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#16 ステイ・ゴールド/スティーヴィー・ワンダー

オクラホマのタルサ近辺といえば、レオン・ラッセル、ジェシ・デイヴィス、J.J.ケイル、ロジャー・ティリソン、デヴィッド・ゲイツなど広くオクラホマ人脈を形成する重要人物を数多く輩出している。そのタルサを舞台とした映画が83年、フランシス・フォード・コッポラの≪アウトサイダー≫である。女子高校生が映画化希望の手紙をコッポラに送ったことがこの映画の発端である。

コッポラ80年代の青春路線を代表する作品で、マット・ディロン、ダイアン・レイン、ロブ・ロウ、ラルフ・マッチオ、パトリック・スウェイジ、エミリオ・エステべス、レイフ・ギャレット、そしてトム・クルーズ。まさに青春スター・アヴェンジャーズ、枚挙にいとまがない。

主演のポニーボーイは≪E.T.≫でエリオットの友人役だったトーマス・C・ハウエルが演じ、彼の代表作となる。敵対するグループのリーダーを殺してしまった、ラルフ・マッチオ演じるジョニーとポニーボーイ。マット・ディロン演じるダラスのすすめで教会に潜伏する。外出中、その教会が火事になり、子どもたちを助けて大火傷を負うジョニー。ジョニーの後を追うように、自暴自棄になったダラスも強盗を働いた上に警官に射殺される。

主題歌は冒頭とエンドロールで流れる。完璧な映画主題歌である。スティーヴィー・ワンダーのハーモニカはこの映画の象徴といえる。
抗争、軋轢、葛藤、不信、乱闘、友情、喪失。青春映画のすべてがこの映画には詰まっている。

“映画館の暗がりを出て明るい陽射しの外に出たとき、オレの心には2つのことがあった。それはポール・ニューマンのこと、家に帰ること”。有名な小説の冒頭である。マット・ディロンが表紙のS.E.ヒントンの小説は、高校生の時に入手し読み返した。確か、読書感想文を書いたと思う。若い命を燃やし灰になる直前、ラルフ・マッチオ演じるジョニーがつぶやく。“Stay gold”と。

青春は人生のたった一瞬かもしれないが、尊くはかない時間であると歌われる。誰もが共感できる思いであり、若さの持つ突破力と危うさをうまくコントロールできないあの頃を見事に表現している。スティーヴィー・ワンダーが詞を書き、コッポラの父、カーマイン・コッポラがこの美しいメロディーを書いている。中学のころ、真っ赤な夕焼けを背に、剣道の部活からの帰り道、この曲を脳内プレイしながら、チャリをこいでいたのを思い出した。勝手ながら、近い主題として小沢健二の「さよならなんて云えないよ」を思い出してしまう。こんな日々はもう二度とこないのだよ。

84年になって、映画≪フットルース≫を見に行く。バカ売れしているサントラLPはすでに聴きこんでいた。同時上映がコッポラの≪ランブルフィッシュ≫だった。マット・ディロンの兄役ミッキー・ロークが魅力的で、全編モノクロ映像が印象に残っている。水槽のさかなだけが色がついていて、水槽から出た外の世界を暗示させる。とても美しく儚い映画だった。

≪アウトサイダー≫を思い出すとき、去来する言葉がある。「青春てさ、誰か死んじゃうんだね」。誰が言っていたかは忘れてしまった。

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