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栞
本棚に置く本は【もう一度読み返したい】と思うものだけにするようにしている。それでも、何年も過ごしていると本棚はいつもいっぱいいっぱい。
その【もう一度】はだいたい2〜3年に一度くらいの頻度で。特に再読はストーリーのおおかたを覚えていることが多いから、読むのは移動のタイミングになりがち。
だから、わたしの文庫本にはそのとき観た映画の半券だったり空港のゲートでもらうチケットだったり、そんなものがひょろりと紛れ込んでいることが多くて。ふと開いた本に、思い出の何かが詰まってるって、なんだかちょっとこそばゆい。
「あぁ懐かしいなぁ」と思わせてくるようなものばかりが詰まっているので、おそらく過去のわたしは未来のわたしに向けて意図的に挟み込んでいるものも多いような、そんな気がする。
本棚といえば。
自分の本棚を誰かに見られるときって、ちょっとドキッとしませんか?なんだか、わたしの心のなかを覗き込まれているような、そんな気持ちになる。し、誰かのお家に行くとついつい本棚を覗いてしまう。
そこにある本が、我が家にあるものと似ていれば似ているだけ安心するし、知らないものばかりあると新しいものの見方を教えてくれる人なんだなぁとワクワクする。
この前ふと人の本棚を眺めていたら、数年前に貸した本が並んでいた。【もう一度読み返したい】と思っていたはずなのに手元にないのはなんでだろうと不思議だったけれど、きっと「これおもしろいから読んでよー」と押し売りしたんだと思う。
なんだかタイムカプセルを見つけたような気持ちになってその本を開いたら、その人もまた試験の受験票をそこに忍ばせていた。もちろんバリバリの個人情報なのでその一枚はお返ししたんだけれども、この本はわたしの知らないところで旅にも出ていたらしい。(ちなみに、完読してくれていたらしい。その一枚も最後のページに挟まれていた。)
たった一冊の本が
わたしの心に響いて
思い出を挟み込んで
誰かと共に時間を過ごして
誰かの思い出を挟み込んで
もう一度、読みたい本として手元に返ってくる。
「この本読んだ?」から繰り広げられる会話の多くは「〇〇おもしろかったよね!」みたいな本の内容についての感想になりがちだけれども。「この本、どんな景色で読んだの?」って聞いたことなかったかもしれない。なんてことを思う。
この本
どんな気持ちで読んだの?
どんな場所で読んだの?
そんなことを誰かと、過去のわたし自身と、語り合うのも楽しいだろうなぁ。そう思いながら、先日観た映画の半券をその文庫本にスッと挟み込んでみたよ。
また次に開くそのときまで。
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