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行ってきます。また来年も、きっとお任せです。
うわっ!髪の毛短かっ!いやー、新鮮だわ。
2ヶ月前、いつものように「いや、もうお任せします」と言い放ったわたしの髪の毛をばっさりとショートボブに切り上げたお兄さんが、笑いながらやってきた。
いやいや、切ったのあなたでしょ。
と突っ込みながら、「帰ってきたなぁ」と感じる。
大学4年生のとき、初めて髪の毛を染めたあの日からずっと同じ美容室に通っている。卒業して兵庫に飛んでからも、修了して東京に行ってからも。2・3か月に一度の帰省の目的の中でも、かなり優先順位が高い。というか、美容院によるためだけに帰省したこともある。
兵庫でも東京でも、前髪を切ってもらったりパーマをかけてもらったりとあちこちの美容院に行ってみた。それでも、シャンプーをしてもらうときの洗い方やマッサージ、髪の毛をとかすときの櫛の入れ方ひとつひとつになんとなく違和感があって、結局仙台に戻ってきている。
「お任せ」と言い切れるくらい技術的に信用しているのはもちろん。4年半の中で会話してきた中での会話のテンポもまた好きで。
美容院にいるときは基本的に補聴器は外しっぱなし。だから、私と話をするときは鏡に向かって声をかけてくれる。わたしはずっと鏡に映る彼の口元を見ながら会話をしていく。
わからないときは「ん?」ってきき直すだけで、嫌な顔一つせず鏡に向かってもう一度、ちょっと短めの言葉に言い換えて伝えてくれる。
わたしは相手の声はもちろん、自分の声も聞こえにくい。だから、ドライヤーの時間は特に自分の声の大きさを調整しにくい。そんなこともあってか、ドライヤーはアシスタントさんと2人がかりで黙々とさっと終わらせてくれる。
「似合うように」「わたしでも扱いやすいように」それくらいのお願いで、さらっと変身できて、リラックスできる場所。
だから、帰りたくなるんだ。
今回も、帰り際のお兄さんの一言は
行ってらっしゃい。風邪ひかないように、良いお年を迎えてね。
行ってきます。また、来年もお世話になります!
ちょっぴり短くなった襟足。お会計を済ませたわたしはマフラーをぐるぐると巻く。ちょうどよくポンとマフラーの上にのった髪の毛を揺らしながら、仙台の街へと繰り出した。風はいたいくらいに冷たいけれど、心はふわっとあったかい。そんな年の瀬。
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