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#7 サンシャイン・ラブ/クリーム
NHK-FMの「軽音楽をあなたに」は、田舎のロック少年にとって、未知の音楽を知る魔法のサウンドチェンジャーだった。
ロック、ジャズ、歌謡曲、イージーリスニング、曜日変わりの多彩なDJ諸氏が至福の2時間を提供してくれる。もちろんFM誌の番組表にもオンエアリストが掲載されていることが多かったので、エアチェック小僧にはとても重宝した。
基本的には、曲ごとに録音していくのだが、ごくまれに、2時間そのままRECしてしまいたい欲求にかられることがあった。しかし、イレースしながら使っているテープには限界があり、番組まるまる録音するには空き容量が不足していた。その時、悪魔が耳元でささやいたのである。
兄が中学に入った時、親が大枚をはたいて英語のカセット教材を購入した。理由はわからない。どちらかというと貧しい農家だったので、何かのお付き合いだったのかもしれない。当然、弟の私も使用したのだが、30本近いカセットを聴きながら本気で勉強していたとは言い難い。かなり早い段階から、ツメにセロテープを貼り、エアチェックに活用したい欲求に駆られてはいたが、土俵際でなんとかとどまっていた。
火曜日の「軽音楽をあなたに」。山本さゆりさんの柔らかい声が心地よい。エリック・クラプトン・ヒストリーと番組表にある。ヤードバーズ、ジョン・メイオール&ブルースブレイカーズ、クリーム、ブラインドフェイス、デレク&ザ・ドミノス。これは聞き逃せない。迷わず、英語教材のツメにセロテープを貼る。
83年当時のクラプトンはワーナーに移籍しての第一弾【マネー&シガレッツ】リリース後。悪いアルバムではないが、中1にはあまりピンとこなかった。ラジオでは「レイラ」「アイ・ショット・ザシェリフ」は時々流れていたので、ギターヒーローだということは知っていたが、何者かはまだわからなかった。
英語教材テープに録音しながら、60年代のディープなバンド遍歴を目の当たりにする。「フォー・ユア・ラブ」のポップ路線に反対しヤードバーズ脱退とのことだが、私にはまったくポップに聞こえなかった。なんといってもクリームにやられた。80年代ヒッツにまみれた私に、クリームの音像はヤバすぎた。
みんなバラバラで好き放題に演奏している。でも確かにロックである。クラプトンの不穏なウーマントーンにしびれ、ジャック・ブルースの歌声に酔い、ジンジャー・ベイカーの中低音タム連打に撃ちぬかれた。ネバネバしたヘドロのようなロックだったが、それから数日間にわたり私の頭から「サンシャイン・ラブ」のイントロが離れてくれないのだ。
しばらくして、【カラフル・クリーム】を入手した。サイケなジャケットから盤を出し、針を落とすと「ストレンジ・ブルー」が部屋を満たしていく。クラプトンが敬愛するロバート・ジョンソンよろしく、私も悪魔と取引をして至福のロックを手に入れた。