【44】 新型コロナウイルス後遺症について
企業向け新型コロナウイルス対策情報配信 2021年4月5日
企業の経営者・担当者のみなさま、新型コロナウイルスに感染した後に、患者によっては急性期の症状が遷延する(いわゆる後遺症が残る)ことが分かってきております。今後、後遺症に悩む従業員が職場で発生する可能性もありますので、まずは現時点で分かっていることを整理しておきましょう。
1. 課題の背景:
新型コロナウイルスに感染した後、ほとんどの人は通常の健康状態に戻る一方で、回復した後も数週〜数ヶ月間様々な症状が続く人がいます。症状の程度にも個人差があり、中には従前通りの業務に就くことが困難なケースもあるかもしれません。また、どこに相談したらよいか分からず、問題を独りで抱え込んでしまっていることもあるかもしれません。
残念ながら、現時点では後遺症の原因は明確に分かっておらず、確立された治療法もないのが現状です。それ故に、職場での理解や支援が後遺症に悩む従業員にとって大きな助けになることもあります。今回は、後遺症について現時点で分かっていること、職場で実施可能と思われる支援につき説明します。
2. 企業でできる対策:
〇 後遺症について理解する
○ 後遺症の相談窓口を把握しておく
○ 後遺症に悩む従業員への配慮を検討する
2-1. 後遺症について理解する
□ 感染者の3人に1人に何らかの症状が後遺症としてみられる可能性がある
□ 症状によっては数カ月も遷延することがある
□ 軽症者、若年層においても後遺症が問題となる場合がある
□ できるだけ感染しないことが最大の後遺症予防策となる
後遺症として頻度が高い症状には、倦怠感、息苦しさ、胸の痛みや違和感、咳などがあげられます。それぞれの頻度や持続期間は資料1をご参照ください。症状によって持続期間にばらつきがありますが、倦怠感など6カ月も遷延する場合も実際にあるようです。また、新型コロナに感染した人の3人に1人が、少なくとも1つ以上の症状を後遺症として経験していることが国内外の報告で分かっており、後遺症も決して稀なことではないようです。
入院を要する重症の新型コロナ患者で後遺症がみられやすい傾向にありますが、入院していない軽症の人でも症状が続いたり、後になって症状が出てきたりすることがあります。また、20~30代の若い層も後遺症を有する割合は決して低くないことが国立国際医療研究センターの調査からも分かっており、若いから感染しても大丈夫とは言えなさそうです。現時点では、できるだけ感染しないように基本の感染予防策を続けていくことが最大の後遺症予防策となります。
2-2. 後遺症の相談窓口を把握しておく
□ 地域の後遺症専門外来、行政の相談窓口等の情報を把握しておく
前述のように、現時点では後遺症の原因は明確に分かっておらず、それぞれの症状に応じた対症療法が中心となります。医療機関で後遺症専門外来を設置しているところも増えてきました。また東京都では都立病院の患者支援センターに「コロナ後遺症相談窓口」を設置し、新型コロナウイルス感染症の治療や療養終了後も、呼吸の苦しさや味覚・嗅覚の異常などの症状がある方からの受診や医療に関する相談への対応を開始しているようです(資料3)。このような地域の相談窓口や専門医療機関の情報を職場で把握しておくことで、後遺症に悩む従業員が出た場合に専門医療機関につなげられる可能性が出てきます。
2-3. 後遺症に悩む従業員への配慮を検討する
□ 従業員本人の意向を踏まえながら、復職時期や復職時の就労条件を個別に調整する
□ 後遺症が長期間にわたり遷延する際の労務管理上の取り扱いをよく検討しておく
感染した従業員は、通常ですと「発症日から 10 日間を経過し、かつ症状軽快後 72 時間経過した場合」に職場復帰が可能となります。これは他の人への感染拡大防止の観点からの目安となりますが、10日間を過ぎても症状が残る場合に復職をさせてよいのか、職場でも悩ましいところかと思います。このような場合、保健所や(産業医契約のある事業場では)産業医等に相談することも一つの方法です。
また、感染した従業員本人が復職への不安を感じている場合などは、本人の意向を踏まえながら、職場復帰の時期や職場復帰時の就労条件などを個別に調整していくことも重要となります。例えば、倦怠感が著しい場合など、時短勤務や在宅勤務を一定期間行った上で、徐々に通常勤務に戻していくなどの対応が考えられます。
ただし、症状によっては数カ月に渡って遷延する可能性があります。この間、漫然と配慮が長期化する状況も好ましくなく、後遺症が長期化する際の労務管理上の取り扱いについてもよく検討しておく必要があります。例えば、配慮継続の必要性につき、定期的に主治医や産業医等の意見を聴くことなどがあげられます。また、メンタルヘルス不調やがんなど、すっきりと治らない病気の職場復帰支援の仕組みなども参考にできるかと思います(資料4、5)。これらの仕組みがない職場では、これを機に疾病からの職場復帰支援の仕組みを整備することをお勧めします。
3. 関連情報リンク:
1) 忽那賢志. 新型コロナの後遺症Q&A どんな症状がどれくらい続くのか(2021年1月)
https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20210131-00220218/
2) iCDC(東京都公式). 後遺症の恐怖―コロナのその後について、大曲先生にお聞きしました。
https://note.com/tokyo_icdc/n/n18515b0f8541
3) 東京都新型コロナウイルス感染症対策本部. 都立病院患者支援センターへの「コロナ後遺症相談窓口」の設置についてhttps://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2021/03/29/43.html
4) 厚生労働省. 心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引きhttps://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/101004-1.pdf
5) 厚生労働省. 事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドラインhttps://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000760961.pdf
文責:今井 鉄平(OHサポート株式会社)
※本文章は、産業医有志グループ(今井・櫻木・田原・守田・五十嵐)で作成しました。厚生労働省新型コロナウイルス対策本部クラスター対策班・和田耕治先生(国際医療福祉大学・公衆衛生学教授)のサポートも受けております。
今後も経営者・総務担当者向けに必要な感染拡大防止策情報を随時配信させて頂きます。本情報は著作権フリーですので、ぜひお知り合いの経営者に拡散をお願いします。
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