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暗黙のルールというよりは。
学生時代、東梅田で「こんなにも泊まるところがたくさんあるんだから余裕でしょう」と宿を決める前にパピコを買ったのに、どこのお宿もいっぱいで、それを溶かしてしまったことがある。わたしたちは、雨の降る金曜日の夜の街を、完全に舐めていた。
その夜、わたしたちの中に暗黙のルールが誕生した。それは、
寝床が決まるまでアイスは買わない。
あれから、数年。お互いにひとり暮らしのお家があるというのに、終電を逃してしまったので、夜の北幸へ。もうあの頃のように若くはないし、夜も更けた時間だったけれども。若くないからこそ、ネカフェになんてとても行けずに、大きな、そしてできればふかふかのベッドが必要だった。
だというのに。わたしたちは寝床を確保するとそのままベッドにダイブ!ではなくて、最寄りのコンビニへふらっと。そう。アイスを買っていた。どうしても食べたかったわけではない。それでも、寝床が決まったらアイスを買うというのは暗黙のルールだったから。深夜の不思議なテンションもあいまってちょっぴりウキウキと。
部屋に入ってふうっと深呼吸をして、アイスを分けっこすると、なんだか落ち着く。美味しいとか満足感とかそういうのじゃない、えもしれない安心感。もうこれは、暗黙のルールというよりは、一種の儀式なのかもしれない。なんてことを思いながら大きなベッドに抱きしめられて朝を迎えた。
お家の安心する匂いでもなく、シティホテルのパリッとしたシーツでもない、ふわっとしたベッドとリネンだった。
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