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詩誌『三角球』vol.2の発行について

2024年12月1日に、蜂士雪乎と故永しほるによる詩誌『三角球』vol.2を発行する。同日に開催される文学フリマ東京39の【B-59】文芸同人北十のブースで頒布し、その後、BOOTH等で通販予定だ。

毎号「関係性」をテーマにルールを設定して創作を行う本誌だが、vol.1から約一年ぶりの新刊となる今回は「異対詩」と題した企画を行った(個人作品も一篇ずつ収録している)。

対詩は、二人の詩人が三〜五行の詩を交互に書きつぎ、一つの作品をつくっていく詩のスタイルだが、「異対詩」では蜂士雪乎と故永しほるの間に、第三者的な協力者として地獄極楽太夫氏に加わっていただいた。

「異対詩」の具体的なルールは以下の通り。

① 書き手Aが第1詩を書き、テキストを協力者Cと共有する
② Cは第1詩をヒンディー語→韓国語→デンマーク語→チェコ語→日本語の順番で機械翻訳し、翻訳後の第1詩を書き手Bと共有する
③ Bは翻訳後の第1詩をもとに第2詩を書き、Cと共有する
④ Cは第2詩を同様の順番で機械翻訳し、翻訳後の第2詩をAと共有する
※以下、同様の手順を第24詩まで行い、完成後、AとBはお互いのGoogleドキュメントを共有する
※基本的に一回のやり取りは四行。ただし、お互いに一度だけ一行で提出しなければならないとした

詩のやり取りはすべてGoogleドキュメントで行い、企画終了まで蜂士と故永の二人は相手の視点を確認していない。時間と空間を共有できないまま、書き手は相手が元々どんな詩を書いていたのか、そして自分の詩がどう伝わったのかがわからないまま詩作を続けた。

人間は、他者と意思疎通を図ろうとする際、自らの言葉や表現が相手に正確に伝わっているかを確かめることができない。伝達の正確性を確認する方法として、受信者の返答によってフィードバックを得ることが考えられるが、受信者が発信者の情報を受け取るとき、そして、受信者が返答を形づくるとき、そこには受信者の認知バイアスや価値観、経験、文化的背景など、多様な要素によって複雑に変換されている。さらに言えば、発信者の意図と実際のメッセージの間にもこのずれが存在する。発信すること自体にも一種の他者性が介在している。

このようにコミュニケーションは、常にすれ違いながら、ときにトラブルを起こしたり、どういうわけか何の問題もなく成立していたりする。本企画は、コミュニケーションにおける原理的なずれを戯画化したものだ。

「異対詩」において、書き手は共同制作であるにもかかわらずコミニュケーションが成立しないという、逆説的に強い主観のなかで詩作を行うことになった。それはもちろん書き手にしかあり得なかった視点である。また、本誌にはより読者に近い視点の記録として、詩のやり取りを管理していた地獄極楽太夫氏による感想が収録されている(三者による感想戦を抄録した冊子も同封予定)。

そして、これから本誌を読む読者のみが、これらすべての試みを完全な第三者として読むことができる。

一人でも多くの方に目撃者となっていただきたい。


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