泳げ!磯丸のあじくん


かつては広い海を泳いでた 名前はアジ
小さな水槽の中その向こうで 奴らがそう呼ぶ
どうやら僕等はキレイになれるという噂らしい
外の世界とやらは そんなに美しいとこなのか?

周りはいつだって憧れをもってやってきたのか?
もう一度海を泳ぎたいと嘆くものもいる
キレイになりたいんじゃないの?と思うものもあるが
水槽を出た仲間は未だ還ってきてない

引っかかったのが悪いんだと
自ら責めるものがある
正直僕には関係のない話だと 狭い海を泳ぐ


しばらく経って上から大きな「ヤツ」が潜っては
どんどん仲間は外の世界へと連れてかれてく
僕の横で泳ぐ彼は 淋しそうに
涙まじりに言ったのさ ah

「ちゃんとアイツらにさよなら言ったか?」

海の向こうに変わり果てた仲間
たしかにキレイになってるけど
「あーはなりたくない」と泳ぎ疲れて
隣で動かなくなった


「生きてる」ってなんだろ?なんて 僕は考えた
一生懸命なことなの?自由になることなの?
今まで何も考えずに 海を泳いでいたのか?
「そんなわけない!」と 悩み苦しみ自分を攻める

そんな事で立ち止まっていたら 
また"ヤツ"は潜り
ついに僕も外の世界へと 連れていかれる
まな板の上 大きいものがキレイにしていくその瞬間に
走馬灯のように 色んなものが浮かび始める


もっと色んなことがしたいな
仲間とずっと泳いでいたいな
敵よりもずっとずっと強くなりたいな
そして誰かを守りたいな
そして好きな子と恋したいな
そして家庭を作り 子供を授かる
そんな幸せな日々送りたかったな…

どうやらできそうにないや

かつては広い海を泳いでた 名前は「あじ」
そんな僕もキレイになって テーブルに運ばれる 
「スゴイ」と言ってケータイで僕の写真を撮ってる男女が
最後に僕に言ってくれた「いただきます」


なんだか嬉しかったな
安心して 眠れる

ミニアルバム「ナチュラル」より
一曲目に収録
W・M/kakeru
(2017.1 作成)

ミニアルバム「ナチュラル」
各音楽サイトにて配信中。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?