今年も1曲だけ、星街すいせいの曲を買った
2018年から毎年、1曲だけiTunes Storeで買うということをやっている。
きょうびYouTubeをひらけばいくらでも曲は聞けるし、サブスクすれば無制限で聴き放題なのだけれど、たった1曲を買いに行く。
ネットに繋げなくても聴ける曲、あえて手間とお金をかけた曲は、わたしの中できちんと根付いてくれる。音楽に親しんできていなかったからこそ、1曲にしぼって今までは事足りていた。
そんななか、今年はずっと、一曲を悩んでいた。
今年は自分がどう振る舞いたいか?が決まらなかったからだと思う。
現状と重ね合わせる曲を選ぶ
2022年は星街すいせい氏の『天球、彗星は夜を跨いで』だった。
この曲を購入したとき、前職で働いていて、仕事が全然好きじゃなかった。
片手間でできるような仕事だけど繁忙期は物量が異常にあって、9~23時まで好きじゃない仕事をして、嫌いな人たちと働いていた。
友だちと半年かけて計画した旅行に行くためにその旅程以外のゴールデンウィークは仕事の休日出勤に当て、旅行前日も深夜1時まで働いていた。
「残業代は入るから〜〜〜!!」
そう言いながら、旅費を稼ぐつもりで働いていた。昨年力を入れていた企画は全部飛んで自信を失っていた時期だったし、部長は会社を辞めるし、自分への自信を失っていた。
それらしいOLで、幸せになれたらいいかな。
そういう囁きと、このままじゃ嫌だって自分でずっと悩んでいた。
転職の話の詳細は割愛するけれど、このときにたくさん背中を押してもらって、今のわたしがある。この職種で転職できるかなんて分からなかった。できるとも思っていなかったし、こんなにいろんな感情を取り戻せるとも思っていなかった。
そんな時期に流していたYouTubeで偶然出てきたのが、星街すいせいだった。
まだ星街すいせいというVtuverが個人勢で、お金がなかったとき、それでもアイドルになるんだ、私はアイドルなんだと叫んでMVも自分で作って熱量を作り切った彼女のストーリーにやられたのだ。
わたしはいまだににわかファンだし、オリジナル曲と歌みたをたまに見る程度だ。切り抜きで見るような人だけれど、ここまで踏ん張っているかな?って思った。
今や大きな箱で人気を誇る彼女の、まだほんの少し知られただけの時代。
まだ頑張れるだろ、って背中を押してもらってた。彼女は自分を捨てることなく、アイドルの道を駆け上がっていった。それに背中を押してもらって、毎日ずっと聴いていた。
あそこで大好きな人たちに誇れる自分になりたいと思って、変わりたいと願えなかったら今の私じゃなかったと思う。
楽な仕事でお金をもらって、沈みゆく船に乗り続けていただろう。
旅行から帰ってきてから、まずは会社のパソコン引っつかんで終バスに乗り、夜のレインボーブリッジを走りながら資料を作りながら、何度も『天球、彗星は夜を跨いで』を聴いた。
こんな空虚な日は終わりにする。次の繁忙期に、私はもういないんだ。
『かげきしょうじょ』に出てくる聖(ひじり)が呟いた一節に重ねるように、とにかく繁忙期を乗り切った。12連勤も乗り越えて、6月を迎えた。
この時点でも、もはや何度聞いたか分からなかった。
その後、転職中に落ち込むたびに流したし、苦手な自己理解とか自己PRを作るたびに流しながら作った。仲の良かったエージェントくんとの打ち合わせ前にも流していた。
今のボスとの面談前にも流した。先輩との面談前にも聴いた。そして、内定が決まった瞬間、流すのを辞めた。
わたしの気持ちと、重ならなくなったからだ。
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アレから1年経って、予想外のことばかりだった。転職時には「一生隣にいるよ」なーんて言っていた恋人は隣にいないし、この人がいいと思って選んだ先輩は、神様からのギフトによってお休みに入られた。
昨年のこの時期にはまったく想定もしていなかった人たちにも会った。仕事しかしてこなかったこの数年がやっと、彩りを持ち始めたのだ。
今年悩んだのは、自分がどうなりたいか
私は今年、どうなりたいのかな?だった。
ずっとずっと落ち着かなくて、空回ってぽろぽろ泣いて。2ヶ月半近くの別れ話も、わたしを苦しめた。先輩がいなくなって、責任領域が広がったのも、わたしを苦しめた。すべての判断が自分にかかって、それを誰にも共有できないのはわたしにとっては初めてで。
いろんな人のおかげで、少しずつ上向いてきて、新しくコンテンツを食べるようになって、今年の1曲の選択肢はさらに広がった。
今年スタジオ入りするために叩いている曲とか、感動した映画の劇中歌とか、YOASOBIの『アイドル』もよく聞く曲ではあった。
どれを選んでもいい曲だけれど、自分の軸が定まっていない。
そう思って、ここ2日悩んで、結局手にしたのは星街すいせいの『Stellar Stellar』だった。
一番響いたのは、あえかなヒロインじゃない、というくだりだった。ヒロインじゃない。わたしがヒーローだ、わたしがわたしを助けるんだって。
「そうやって決めたい」ってわたしが叫んだから、購入を押せた。誰に頼りすぎることもなく、柔らかなバランスをとって、しなやかに笑える数ヶ月にしたいんだって。
この覚悟を決めたら、あとは簡単だ。この曲が合わなくなるまで、走り抜けるだけだ。