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次は「そろそろお誕生日だし」って誘うんだ。
年の瀬だから
12月は、そう言い訳すれば大好きな人たちにとことん会えるので本当に楽しい季節だなぁと思う。クリスマスのウキウキ感が過ぎ去って、世の中がゆっくり今年の終わりに向けてペースダウンしていくこの空気感が、毎年なんともいえなく好きでたまらない。
普段、 #音の世界と音のない世界の狭間で それぞれ生きるわたしたちも、年末はこっそり待ち合わせて、夜の街を音のない口形と手話でわいわいと練り歩く。
わたしたちはともに、普段の生活では主に補聴器を活用して生活していて。四六時中、神経を研ぎ澄ませて音を聴いて、きこえる人たちと一緒に過ごしている。
第一言語は日本語です。手話は、第二言語です。ざっと10年目くらい。
というところまでもそっくりで、初めて出会った大学時代は、お互いに手話よりも口の形を読み取り合う方がスムーズだなと感じていたというのに。この10年間で、少しは思考も柔らかくなったのかな。お互いに聴こえないパートナーをもったり別れたり、聴こえるパートナーができたり引っ越しをしたり就職をしたり……
そんなことを重ねながら気付いたらトーキョーの街で年に数回待ち合わせては、日々わたしたちって頑張っているよねぇと労いあいながらお酒を飲んだりおいしいスイーツを食べたりする。
音の世界が好きで、今の環境に文句はないけれど、それってこうやってふとしたタイミングに帰ってこられる仲間がいるからなんだろうなぁとしみじみ思う。
もしわたしたちが親になって、自分の子どもになんらかの障害があったとしても、手術を受けるとか受けないとかどんかコミュニケーション手段を選択するかとかそういうことは全て置いておいても、わたしたちのような「ふと帰りたくなる同士」は絶対に作ってあげたいと思う。
わたしの生活では、【音の世界】の住人か【音のない世界】の住人がほとんどで、その狭間に生きていると自覚している仲間は数えられるほど。だからときどき、この #音の世界と音のない世界の狭間で もがいているのはただ一人なんじゃないかと溺れそうになる夜も、ある。
そんなときに、でもわたしには仲間がいるんだと思えることは、わたしの心の大きな拠り所になっている。たとえば、今話題のドラマを見た日のモヤモヤだったり、家族とのコミュニケーションだったり。
毎日連絡を取り合うわけでも、毎月のようにあったりするわけではないけれども、たまに会えるとちょっとホッとする。
そんな友達と「年の瀬だしさ……」の誘い文句で集えるこの季節の、澄んだ空気が、好きで好きでたまらない。
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