広瀬和生の「この落語を観た!」vol.123
3月11日(土)
「四季の萬会」@浅草見番
広瀬和生「この落語を観た!」
3月11日の演目はこちら。
三遊亭楽太『孝行糖』
三遊亭鳳月『ふぐ鍋』
三遊亭萬橘『二階ぞめき』
~仲入り~
三遊亭萬橘『花見の仇討』
萬橘の『二階ぞめき』は吉原通いがやめられない若旦那が頭が固い番頭に意見され、シャレでかわそうとしても全然シャレが通じなくて「お前、シャレがわからなきゃダメだよ」と呆れるのが発端。「私は吉原をひやかすのが好きなんだよ」と若旦那が言うと番頭が「じゃあうちの二階に吉原を作ったらそれでいいですか」と聞き返し、「いいねえ、シャレがわかるようになったじゃないか。それだよ。じゃあちょっと出かけてくる」と言って若旦那が何日も吉原に居続けをしている間に番頭が二階に吉原を作る。「二階に吉原を作る」というのはシャレじゃなくてマジだった、という噺。
『花見の仇討』では冒頭で「巡礼兄弟の仇討」の相談をしているときに集まっているのが四人じゃなくて五人なのが伏線。「三人で来いって言ったのになんで四人で来るんだよ!」「だって源ちゃんは花見をさせたら右に出る者がいないから」ということで連れられてきた源ちゃん、他の四人が浪人・巡礼兄弟・六部に決まったので「俺にも何かやらせてよ」と言うと「どうしてもやりたきゃ素っ裸で身体を茶色に塗って桜の枝を持って立ってれば」とあしらわれてふてくされ、それをよそに四人は稽古に没頭。ところが翌日、六部役の男は(耳の遠いおじさんに呼びとめれるのではなく)「向こうに行ったらこの酒を分けなきゃいけないから、いま呑んじゃえ」と一人酒盛りで酔っぱらい、「もういいや、呑んだから寝ちゃおう」と家から出ないまま。巡礼兄弟は途中で仕込み杖を振り回していたら鞘が飛んでいって侍の背中に当たったことから「助太刀をいたそう」と言われ、この侍が茶番の最中に現われたので、浪人と巡礼兄弟が逃げていくと、意外な光景が……。「勝負は五分でも六部が来ない」ではなく、伏線を活かした見事なサゲ。随所に萬橘ならではの独得な演出が施された爆笑編だ。
次回の広瀬和生「この落語を観た!」もお楽しみに!
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