広瀬和生「この落語を観た!」vol.25
7月24日(日)
上野鈴本演芸場(昼の部)12時15分開演
広瀬和生「この落語を観た!」
7月24日の演目はこちら。
春風亭枝次『浮世根問』
古今亭佑輔『桃太郎』
ダーク広和(奇術)
古今亭志ん五『宇宙人と埼玉人』
桂文楽『替り目』
ロケット団(漫才)
むかし家今松『夏の医者』
古今亭駒次『十時打ち』
ペペ桜井(ギター漫談)
春風亭一之輔『鈴ヶ森』
~仲入り~
三増紋之助(曲独楽)
柳亭燕路『お菊の皿』
古今亭菊之丞『鍋草履』
林家正楽(紙切り)
柳亭こみち『寝床~おかみさん編~』
ペペとこみち(大喜利)
古今亭佑輔の前名は金原亭乃々香。今年2月に志ん輔門下に移籍した。
『宇宙人と埼玉人』は、火星から転校してきた吉田君の噺。吉田君の父は火星人、母は埼玉県人で、お父さんが病気で亡くなったため、お母さんが生まれ育った川口に引っ越してきたという設定。志ん五のトボケた語り口がほのぼのとした味わいを醸し出す。家庭訪問での“埼玉県人クイズ”も楽しい。
鉄道マニアがプラチナチケットの発売開始の10時ちょうどに「みどりの窓口」の係員に入力してもらうのが“10時打ち”。駒治の『十時打ち』は夢の寝台特急の発売を目前に東京駅の10時打ちの達人“すっぽんの谷口”が上野駅に拉致される噺。手に汗握るバカバカしくもスリリングな展開が素敵な名作だ。
こみちの『寝床~おかみさん編~』は大店のおかみさんがヘタな義太夫に凝っていて、旦那はそれに閉口しているという設定。皆が自分の義太夫から逃げ回っているのを知ったおかみは、「この店の暖簾を守るために気を遣い、苦労ばかりしてきた私の、たったひとつの楽しみが義太夫を語ることなの。でも皆が私の義太夫を聴きたくないのなら、この店に私がいる意味がありません。里へ帰らせていただきます」と言い出すが、女中たちの活躍でおかみは機嫌を直す。この“女中たちの活躍”こそが、この噺の肝。おかみを持ち上げる女中頭のミエミエのお世辞の数々の楽しさはこみちならでは。
皆が寝ているのを見ておかみさんが「時間も時間ですから今日はここまでにしましょう」と言い、女中たちがお土産を配って義太夫の会は終演。おかみの座布団で寝ていた婆やの「ここが私の寝床でございます」でサゲた後、こみちは高座に残り、まずはオモチャのピアノを運び込み、続いてペペ桜井を呼び入れて、“ペペとこみち”というユニットでピアノ(こみち)とギター(ペペ)と共に『若者たち』を。三番ではこの曲を「ハーモニカを吹きながら歌う」というペペ桜井の持ちネタを二人して披露するという楽しい趣向。週末限定のスペシャルな“大喜利”で場内を沸かせてお開きとなった。
次回の広瀬和生「この落語を観た!」もお楽しみに!
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