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2022年8月発災の一酸化炭素中毒事故・備忘録

一酸化炭素中毒に関する重要な労働災害ですが、書き留めておかないと忘れられてしまいます。また、同業他者への注意喚起しにくくなってしまうので、このnoteにて残しておきたいと思います。

なお、企業名は本質的な情報ではないので、記載していません。(情報元にいけば、見ることはできますが…)

まとめると、防止のために必要だったことは、下記2点になるかと思います。特に新規性がない話ですが、基本に忠実なことが重要ということかと思います。

  • 一酸化炭素ガスが発生する機器を使用するときには換気設備を併用する。

  • 警報装置・アラームが動作することを確認する。

当初の事故報道概要

2022年8月23日午後0時50分ごろ、企業Aの食堂の調理室で「5、6人が倒れている」と119番通報があった。
消防局によると、食堂の洗浄室付近で作業をしていた14人が体調不良を訴え、病院に搬送された。このうち1人は一時、意識不明だったが、その後、意識が戻ったという。現場からは一酸化炭素が検出されたといい、市消防局は搬送者の症状も合わせると、一酸化炭素中毒の可能性もあるとみている。
当該企業によると、体調不良を訴えたのは、食堂で調理を担当する会社の従業員だという。

朝日新聞デジタル、2022年8月23日17時11分掲載記事より引用(企業名等は当方で削除)

当初報道における不明点

当初の報道からすると、食堂における何らかの作業において一酸化炭素が発生した労働災害事故と思われました。

しかし、いくつか疑問がありましたので、追加で調べていました。

  • 食堂における作業(調理と思われる)で一酸化炭素が発生するのか?

  • 発生する作業は定常的な作業か?

  • 定常的な作業であれば、一酸化炭素災害を防止する器具(換気扇や警報)は作動したのか?

同様な災害防止のための情報

これらの情報は、当該企業内では共有され、再発防止のための教訓になっていると思います。

しかし、それが外部には一般に出ず、水平展開が不十分となります。そのため、本noteにて情報をまとめておきます(いずれ厚労省の労災データベースには載るとは思いますが…)。

追加の報道から得られた情報

事故後3日目の報道では、より詳細な情報が記載されていました。

(略)
従業員がちゅう房の洗浄室の換気設備が稼働していなかったと説明していることがわかりました。
(略)
警察によりますと、14人はいずれも食器などを洗う洗浄室の中やその近くにいて、現場に駆けつけた際の消防の調査では、洗浄室から一酸化炭素が検知されています。
洗浄室にはガスを動力とする大型の食洗機があり、警察が現場で詳しく調べを進めたところ立ち会った従業員が「当時、洗浄室の換気設備を稼働させるスイッチが入っていなかった」と説明していることが、捜査関係者への取材でわかりました。

警察は洗浄室内の換気が不十分だったとみて、当時の状況を詳しく調べています。

NHKニュースウェブ、2022年8月26日 14時04分掲載記事より一部引用(企業名等は当方で削除)

この内容から、ガス動力食洗機から発生した一酸化炭素であること、及び、換気設備は作動していなかったことがわかります。

また、警報装置についても下記の報道がありました。

(略)
消防によりますと事故が起きた際、洗浄室付近ではガス漏れなど異常を知らせる警報機のアラーム音が鳴っていなかったことが分かりました。
 現場近くにいた従業員からもアラーム音を聞いたという報告がはなく、駆け付けた消防隊員らも聞いていないということです。
 また消防が現場に到着した際、洗浄室からは一酸化炭素が検出されましたが、その後洗浄室内にある換気設備の稼働を確認し一酸化炭素が検出されなくなったということです。事故当時、換気設備が正常に稼働していたかどうかはわかっていません。
 厨房に設置されていた警報機が一酸化炭素の検出に対応しておらず、異常に気付くのが遅くなった可能性もあり警察や消防などが詳しく調べています。

株式会社静岡朝日テレビ LOOK 2022-08-25より一部引用

警報装置・アラームは動作していなかったようです。

必要だった対策

一酸化炭素ガスが発生する機器を使用するときには換気設備を併用することを徹底することが必要でした。併用できなかった(しなかった)ミスが生じた原因については、報道からはわかりませんが、内部では調査がされているものと思われます。

また、警報装置・アラームが動作することを定期的に点検することも必要です。最終の点検時期が不明なので、今回の災害での寄与度はわかりませんが、こちらも内部では把握していることと思われます。

また、これらよりも根本的な対策についても考えたいと思います。

より根本的な対策(1):機器取り替え

洗浄室で用いる機器をガス動作ではない機器に取り替えると良いと考えます。特に、⾃然換気が不⼗分な場所(換気⼝の無い屋内作業場等)での内燃機関を有する機械 の使⽤は、法令(労働安全衛⽣規則第578条)により禁⽌されています。

発災の原因となった機器がどのような物か分かりませんが、電気により動作する機器への取り替えは検討すべきと考えます。

より根本的な対策(2):機器の改造

換気設備が動作していないことが問題でしたが、スイッチを連動させるという改造は、同様の発災防止に役立ちます。つまり、換気設備のスイッチを入れないとガス動作機器のスイッチが入らないという改造です。さらに、警報装置の正常動作もガス動作機器の作動条件にすれば、発災確率をかなり小さくすることができます。

このようなフールプルーフな設計への変更が必要になると考えます。


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