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なんでもない日常の、でも、わたしにとって特別な香り。
香りは目には見えないけれど、充分すぎるほどに記憶を呼び戻す。
お盆休み以降、ずっと取り組んできた仕事がやっとひと段落した帰り道。家のすぐそばの橋を渡り終えた瞬間、ふわっと金木犀の香りが漂ってきた。
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小学生の頃、なぜか早く登校することがまだ一種のステータスのようになっていて、開錠前の昇降口で友達とおしゃべりしていたときのこと。
学生時代、きっとお互い好きなんだけれどもまだ付き合っていなかった彼と、語り合った公園での夜。
社会人1年目、繁忙期のちょっと余裕のない朝にふと漂ってきたこの香りに背中を押されたときのこと。
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ひとつひとつは、なんでもない日常の一コマかもしれない。
それでも、この香りに呼び戻される記憶は、どれも、わたしにとっては特別なものたちで。
お引っ越しをして初めて迎える秋。
今回も、通勤で毎日通る道に金木犀が咲いているよ。
きっと、この道を通りながら、笑ったり、悩んだり、疲れ果てたりする日々が刻まれていくのだろう。
そしてまた、この香りをどこかで感じたときに、その記憶がわたしにとっての「特別なもの」として呼び戻されていくんだろうな。
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