広瀬和生の「この落語を観た!」Vol.139
6月21日(水)「両極端の会 Vol.17」@紀伊國屋ホール
広瀬和生「この落語を観た!」
6月21日(水)の演目はこちら。
三遊亭白鳥『それいけ!落語決死隊 金の亡者』
~仲入り~
柳家三三『姫様の忍術』
白鳥と三三が互いに宿題を出し合って新作ネタおろしをする年一回の「両極端の会」。今回の三三から白鳥への宿題は「お金が絡む笑える噺を」、白鳥から三三への宿題は「ときめく切ないラブストーリー」。白鳥が演じたのは昨年の「両極端の会」で三三からの「コロナを吹っ飛ばす噺を」という宿題に応えて披露した『それいけ!落語決死隊 コロナ退治』の続編だった。
コロナ禍が収まらず落語会が禁止された日本で命懸けで闇落語会に足を運ぶ“落語決死隊”だったチエとメグミ先輩の二人組。実体化して「人間を滅ぼす死神」としての正体を現したコロナを「アジャラカモクレン」の呪文で退散させた彼女らの活躍で普通に落語を観に行ける世の中が戻ったのだった。数年後、落語協会の会長を裏工作で手に入れた三遊亭白鳥が“ブラックスワン”と改名し、協会の落語家に対し「古典の演目の使用料を協会に収めろ」という無茶な命令を出したと聞いたチエとメグミ先輩は、ブラックスワンに取り憑いた金の亡者を退散させようと落語協会に乗り込むが、そこで見た光景とは……。
ドタバタ活劇になるかと思いきや、心温まるエピソードに着地する『それいけ!落語決死隊 金の亡者』。落語家たちが直面する“哀しい現実”に白鳥があえて切り込んだ、バカバカしくも哀愁漂う異色作。
三三が披露したのは、お転婆な姫様が忍者に恋をする『姫様の忍術』。三太夫の制止を振り切って城から出て山歩きをしていた鶴姫は、マムシに咬まれて崖から落ちそうになったところを助けてくれたイケメン忍者に一目惚れ、彼の下で忍術の修業をしたいと言い出す。だが戸隠カバ蔵というこの忍者、ある理由で姫の前に姿を現わすことが出来ないという。三太夫を仲介役とする遠隔指導で修業に励む鶴姫。その父である殿様は天下を収める豊臣家に忠誠を尽くす西国の小大名。秀吉が亡くなり関ヶ原の戦いが勃発すると西軍につき、大勝した東軍に城を攻められると城を枕に討死しようと決意、三太夫に「鶴姫を連れて逃げよ」と命ずるが……。
急転直下の意外な展開。単なるギャグと思っていたものが重要な伏線となっていたという白鳥ばりの演出、落語ファンを喜ばせる小ネタもまぶしながら場面は一転して甘酸っぱいエピローグへ。笑いを交えて素敵な余韻が残る綺麗なサゲへ。お見事!
次回の広瀬和生「この落語を観た!」もお楽しみに!
※S亭 産経落語ガイドの公式Twitterはこちら※
https://twitter.com/sankeirakugo