【62】 オミクロン株に対しても基本的な対策が大切です
企業向け新型コロナウイルス対策情報配信 2022年1月24日
企業の経営者・担当者のみなさま、主に流行する変異株がオミクロン株になっても、基本的な感染拡大防止策は従来と同じです。
1. 課題の背景
2021年10月から12月まで低水準であった日本国内の感染確認者数が2022年1月に入って急増し「第六波」とも呼ばれています。主なきっかけとして、年末年始に人と人との接触機会が増えたことに加え、B.1.617.2系統の変異株(デルタ株)からB.1.1.529系統の変異株(オミクロン株)による流行に置き換わりつつあることが考えられます。今回はオミクロン株の特徴とともに、職場での対策の方向性について解説します。
2. 企業でできる対策:
○ オミクロン株の特徴を知る。
○ 「密」を避けるなどの基本的な対策を継続する。
○ 3回目を含む新型コロナワクチン接種を推奨する。
2-1. オミクロン株の特徴
(1) 従来のウイルスと異なる特徴
・ 他の人に感染しやすい
・ 潜伏期間が短い: デルタ株は約5日、オミクロンは約3日
・ 重症になる確率は低い
(2) 従来のウイルスと変わらない特徴
・ 主な感染経路は飛沫感染と接触感染 →基本的な感染拡大防止策も変わらない
オミクロン株は、デルタ株までの従来のウイルスよりもさらに他の人にうつりやすく、また短い日数のサイクルで感染者が増えていくため、地域によってはこれまで経験したことのない数が報告されています。重症になる確率が低い点についても、感染しやすさと併せて考えると素直に喜ぶことはできません。例えば自分一人が感染した場合に重症化する確率は従来の半分だったとしても、同じ地域の患者数が従来の2倍以上に増えると重症者の人数は増えてしまい、医療機関の逼迫につながります。企業においては、同時期に感染者または濃厚接触者となって出勤できない従業員が増えると事業運営への影響も大きくなってしまいます。
一方、従来のウイルスと変わらない特徴は、主な感染経路が飛沫感染(いわゆる「エアロゾル感染」を含む)と接触感染であることです。これは、基本的な感染拡大防止策も従来と変わらないことでもあります。
2-2. 基本的な対策の継続
○ 個人レベルの対策
・ 「3密(密集・密接・密閉)」や「特にリスクの高い5つの場面の回避」
・ 他の人がいる場所でのマスク着用(できるだけ不織布マスク)
・ 共用物に触った後、食事の前後などの手洗いまたはアルコール手指消毒
○ 職場や学校における対策
・ テレワークの推奨
・ こまめな換気
・ 体調不良時は出勤しないこと(自宅療養または医療機関受診)の周知
個人レベルでは、これまで繰り返し呼びかけられてきた「3密(密集・密接・密閉)」や「感染リスクが高まる5つの場面」の回避、他の人のいる場所でのマスク着用、共用物に触った後などのこまめな手洗いまたは手指消毒が引き続き大切です。
職場や学校における対策も変わりません。対策の狙いは、もし誰かが感染したとしても職場内での拡大を抑え、濃厚接触者を減らすことで事業運営への影響を最小限にすることです。テレワークを推奨して同じ場所に集まる人数を減らす、それでも人が集まる場所はこまめに換気する、そして体調に異変があるときは出勤を控えるといったポイントは必要に応じ再周知しましょう。
2-3. 3回目を含む新型コロナワクチン接種の推奨
オミクロン株は新型コロナワクチン接種済の人でも感染しやすいと考えられています。その背景のひとつとして、2回目接種から6か月を過ぎると抗体価が低下してくることが挙げられています。ただし、免疫の仕組みは抗体だけではなく、他の様々な細胞の働きも関係しますので、接種前と全く同じ状態に戻るわけではなく、感染しても重症になる確率は未接種者より低くなります。
本情報配信の第61回でも取り上げた追加(3回目)接種は「ブースター接種」とも呼ばれ、すでに行われている諸外国ではオミクロン株に対しても感染および重症化を防ぐ効果が報告されています。日本国内での対象者は、64歳以下の方の場合、2回目接種から8か月以上経過したことが条件とされていたところ、政府で接種時期の前倒しが検討された結果、2022年3月からは1か月短い7か月以上経過した人が対象となる予定です。
3. 関連情報リンク
1) 厚生労働省 新型コロナウイルス感染症について > 国内の発生状況など
2) 厚生労働省 (2022年1月版)新型コロナウイルス感染症の“いま”に関する11の知識
3) 新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード オミクロン株の特徴を踏まえた効果的な対策(令和4年1月21日公表)
4) Yahoo! JAPANニュース(忽那賢志)新型コロナ 日本・世界中で急激な感染者の増加 なぜオミクロン株は広がりやすいのか?
文責:田原 裕之(産業医科大学 産業精神保健学)