車通学。もっともっと、ワクワクする予定だった。なのに。
ラストランの日は、とにかく寂しくてバスからの景色を目に焼き付けるだけでいっぱいいっぱいだった。途中下車して乗り換えた方が早く家に帰られるのに、わざわざ終点まで乗った。もう、この景色をこの場所から見られない。そう思うと、いつもの景色が急に愛おしく感じてきた。
それでも、未だに全線赤字の市営バス。乗ってみると、本当に人がいない。今日も、父方の祖母宅から帰宅するバスの車内、4区間くらい乗客がわたししかいなかった。
確かに、山々も、木々も、昔と変わらずそこにある。それでも、あの高い車窓から眺める地元はまた味がある。そんなわたしの愛おしい地元の車窓が、また一つまた一つと減っていってしまうかもしれない。
そう思うと、急に胸がキューっと締め付けられるような気持ちになった。
大好きな大好きな街の今を残していきたいな。そんな気持ちが強くなったここ最近。言葉で、写真で、この街を残していく。2020年のやりたいことの一つとしようかなっと。
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