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徹夜とか思い出とか
オールしてしまった。いわゆる【徹夜】ってやつ。
特に大きな仕事を抱えていたわけでもなく、誰かと遊んでいたわけでもなく、夜通しHuluで動画を見ていて、気付いたら朝だった。しかも、朝の8時。しっかり朝だ。
全51話完結のドラマの46話を見ていたのが日付を回った頃。クライマックスに向けて、これまでの伏線が回収されていく様子があまりにも楽しくて、朝の5時。ここまで見たんだからと意地になったのと、お腹が空いてきてしまって朝ご飯を挟んでしまったのとで、最終話まで。
一睡もしていないのに食べる朝ごはんにはものすごい背徳感があった。し、最終話が終わった時点で朝の8時だったので、今日はこのまま起きているんだろうなぁと思っていたけれど、次に気がついたときにはお昼だった。
午後からは用事があったから身体をなんとか起こして、歯を磨いて顔を洗って身支度をして。気だるい身体を引きずって、一駅分歩く。午後イチの予定は、友達にドーナツを買って行こうと思ったので。
朝8時の時点では、ドラマを見終えたスッキリ感と朝ごはんを食べた満腹感ですこぶる調子が良かったはずなのに。たった4時間の睡眠を挟んだだけで、外の陽の光は眩しく、なんだか吐きそうな気持ちだった。
学生時代のわたしはアホみたいにショートスリーパーだったので、好きな人と朝まで研究室でうだうだしても一限から講義に行き、夕方からのバイトまできっちりこなすタイプだった。そんなわたしが講義に行くタイミングで自室に戻った彼から
「あなたが一限に行ってから僕はもう一度眠りについてね、目が覚めたら16時。気怠くて吐きそうな気持ちだよ」
と夕方にメッセージがくるたびに、この人はわたしの数倍寝ているのになんでこんなにも気怠そうなんだろうか……と本気で不思議がっていた。
だけど、今日のわたしはよく分かる。中途半端な昼間の睡眠ほど、体内時計を狂わせるものはない。あと、あの頃のわたしはなぜあんなにも寝ないで生きていられたんだろう。信じられない。
4時間睡眠の後の春の陽射しは、とてもとても気怠かった。びっくりするくらい気怠かった。
春の陽射しにも、ひらひら舞う花びらにも、なんの罪もない。どう考えても100%わたしが悪い。それはよくよく分かっている。
どうしたらドーナツ屋さんまでの道のりを楽しく歩けるだろうと、考えて補聴器とiPhoneを Bluetoothで繋げてみた。音楽を聴くんだ。
わたしの中で絶対にテンションが上がる曲しか入れないと決めているプレイリスト「口ずさみたくなる音楽」をタップして一番に流れてきたのが、Mr.Children【ヒカリノアトリエ】
朝ドラのテーマ曲は、いつ聴いても絶対にハッピーな気持ちになれる。ドラマの放送時期は、ちょうどあのショートスリーパーだった頃。ちょうど、研究室から講義室までの短い道のりで鼻歌まじりに歌っていた曲だったので「陽射しが気持ち悪い」なんて不思議な話を思い出した。
思わずふふふと笑いながら上を向くと、優しい水色をした空から降ってくる桜色の花びらが吹雪のように舞っていた。春、なんて綺麗な季節なんだろう。
それにしてもだ。
朝から講義を受けて、夕方からバイトして、寮に帰ってお風呂に入って、また研究室に戻って人の論文手伝って……。はて、わたしはどのタイミングで朝ドラをみていたんだろう。
はて。
でもまぁそんなのは、もうどうでもよい。軽快な音楽と、気持ちよい陽射しと、綺麗な春の景色が揃えば、なんだって良い思い出になってしまうんだから。きっと。思い出はなんだって、いつだって、ハッピーに重ねたもん勝ちだもの。
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