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変化には、ちょっぴりの寂しさがつきもので。
夜行バスに乗り込んだわたしは、何度も体勢を変えているうちにいつの間にかぐっすり眠ってしまった。
案の定、目が覚めたときには蛍光灯が煌々と付いていて、周りは下車準備をしていた。寝ぼけている上に補聴器を外しているわたしは、放送の音が遠くに聞こえるけれどもここがどこだかわからない。iPhoneを出してGoogleマップを見ると、そこは下車予定のバス停だった。ふう。間に合った。
明け方5時半の仙台は真っ暗な上に土砂降り。おまけに寒い。折りたたみ傘をさしながらスーツケースを引きずったわたしは、何の迷いもなく停車しているタクシーに乗り込んだ。
見慣れた景色。何度も歩いた道。運転手さんに行き先を告げたわたしは、窓ガラスに映る自分と流れていく景色を眺めながら安心感に包まれていた。
このあたりからなら迷わず歩いて家に帰れる。万が一運転手さんが道に迷っても、ナビをするだけの土地勘がある街。この時間、この道なら値段も容易に想像できる。
予想通りのお値段でお会計を済ませ、家の鍵を開ける。
家中がしんと静まっていて、ひやっとした空気が流れている。ふと石油ストーブを見ると、朝の7時にタイマーがセットされている。そうか、ここは朝起きるちょっと前にストーブをつけておかないと起きてくるのがしんどいくらい寒い東北なんだった。
家族を起こさないように、そおっと階段を上って自室を目指す。
外はまだ暗い。もう一眠りしようかな。
部屋着に着替えて、布団に入る。今は亡き祖母が「これはあったかいから」とくれた毛布にくるまりベッドに横たわる。
でもなんだか、むずむずしてくる。
わたしの家。わたしの部屋。わたしのベッド。だのに、何かがちがう。
あ、匂いだ。毛布の匂いが、わたしの匂いじゃない。
そりゃそうだ。わたしがこの家を出てからもうすぐ4年。その間も、この家と家族の生活は続いていっている。4年前、わたしがこの家をぽろぽろと涙をこぼしながら後にしてからも、日々変化し続けている。
「変化」って言葉を見ると、なんだかいいことのように感じることもあるけれど、変わるためになくなってしまうものもあるわけで。
そう思うと、ちょっぴり寂しくなりながら、また思い出の毛布にくるまった。
今回の帰省は10日間。帰る頃には、この毛布も落ち着く匂いに変わるのだろうか。それはそれで、東京に戻るときにこの部屋が名残惜しくなっちゃいそうだけれど。
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