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手話が出ちゃうのは、きこえてない合図なんだって。
あ、手が出ちゃった。
きこえる友達と一緒にいるのに、ふとした瞬間に手話が出てしまう。たぶん、そんなときは、自分の声がきこえてないとき。
きこえる人は無意識にお喋りをしながら自分の声をきいてフィードバックしている。
でも、わたしはいくら補聴器を付けていても、自分の声を全てフィードバックできない。たとえば、人混み・地下鉄の中・バックミュージックが大きなお店……。
自分の声がきこえなくなると、どうやら手が出るらしい。手話で自分の発信をフィードバックすると、落ち着くのだ。
わたしが手話を覚えたのは大学に入ってから。それまでのわたしは、音声だけで生活をしていた。
そんなわたしの元に、高校時代の友人が遊びに来てくれた。もちろん、彼女は手話ができないし、手話で生活するようになったわたしを知らない。それでも、ふとした瞬間に、手が動いてしまう。
何度目かの手話付き会話のあと、彼女がふと呟いた。
なんだか、新鮮だね。
あの頃のわたしは手話を知らなくて、それでも会話を円滑にしているように見せかけていた。仲良しの友達は、きき取りやすい側に立って話してくれていたし、きき直せばもう一度話してくれる。そんな安心感を、特定の何人かでも与えてくれる彼女たちがいたから。
今でも彼女はきき直せば、どんなにくだらないことでも言い直してくれる。そんな彼女が、さっきの言葉のあとにこっと笑ってこう続けた。
きこえてないんだなっていう合図がまたひとつ増えたね。
あぁ。こういう友達をね、大事にしていかなきゃいけないんだよなぁ。
今までも、これからも、ありがとう。
#エッセイ #旅しゃぶ更新部 #まいにち日記部 #君のことばに救われた #音の世界と音のない世界の狭間で #聴覚障害 #手話
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