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sanmariのひとりごと

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なんでもない日常の、でも、だれかにとって、ちょっと、特別なことたち。
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2020年1月の記事一覧

帰り道、ふと上を向いて歩いてみると、そこには。

はじめてまじまじと夜空を眺めたのは、確か小学生のとき。火星が地球に近づくその日、夜の校庭で望遠鏡を覗いた。 ほら、あれが火星だよ 望遠鏡のすぐそばにいたオトナにそう言われて勢い余ってふむふむとうなづいたけれど、どれが火星だったのかは私にはよくわからなかった。それでも、真っ暗な夜空がとっても綺麗だったことを覚えている。 中学時代の部活終わりに見た北斗七星も、高校時代バス停から家までの道のりで眺めた夜空も、パナマで町一帯が停電したあの日の星に抱きしめられているのではないかと

いつまでも覚えていたい。歩み寄ったその先にあるなにかに触れた瞬間を。

お。いらっしゃい。 笑みを浮かべて、彼女はマスクを外した。そしてもう一度、わたしが彼女の口元を見ていると確認してからこう言った。 「いらっしゃい」 インフルエンザが流行し、新型肺炎の話題で持ちきりな今日この頃。ニュースでは、一番の予防策としてマスクの装着を連日呼びかけている。 誰だって、健康でありたい。 そう思うのが普通で、わたしだって感染が怖くて家に帰ったら手洗いうがいと洗顔。外に来て行くマフラーとコートは玄関先にかけている。 それでも、聴覚障害のあるわたしが音

今はまだ、身も焦がれるような恋を信じたいわたしと君との思い出。

運命 口にしてしまうと溶けて消えてしまいそうだけれども、わたしたちの関係を言い表す言葉はこれしかない。そう信じてしかいなかった。 彼は生まれる前からの幼馴染で、小さい頃からずっと一緒に育ってきた。思い出にはいつも彼がそばにいた。そう言っても過言ではないくらい、常に一緒だった。 今思い返せば重たいし、いつでも笑顔を強要してくるし、正直ちょっとめんどくさい。常に一緒にいるのが嫌で、思春期はわざと彼を避け続けるわたしがいた。中学を卒業する頃には合う回数も減って、いつしか思い出

皿うどんと焼きうどん。

忙しい時間帯がひと段落して、ふぅっと一息。上司が買ってきてくれたどら焼きを食べていると、同僚たちの声が聞こえてきた。 なんの話をしているのだろう。 キョロキョロとしていると、いつも雑談を手話にして教えてくれる同僚の一人と目があった。すると彼女はいつも通り、次の発言から手話をつけて話をしてくれる。どうやら会話はご飯の話。 *** 皿うどんって、あの長崎のやつ?   あぁ、皿うどんって長崎のだったの? え。なんかそんなイメージ。パリパリしていて美味しいよね。   い

寝る前に、なんにもしないを楽しむときを。

コタツの上にはさっき淹れたフレーバーティ。ソファに座ってnoteの下書き画面を眺めながら、今日1日を振り返る。 特に何をしたわけでもなかったけれど、お風呂から上がって、大好きな人とテレビ電話をしながらニヤニヤして、紅茶を飲みながらソファに座っている。 心も体もぽっとあったかくなる。そんな今のこの状況がとんでもなく幸せだなぁと思いながら、紅茶を口に運んでいる。 平日は疲れきって家に帰ってきてバタバタとお風呂に入って、ご飯を食べる頃には猛烈な眠気が襲ってくる。コタツから出て

マスクが必要だけれども、そんなところでも葛藤が続いていく。そんなこの時期。

38.2度。 そう書かれた体温計を見ながら悟った。 「ついに、インフルエンザにかかってしまったんだ」 と。24時間保育所でバイトをしても、大学図書館でバイトをしても、遊園地でバイトをしてもインフルエンザにかからなかったというのに。ついに、きてしまった。 腹痛に吐き気に悪寒。 こんなとき、一人暮らしは心細い。病院に行きたくてもつらくて動けないし、ポカリを買いに行くこともままならない。このまま意識を失って永遠に目覚めなかったらどうしよう、とちょっぴり怖くなる。 救急車

技術は日々進歩している。だからこそ、期待しちゃうよね。

勤務先の最寄り駅まであと一駅というタイミングだというのに、電車のドアが閉まらない。1分、また1分と過ぎていく。 車内放送では、きっと電車が止まってしまった理由や運転再開時刻を放送しているのであろう。でも、聴覚障害のあるわたしには、わからない。 時間調整とかだったら周りに尋ねるのもなんだか申し訳ない。そんなとき頼りになるのは、Twitter。リアルタイムで「山手線遅延」とか呟いてくれる人がどこかにいるからだ。あと、車内放送を受けてツイートしてくれているので大体正しい情報が載

じっくりコトコト学べる時間を与えることのできるオトナになりたいな。いや、ならないとな。

手話を使うのに、声を出すきこえない子に出会った。 わたしは、びっくりして母に報告した。 同じ頃、彼女は彼女のお母さんにこう報告した。 きこえないのに、手話ができなくてろう学校に通ったことのない子に出会った。 幼稚部から高等部卒業までろう学校で育った彼女と、幼稚園から高校卒業まで一般校で育ったわたし達は、大学の推薦入試会場ではじめて出会い、その後同級生として4年間を過ごした。 わたしにとって、はじめてのきこえない同級生。手話を教えてくれたのも彼女だったし、音のない世界へ

電車を一本見送るのは、そんなに「惜しい」もんじゃないみたいだよ。

定員160名 反対方向から来た山手線の車両を窓からぼーっと眺めていると、車体にそうポツンと書いてあった。 さらっと、乗っている車両を見渡す。 ロングシートがいくつか。座れるのは、ざっと数十人。そして、座席の上に吊革が何十個か。 東京の通勤電車、ましてや山手線。地方に住んでいた頃は漠然と、ものすごく押し合いへし合い乗っているんだろうなぁ、と想像していた。 実際に通勤に使うようになってから思うのは、ドアの閉まるギリギリのタイミングがとにかく混む。つまり、ドア付近はとりあえ

起きているだけで、えらい。

復職して早2週間とちょっと。 正直に言おう。今週のわたしは、復職前よりも重労働だ。 慢性的に人手不足。そのうえ、いろんなウィルスが流行するこの季節。いろんなことが、容赦なく降りかかってくる。猫の手でも借りたい。というか、猫じゃなくて猫型ロボット。ドラえもーーーん!って叫びたい。 そんなわたしをみかねた友人が、勧めてくれたセカンドオピニオンに行ってきた。 諸々のお話をした後、ドクターから一言。 あなたね、起きてるだけで充分えらいですよ。 ここ最近、とにかく過眠で。楽し

もし、彼女だったら。

同じ2月生まれの友達と、毎年誕生会と称して集まりご飯を食べている。ご飯と一緒に恒例になっているのが、プレゼント交換。 小さい頃、誕生日の何が嬉しかったかって、周りの人たちからプレゼントをもらうことだった。サプライズもいいけれど、「これが欲しい!」を遠慮なく言えるこの日がホントにホントに待ち遠しかった。 大人になった今も、誕生日にプレゼントをいただくことはある。でも、なかなか「これが欲しい!」と大きな声では言えなくなってきたから。わたしたちの誕生会は、欲しいものリストをお互

少しずつ、でも着実に。

中・高・大とバス通学だったわたしは、ずっと電車通勤に憧れていた。就職してやっと手に入れた電車通勤。周りから あんな満員電車に毎日乗ってたらすぐに飽きるよ なんて言われていたけれど、今のところ飽きることなく約2年間の電車通勤生活をエンジョイしている。わたしが電車好きだってことも相まっていると思うのだけれども。 そんな電車ライフの中で最近よく目にするのが、車椅子のお客さんと乗降案内をする駅員さん。 自宅の最寄駅でも職場の最寄駅でも、今年度になってよく見るし、なんな

褒めてもらえる場があるからがんばれる、でもいいよね。

年が明けてもう半月。今年初めての満月も、今年初めてのお給料日も迎えてしまった。なんだかあっという間。 年始の目標として立てたもののうちのひとつ。 まいにち、朝ごはんを食べること。 これは、通っている茶道の社中の初釜で、皆様の前で宣言した(というか、先生に約束させられた)目標でして。 やっぱり、大事な人との約束は裏切れないし、それもわたしの健康を思って仰ってくれていることだから尚更裏切れない。 いまのところ、毎日Twitterを使ってレコーディングをしている。 パ

ただ、そばにいるだけで。

夕食を共にする人がいること。これって、しあわせのひとつなんだと思う。ひとりでも食べられるけれど、誰かがそばにいるだけで食欲がちょぴっと増すし、美味しく感じられる。ひとりでもできることだけれど、誰かと一緒だとなんだか心がほわっとすること。それを人は、しあわせというのではないだろうか。 仕事帰り、お茶のお稽古に行ったら先生から 「お稽古の中休みに、お夕飯を一緒に食べましょう」 と誘っていただいた。 ご飯におでん、お浸しに煮豆、そしてお味噌汁。あと、冷しゃぶもあった。 ひとりだ