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今はまだ、身も焦がれるような恋を信じたいわたしと君との思い出。
運命
口にしてしまうと溶けて消えてしまいそうだけれども、わたしたちの関係を言い表す言葉はこれしかない。そう信じてしかいなかった。
彼は生まれる前からの幼馴染で、小さい頃からずっと一緒に育ってきた。思い出にはいつも彼がそばにいた。そう言っても過言ではないくらい、常に一緒だった。
今思い返せば重たいし、いつでも笑顔を強要してくるし、正直ちょっとめんどくさい。常に一緒にいるのが嫌で、思春期はわざと彼を避け続けるわたしがいた。中学を卒業する頃には合う回数も減って、いつしか思い出だけの存在になってしまった彼と再会したのは、大学院1年生のとき。
さみしかったんだ。
初めての寮生活に、初めての関西。仲良くしてくれる友達は確かにいたけれど、それでもいつも寄り添ってくれる人が欲しくて、彼ならいつでもそばにいてくれるだろうと呼び出したんだ。そしたら、あの頃と変わらないすました顔をして、わたしのもとにすっとやってきてくれた。嫌な表情一つせずに。
自分勝手に呼びつけておいて、「重い」だの「交際費がかかる」だの散々文句を言うわたし。すっとすました顔をしながら、相変わらず面倒くさい性格の彼。
やっぱり彼とは交わりあえない。
隣にいることが当たり前。でも、なんていうのかな。彼はだいぶ頭が良すぎるし、わたしたちは良くも悪くも収まりが良すぎる。そんなところが好きで好き。尊敬しているけれど、それと同じくらい彼と語り合うたびについていけなくなっちゃって、置いてけぼりにされちゃうような感覚もあって。
そう付かず離れずを繰り返していたら、あれよあれよという間に20代も半ばを過ぎてしまった。
ここまで来たからには、きっと彼と共に人生を歩んでいくのだろう。私の家族も友人も、なんならわたしも、そう信じて疑っていなかった。
だというのに。このタイミングで、恋をしてしまった。
いや、薄々感じていた。わたし、この人に恋をしているんだなって。でも、認めたくなかった。だって、わたしには彼がいるし。確かに正直重いやつだけど、小さい頃からずっとそばにいてくれた彼への愛着は言わずもがな。あのお茶目なF君に恋をしたら、彼との26年の思い出が全て消えて無くなってしまうんじゃないかと思うと、彼に愛されていたわたしを失ってしまうようで、胸がキューってなってしまって次の一歩に踏み出せなかった。
それでもね。あんなに賢い君が、まだまだ成長していくなんてかっこいいことを言っちゃうんだもん。わたしも負けないように全力で今の直感を信じて、F君とお付き合いをしてみようかなって思うの。
20代のうちにやっておくべきリストに入ってたもんね。
身も焦がれるような恋
君との関係は、良くも悪くも日常の延長線上。それは多分、お互い分かりきっていることだよね。でもそれじゃ、わたしはいつまでも君に寄りかかってばかり。君の賢すぎるところをうまく言い表せなくて「重い」とか「面倒くさい」で片付けてそれでも許されちゃうのは、なんだか違うような気がするの。
これから先どんな未来が待っているかはわからないけれど、今ここで直感で何かを選択してわたしなりに前に進んでみようと思うんだ。いつも君にもたれかかってばかりいたからね。
20代といっても後半戦。周りが結婚や出産をしていく中で、先の見えない恋に手を出すなんてお馬鹿だと言われるかもしれないけれど。それでもいいんだ。いつか、あそこで回り道をしてよかった。そう君と振り返るとき、わたしたちの関係がどうなっているかもまた未知数。
努力家でいつもそばにいてくれた君とはちょっと違ってね。Fくんはおしゃれで、軽く見えるけど根はとっても真面目でいろんなことを考えている人で。君なら選ばないような突拍子も無い道を選ぼうとするけれど、それもFくんの中で計算されたものであって。
F君を語るときのわたしには、否定的な言葉がひとつもない。そんなわたしが好きだったりする。
もちろん君と比べたらFくんとの日々が新鮮で刺激的だから、そう感じるだけかもしれない。それでも。これから先どうなるかなんてまだまだ誰にもわからない。だからこそ。今のこの直感を大事にしてみてもいいかな、なんて思うのよ。
暗黙の婚約状態じゃなくて、自分で切り開く未来をわたしは信じたい。だってほら、わたしたちっていつも一緒にいたけれど一度も「付き合おう」なんて言ったことはなかったじゃない。
それなのに、なんだか君に言い訳がましくこんな手紙を書いている自分が不思議でならないよ。
Fくんとの交際宣言をするつもりが、思いっきし君へのラブレターみたいになっちゃっているところもまた、全力でむかつくなぁ。
そんなわけで、父のお下がりのNikonを触り続けていたわたしは、本格カメラデビューをFUJIFILMで飾ることになったのです。
どんな未来が待ち受けているんだろう。なんだかそわそわしちゃうよ。
今日もお疲れ様でした。
おやすみなさい☺︎
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