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シンポジウム「依存症といのち」アーカイブ公開中

▼素晴らしい講演でした

 2024年9月15日、日本自殺予防学会と埼玉いのちの電話共催による公開シンポジウム、「依存症といのち」が開催され、好評のうちに幕を閉じることができました。ご来場およびオンライン参加の皆様、講師の成瀬暢也様、高知東生様、ご挨拶いただきました日本いのちの電話連盟理事長堀井茂男様、日本自殺予防学会会長張賢徳様、高知様をご紹介くださったギャンブル依存症問題を考える会代表の田中紀子様、そして準備にあたった埼玉いのちの電話の皆様など、本イベントに関わったすべての方々に心より御礼申し上げます。
 米沢は司会を担当しました。前半は成瀬先生、高知さんの講演、休憩時にフロアからお二人への質問を集め、後半は質問に答えていただきつつ、3人で対話を進める形としました。お二人の講演は素晴らしく、シンポジウムの成功を確信しましたが、終了後に寄せられたアンケートも演者お二人への賞賛、感謝の言葉で埋め尽くされており、このシンポジウムを企画して本当に良かったと思いました。終わってから成瀬先生は楽しかった!高知さんは完全燃焼!と仰ってくださいました。
 来場者数は335名、オンライン視聴者は170名でした。9月末の時点で2,100名以上の方がアーカイブをご覧になっているそうです。依存症とは何か、依存症がなぜ自殺と関係するのか、そしてどうやって立ち直るのか。生きるためのヒントが満載です。アーカイブのリンクはこちらです。

第48回いのちの電話シンポジウム~依存症といのち~(配信録画)


▼圧巻だった高知さんの「ピンチの脱出法」

 圧巻、という言葉を使っていいのか迷いますが、司会をしていた私が心の中で「すごい!」と叫んでしまった場面をご紹介します。
 動画の3時間13分40秒あたりから最後までの17分間くらいのやり取りです。フロアから、「回復プログラム参加中の仲間に自死があったらダメージをどう治したらいいか」という質問に対し、お母様の自死をめぐるさまざまな思いをお話になり、無理して気持ちを変えようとしない、遠慮なく泣いていいんじゃないか、そうしないと次の気持ちが生まれてこないと思うとお答えになりました。そこで私から、お母様の自死にも触れた本を書かれた4年前と今とでは、気持ちがどのように変化しているものなのか、と尋ねると、7月に行われた「ギャンブル依存症自死遺族会」に登壇されたときの話を出されました。自分としては整理できていたつもりだったが、会場に着いて「自死」という言葉が看板に書かれているのを見たら、今まで味わったことがない感情が出てしまい何も話せなくなり、3日間寝込んでしまったとのこと。そしてもう一回プログラム(12ステップのことです)をやろうと考え、棚卸し、そして埋め合わせをしたのだそうです(「埋め合わせ!?」:壇上での私の心の声です)。その埋め合わせとは、お母様の戒名、位牌を作り直すということでした(「そういうことか!すごい!!」)。この部分、ぜひ動画をご覧ください(3時間20分20秒あたりからです)。
 普通こんな風に寝込んだら、なかなか気持ちが切り替わらないのではないかと思います。でも高知さんは自分の回復の中心にある12ステッププログラムを使うことに思い至った。高知さんの中にプログラムが内在化されているのですね。これこそが高知さんが講演のタイトルにつけてくださった、「ピンチの脱出法」だったのです。
 12ステップはAA(Alcoholics Anonymous)がアルコール依存症の回復のために考え出したプログラムで、薬物依存症やギャンブル依存症など、さまざまな依存症の回復プログラムに取り入れられています。ステップ8、9に「埋め合わせ」が出てきます。12ステップの詳しい話は控えますが、個人的にはこのプログラムはノーベル賞級の大発明だと思っています(語彙力が乏しくてすいません)。でも私自身は使っていない。今まで大ピンチがなかったわけではありませんが、使うことを思いつかなかった。今回改めて読み直している次第です。
 3日間寝込んだが埋め合わせによってピンチを脱出した、などという話が出るとは夢にも思いませんでした。高知さんもここまでの話をするつもりはなかったのではないかと思います。しかしこれは、高知さんや成瀬先生の素晴らしい講演と、それに触発されたフロアのみなさんの思いが質問によって壇上に伝わり、講師二人がそれを受け、考え、また言葉にするという形で対話が深まっていったからこそ生まれた宝物ではないかと思います。この“場”を作ってくださったすべての方々に感謝申し上げます。

▼司会が苦手なんです…

 ここからは私の独り言です。
 私は1991年から埼玉いのちの電話に関わり、電話相談員の研修で自殺の講義などを担当し、2023年から理事も務めております。2023年秋の理事会で今回のイベントを知りました。事務局でどういったシンポジウムを行うか、いろいろな案が出たのですが、埼玉いのちの電話としては2000年の大会以来2度目ですので、今までとは少し趣が異なったテーマを取り上げてもいいのではないかと話し合い、「依存症といのち」としました。2024年春に米大リーグの元通訳さんのギャンブル依存症が話題になりましたが、その事件とは関係ありません。
 実は私、司会が苦手なんです。本当は逃げたかった。一番難しく感じるのはタイムマネジメントです。どの講演者も大切なことを話してくださいます。でも、時間がオーバーしたらどこかのタイミングで声をかけねばならない。それってしたくないんです。あるいは会場からの質問。みなさん、聞きたいことがたくさんあります。話が止まらなくなったり、まとまらなくなったりします。そこをどう上手にハンドリングして流れを作っていくか。こういうのが上手な人っていますよね。ただただ尊敬の念で見ています。自分にはそんなことできないとずっと思い、遠慮してきたのです。
 そしてお二人の講演を聴いていれば、私も人間ですから胸を揺さぶられます。さまざまな思いが浮かび、冷静ではいられません。さらにオンライン配信があったので、時間管理がより厳しかったのです。私の喋り方が最後まで上ずっているのは、慣れないことをやっている緊張感や湧き上がる感情に加え、時間が気になっていたからです。お聞き苦しくて申し訳ございませんでした。

▼自分で自分のクビを絞めたけれど…

 時間管理の一つの策として、フロアからの質問を休憩時間に紙で提出していただく形にし、事務局が質問を選んで司会に届けてもらうことにしました。これはこれで良かったと思います。すべての質問を取り上げることはできませんでしたが、文面からみなさんが真剣に話を聞いてくださっていることが伝わり、胸が熱くなりました。
 ですが、この方法は自分で自分の首を絞めることになりました。壇上では成瀬先生や高知さんの話が進んでいます。そこに質問の紙が回ってくる。お二人の話を聞きながら質問にも目を通すという、とんでもないマルチタスクをすることになってしまいました。頭の中はパニックです。うまくコメントできなかった場面もありましたが、まずは大きなハプニングが起こらず本当にホッとしております。
 繰り返して恐縮ですが、お二人のお話は本当に素晴らしいです。3時間半の長丁場ではありますが、お時間あるときにぜひ覗いてみてください。どうぞよろしくお願いします。

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