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あなたがもりもり食べているところを、見たいの。
休日に、上司からメッセージが来た。はて、なにかしでかしてしまったっけ。でも、仕事の連絡をLINEでしてくるような人ではないよなぁ……とトーク画面を開くと
あなたがもりもり食べているところを、見たいの
と書かれていた。夜ご飯のお誘いだ。今年度末で退職が決まっている彼女は、わたしが社会人になってはじめて心から尊敬して、この人のもとで働きたいと思わせてくれた人。最後にどうしても一緒にご飯に行きたいと、ずっとずっとお願いしていた。
わたしの聞こえにくさを「この子はみんなが思っている以上に聞こえていないのよ」と周りに伝えてくれ、嬉しいことがあったら一緒に喜んでくれて、悔しい日は抱きしめながら一緒に泣いてくれて。社会人デビューしたこの職場に彼女がいてくれたということは、わたしにとって大きな大きな存在で。
ありがとうなんて言葉じゃ足りなくて、足りないからこそどうでも良い世間話でケラケラと笑いながらハンバーグを噛み締めて、でも、全部食べ終えてしまったらこの時間が終わってしまうからとチビチビと食べて。それでも、時間はあっという間に流れてしまって。なんとか振り絞って出た一言は「帰りたくないです」なんていうわがままで。
そんなわたしを、地下鉄のホームでぎゅっと抱きしめてくれた彼女は、電車に乗ってからも見えなくなるまで照れくさそうに手を振ってくれた。ホームで泣いちゃうところだった。ホームでは泣かなかったけど、今、このnoteを書きながら泣いている。
まだまだ、彼女がいない新年度は想像もつかない。4月に、少し慣れたゴールデンウィーク明けに、いつかそれが当たり前の風景になってしまうのだろうか。
ありがとうのひと言では足りない感謝の伝え方が、分からない。たぶん、最後の日までわたしはヘラヘラしてしまうんだと思う。自分の心を守りたければ守りたいほど、わたしはヘラヘラしてしまうから。
でもいつか、わたしにその順番がきたときに
あなたがもりもり食べているところを、見たいの
と、ニコニコ誰かを抱きしめられるようなオトナになりたい。わたしを抱きしめてくれた彼女のあたたかさを、ずっとずっと忘れないと思うから。
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