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#41 ビートでジャンプ/フィフス・ディメンション

 20年ほど前、とあるラジオ局スタッフ向けの制作セミナーで講師をしたとき、受講者に話した生ワイドの選曲メソッドがある。1曲目はナウヒッツ、2曲目は去年のヒット曲、3曲目は5年前のヒット曲、4曲目は30年前のヒット曲。そしてラスト5曲目は10年前のヒット曲。これらを順不同でローテする。素人さんでもこれなら選曲できる。

 機械的のようだがやりようによっては、多世代に響く、なかなかのプレイリストができあがる。いや・・・ダメだ、こんなのはAI選曲のようで事務的過ぎて腹が立つ。選曲に情がない、音楽へのリスペクトもない。これは、やることなすことすべてうまくいかなかった時期の、もがき苦しんだ産物として一笑していただきたい。

 ここに20年前のヒット曲がなぜないのか。かつて、先輩に言われた一言が脳裏に浮かぶ。「20年くらい前の曲が、いちばん古くさく聞こえるんだよ」。
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                           
 60年代に一世を風靡したヒット曲。それらが最も忘れ去られていたのは80年代だったかもしれない。先輩の言葉も一理ある。特に明確な後継者やフォロワーがいないミドル・オブ・ザ・ロードのポップフィールドではその傾向が顕著だ。

 ジム・ウェッブが手掛けた、フィフス・ディメンションやグレン・キャンベルの一連のヒット曲もその範疇と思う。80年代のエアチェック小僧だったころには、ほぼラジオで聞いたことがなかった。かかるとしたら、萩原健太さんの番組くらい。

 84年頃、FMレコパルでグラミー主要4部門の歴代受賞曲一覧が掲載されていて、切り抜いて大事に保管していた。68年度受賞曲(67年のヒット曲)で、見事レコード・オブ・ザ・イヤーに輝いたのが若き天才ソングライター、ジム・ウェッブ作、フィフス・ディメンションの「ビートでジャンプ」だった。

 同じくジム・ウェッブが作った「恋はフェニックス」との対決を制した。ウェッブこの時、まだ21歳。グレン・キャンベル「恋はフェニックス」「ガルベストン」「ウィッチタ・ラインマン」、リチャード・ハリス「マッカーサー・パーク」など、短期間で時代を代表する作家となる。

 どこかで聞いたことがあると思ったので、幼いころに流れていた記憶がほのかにあったのかもしれない。スタンダードとしての地位を獲得し、70年代初頭までは流れていたのだろう。

 アルバムジャケットも気球に乗ったメンバー5人だし、トランスワールド航空(のちにアメリカン航空に吸収合併)のCMソングだったこともあって、上へ上へという高揚感にふさわしいアレンジとなっている。

 プロデューサーのボーンズ・ハウは、ママス&パパスの黒人版を狙い、バックも同じハル・ブレイン、ジョー・オズボーンのリズム隊やレッキング・クルーの面々を起用、ママパパの「青空を探せ」カバーでデビューさせる。

 当初のコンセプトは、コテコテのR&Bコーラスグループだったが、この路線転向が彼らの命運を分けた。スプリームスやテンプテーションズのようにレーベル・サウンドを背負うこともなければ、本家ママパパのように一人のソングライターに依存することもなかった。

 ウェッブ以外にも、ローラ・ニーロ、バート・バカラック、P.F.スローン&スティーヴ・バリ、イギリスのトニー・マッコーリーやニール・セダカにアシュフォード&シンプソンなど多彩な作家陣の佳曲を次々と演じてみせた。

 一見、明確な個性が見つけづらい集団ではあったが、その後のフォロワーは見当たらない。それこそ彼らの個性が唯一無二だったことの証左である。

★番組情報:レコードアワー
放送時間:毎週月曜 8:00~9:00
再放送情報は三角山放送局HPのタイムテーブルをご確認ください

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