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プロポーズをされた。

大きな出来事だから、思い出として書き記しておく。


24歳の年末。
プロポーズをされた。

遅めのクリスマスディナーとして彼に誘われ、初めてのクルーズディナーへ。
口にしたその瞬間、蕩けてしまうような食事の後、真っ赤な21本のバラとCartierの指輪を貰った。
「結婚してください」の言葉とともに。
膝をついて私を不安そうに眺める彼の顔が滲んでいった。彼も想定していただろう、案の定私は後退りして何も言えなくなっていた。
うれしいと困惑でいっぱいのプロポーズだった。

ここ数ヶ月前まで、もうこの人と一緒にいることは無理だと思っていた。別れを友人に相談していた。
8年以上の時間を共にして、喧嘩という喧嘩をしてきたことなかった私たちに、1つ大きな問題があった。
私はそれにずっと囚われていた。

彼にとっての初めての恋人は私だった。
中学の卒業から付き合い始めた私達は色んな事情で遠距離の中、大きな問題なく2人のペースで仲を深めていった。私は周りが思わず目をつぶってしまうようなキラキラとした青春を送っていても、羨ましいと思ったりはしなかった。思わないようにしていた。
私たちは私たちの付き合い方がある、たまにしかデートが出来なくても、連絡が取れない日があっても学校での知らない一面がたくさんあっても恋人には変わらない、彼を信用している。と。

23歳のある日、彼はマッチングアプリをしていた。
自由の少ない職業に就いていた彼は寂しかったと。遊びたかったと。そう話していた。
幸か不幸か、誰とも会ってはいなかった。

アプリを入れていただけ。やりとりをしていただけ。もうしない、軽い気持ちだった。好きなのは私だけ。
私は信じた。信じるしか無かった。許すしかなかった。

しかし、彼からのごめんの一言はなかった。謝罪をして欲しいわけではなかったが、嘘をつかれたことに加え私の中でそれが大きな引っかかりになってしまった。そして、また、彼は遊びたいという気持ちを押し殺さなければならない。それは解決なんだろうかと。私はいない方がいいのではないかと。

根本的な問題の解決ができない、また繰り返すぐらいなら別れたい。積み重ねたしんどいがもう限界だった。私のためにいろんなことをしてくれる度に縛られているような気持ちになり、大切にされているのに大切にされていなかった。ずっと置いてけぼりだった。

そもそも自分には結婚というものが分からなくて、余計に訳が分からなくなってた。

けど、プロポーズをされた事がうれしかった。
数日経ち、これを書いているいまも何が何だか、何もわからないし不安だけど、あの時もただ、うれしかったんだと思う。写真に写る私は幸せそうだった。
よろしくお願いします。と指輪を受け取っていた。

問題が解決した訳では無いのかもしれないけれど、たくさんの準備をしてくれて、私とこの先も一緒にいることを決断してくれた、彼の出した答えを受けとめたいと思えた。それがいい結果なのかは分からない。

私はプロポーズされた日、わがまま言ってそのまま、実家に帰らせてもらい、真っ先に母親へ報告をした。母親に報告できたことが一番のうれしいと安心だった。
幸せになってくれるのがうれしい。と涙しながら母親が抱きしめてくれてやっと、あぁ、結婚するんだ。と実感を持ち始めた。
幸せにしてもらいなさい。大切にされてないと思った時は帰ってきなさい。と、泣きながら笑う母親の言葉を抱きしめて眠りについた。

未来のことは何も分からない。明日のことも。期待はしない。してはいけない。
そのまま実家に泊まった翌日の朝、起きてもなお目が腫れるまで泣き崩した。うれしいのか、不安だったのか整理がつかないまま顔を洗って誤魔化した。
でも、頭のなかはお花畑のようだった。綺麗な色をした蝶々が無意識に頭を飛んでいた。

ほんとに私でいいのかなんて、そんな言葉はしまって、幸せを素直に受け止められる人間になりたいと、彼に貰った指輪を握りしめて願った。

彼にはやく会いたい。




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