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#15 ギミー・シェルター/ローリング・ストーンズ

【レット・イット・ブリード】にするかベストの【スルー・ザ・パスト・ダークリー】にするか悩んだ。高1の頃だったと思う。ストーンズのどのLPを買うか。

もちろん【スルー・ザ・パスト】のほうが、知っている曲も多いし、優先すべき要素は高かった。しかし、私が買った初めてのストーンズは【レット・イット・ブリード】である。

理由は2つ。
①片道1時間半かけて高校に通っていた私は、図書館で帰りのバスを待つようになっていた。かといって、勉強しているわけではなく、本棚を物色しては興味本位に読み流していた。「ロックの心」という書籍があった。ロックで英語を学ぶと書いてある。ビートルズ、ビリー・ジョエル、ポール・サイモン、10CC、などロックの名曲が訳詞とともに掲載されており、英語のイディオムも学べるようになっている。そこに、ローリング・ストーン誌のオールタイムベストアルバムが載っていた。ストーンズのアルバムはこの【レット・イット・ブリード】がランクインしていたのだ。チャートオタクはランキング形式に弱い。よし【レット・イット・ブリード】にしよう!

②友人Sくんと映画「スタンド・バイ・ミー」を見に行った。今は亡きリヴァー・フェニックスの永遠の輝きがフィルムに焼き付いており、キーファー・サザーランド、大好きなリチャード・ドレイファスも脇を固めた青春映画の傑作である。その同時上映が「クロスロード」だった。「アウトサイダー」「ベスト・キッド」でその名を知っていたラルフ・マッチオが主演の青春ブルース・ロード・ムービーといったところか。中に出てくる伝説のブルース・マン、ロバート・ジョンソンが気になった。調べたとところ【デルタブルースVol.1】【Vol.2】のLPが出ていたらしいが、この時は入手することはできなかった。その後、90年に【コンプリート・レコーディングス】がリリースされ大きな話題となり、五番街ビルのタワーで縦長BOXの輸入盤を購入することとなる。そのロバジョンの「むなしき愛(ラヴ・イン・ヴェイン)」がこのアルバムに入っている。よし【レット・イット・ブリード】にするか!


こうして出会ったのが「ギミー・シェルター」である。イントロはキースが奏でる不穏なギターフレーズ、オーヴァーダブされて2本。プロデューサー、ジミー・ミラーのギロは死神博士(天本英世)が登場しそうだ。相変わらずビル・ワイマンのベースは大胆かつ繊細で、そこに絶妙なタイミングでチャーリー・ワッツのドラムが入室する。メリー・クレイトンのゴスペル風コーラスが戦慄感を煽る。

アルバム通して、ライ・クーダー、バイロン・バーライン、ボビー・キーズ、レオン・ラッセル、アル・クーパーなど、客演も豪華で聞きどころが多い。オルタモントの悲劇も起こり、ストーンズの悪魔的イメージを代表するナンバーとして君臨しているが、わたしはこの曲をある種の反戦ソングだと信じて疑わない。


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