【53】 まん延期における企業内濃厚接触者調査の留意点 その2

企業向け新型コロナウイルス対策情報配信 2021年8月23日

企業の経営者・担当者のみなさま、新型コロナウイルスのまん延期において、保健所の対応能力がひっ迫しており、職場内で感染者が確認された場合、当面は企業内での対応が求められる地域が増えています。

1. 課題の背景:

本情報配信の第39回「まん延期における企業内濃厚接触者調査の留意点」(1/25配信)にて、保健所が濃厚接触者調査の対象を重点化し、一般企業等での調査は行わなくなった場面で、企業としてどのように企業内濃厚接触者への対応を進めるべきかについて解説しました。

これまでと大きく異なるのは、保健所での判断がなくなることです。このため、だれかが企業内で判断をしなければなりませんが、産業医等の産業保健専門職との連携のない小規模事業場では特に判断の目安が課題となります。また、過剰な対応になりすぎないようバランスを考えていく必要もあります。なお、これまで保健所が担っていた機能を、企業がそのまま担うということも難しいことですので、「できるところまでやる」と割り切ることも必要です。

感染者数の拡大が続き、1月当時と同じ状況が起きている中、上記テーマにいくつかの論点を追加し改めて説明します。

2. 企業でできる対策:

〇 感染した従業員に安心して療養してもらう
○ 「要管理者」を特定し、対応を行う
○ 企業内で「要管理者」を増やさないための感染対策を強化する

2-1. 感染した従業員に安心して療養してもらう

感染したと従業員から報告があった場合には、まずは感染したことで会社に迷惑をかけると心配になっている従業員を安心させます。また、生活物資や仕事の残りなどなんらかの支援が必要か確認します。

2-2. 「要管理者」を特定し、対応を行う

従業員の感染が確定した場合、まずは下記内容を当人から聞き取りましょう。なお、接触の調査は感染拡大防止のためにお願いして行っているのであり、対象者には調査協力への感謝をもって接するようにしましょう。くれぐれも感染したことを責めることがないよう注意しましょう。また、従業員の行動を追うのは「業務の範疇」にとどめ、休みの日や就業時間外に社内の関係者以外と何をしていたのかなど、業務の範疇外の行動の確認は行わないようにしましょう。

また、その対象者に体調を確認するべく伝えてよいかを確認します。本人の了承が得られない場合も、職場の感染拡大防止の目的であることを説明し、なるべく了承が得られるように努めましょう。

<感染者した従業員から最低限聞き取る内容>
□ 発症日
□ 最終出勤日
□ 発症の2日前までに飲食、会話、会議をした人
※目安:1m以内で15分以上、マスクの着用は問わない

濃厚接触が疑われる該当者については、企業内では「要管理者」くらいの呼び方とし、保健所が指定する「濃厚接触者」とは区別します。

 まずは広くリストアップして、あとは接触した時間などを考えて絞っていくことが大事です。明らかに発症前日や発症後に会議をしていたり、食事をしていたとなれば「要管理者」になるでしょう。その他に、たとえば、打ち合わせをした、マスクをしていた、車に同乗したなど様々な場面がありますが、個別に判断が必要になります。例えば8時間一緒にいた人と15分いた人は違いますし、そこでマスクを外して飲食していたかでも違います。総合的な接触の程度から優先度を決めて、「要管理者」を決めます。

 「要管理者」と特定した従業員については、濃厚接触者が行政検査で陰性だった場合に準じて、感染者との最後の接触から14日間、健康観察と自宅で過ごすことを求めます。この間に症状があれば速やかに会社に報告するとともに、医療機関に電話連絡の上で受診するよう促します。

現在、医療が逼迫していて検査もしづらい状況下にありますが、会社として「要管理者」に検査(PCR検査・抗原検査)を実施する場合、たとえ陰性であってもそれで感染していないことを証明するものではないことに留意しましょう。

 自宅で過ごしてもらう期間、当該従業員の賃金の扱いをどうするか、悩ましいところです。自宅待機とした場合に賃金を減らす等の方法も可能かもしれませんが、そうした場合に今後報告がされにくくなってしまう懸念もあります。テレワークが可能であれば通常の勤務扱いとできスムーズですが、テレワークが難しい場合はこの機会にオンライン研修を受けてもらうことも一つの方法でしょう。

2-3. 企業内で「要管理者」を増やさないための感染対策を強化する

感染者が出た場合、社内で「要管理者」を増やさないために、対策強化として企業内で行うべきこととして下記項目があげられます。最初に判明した発症者が必ずしも最初に感染したとは限らず、その方が社内の別の感染者から感染した可能性もあります。このため、「要管理者」以外の従業員からも発症者が出る可能性があることに注意が必要です。

□ ランチなど飲食の場面では黙食とする
□ 会議はオンラインを基本として2人以上の会合は当面行わない
□ 電話の際は必ずマスクをする
□ 同僚等の車に同乗する場面をなるべく避ける

また、社内で感染者・「要管理者」が出た場合に事業継続がスムーズに行えるよう、普段から業務内容の共有を行っておくことも重要です。

3. 関連情報リンク:

1) 企業向け新型コロナ対策情報配信【39】「まん延期における企業内濃厚接触者調査の留意点」(1/25配信)
http://www.oh-supports.com/img/corona/pdf/039.pdf?0125

2) 和田耕治. 「職場で感染者が出た。保健所には頼れない そんな時、どうする?」. BuzzFeed News(8/23配信記事)
https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/covid-19-wada-27

文責:今井 鉄平(OHサポート株式会社)



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