1-3 退院前夜の絶望と二部脊椎の可能性、妊娠前抗体検査のすすめ

●小さな命をいきなり背負う怖さ

 母乳総本山的総合病院を退院する日が来た。

 その頃には、激痛ではあるものの、手で搾乳すれば、15ミリくらいは黄色い初乳が出るようになってきていたが前夜、助産師に涙しながら言った。

 「私の母乳はまだこれだけしか出ません。このままミルクの作り方も知らないで退院するのですか?不安で仕方がありません。私はこのまま里帰りするのでなおさらです。」

 “衛生上の管理”からこの病院ではミルクは用意されたものを補助的に与える仕組みだった。今思えば笑い話だが、私は自分でミルクも作れるのだろうか、この小さな命を守れるのだろうか、不安で仕方がなかった。

 

 「藤田さんは里帰りですから、自分で母乳のことが心配なら母乳外来や相談室を見つけてください。ミルクの作り方が不安ならDVDがあるので後で持ってきますよ」

 もうここまで来ると何も期待してはいけない。自分の力でなんとかしないと、もうメラメラ私は燃えていた。母乳育児も軌道に乗せたかったし、妊娠中に通っていたマタニティヨガの先生が母乳の出が悪くて通っていたところがあると言っていたなそういえば・・・「オケタニ」とか言っていた気がすることだけうっすら覚えていた。(この桶谷式の功罪については後日触れます)

 実母には、全然母乳が出ないということを泣きながら電話したこともあり、地元の総合病院で、分娩した母親以外でも受け付けている母乳外来を見つけてくれていた。それだけでは不安で、実家の近くに「桶谷式母乳相談室」(そういうビジネスが存在していることも知らなかった)があると知り、退院後の3日後に訪問する予約も病室から取り付けていた。

 出産後の退院は、産婦人科医と小児科医がOKを出せば晴れて退院なのだが、診察した男性小児科医があっけらかんと、「母乳でもミルクでもなんでもいいんですよ」と言い、おもわず私は隣にいた担当助産師の顔をガン見した。

 それよりも、私の不安を増幅させたことがあった。

 「赤ちゃんが『二部脊椎』という病気の可能性があるかもしれません。1か月検診で見てもらってください」と言われ、ショックを受けた。母乳云々で泣いている自分がまた情けなくなった。

●「二部脊椎症」かも?妊娠前の妊娠準備の大切さ

 二部脊椎症は背骨の一部が開いた状態で神経の束が体の外に出て傷つき、手足のまひなどの障害が出る疾患だ。医師の説明に絶句してしまった。ただ、「神経の束ですが、これは妊娠の超初期に作られるもので、その時点で葉酸というビタミンの一種が足りていないと起こります。葉酸は摂取していましたか?」と聞かれほっとした。私は、葉酸を妊娠以前から、意識的に飲んでいたのでおそらく大丈夫だということだった。

 話がそれてしまうが、二部脊椎症などの神経閉鎖障害を持つ赤ちゃんが生まれるリスクを低減できるとして、厚生労働省も妊娠前4週から妊娠初期12週頃までの女性に0.4mg=400μgの葉酸摂取を推奨している。食品からの摂取も可能であるが、不足しがちなのでサプリメントなどで補うのがよい。(ただ過剰摂取もよくない)

●え?風疹以外にもこんなに抗体検査でわかるの??

  妊娠する前には自分に何の抗体があるか調べられるのならばお勧めしたい。私は、第1子妊娠中には、風疹の抗体検査は区から補助が出るのでしていたのだが、第2子の出産先では、自費であれば、風疹・麻疹(はしか)・水ぼうそう・リンゴ病・おたふくかぜ(ムンプス)・トキソプラズマ・サイトメガロウイルスの抗体の有無を血液検査一発で調べることができると知り、目から鱗が落ちた経験がある。

 私は、トキソプラズマのみ抗体がないことが判明し、生肉や土いじりには注意するよう言われた。ちょうど、上の子の保育園でりんご病が流行っていたのでほっとしたのを覚えている。また、友人で妊娠中にサイトメガロウイルス上の子の食べ残しなどから感染したりする)に感染したことで、難聴を患っているお子さんがいる。これも判明したのは出産後である。

 しかし、だ。これも5万円を超える自費検査をした結果わかったものである。私は、「もうまるっとやってください」といった時に、産婦人科医から「全部受ける人は本当に稀ですよ」と笑われたくらいだ。なぜなら、妊娠後に抗体がないものが判明しても何の手立てもできないことが多いからだ。でも、私は安心材料としては正直、十分にペイしたと思っている。

 今年も風疹が流行していている。2012年から2013年の風疹流行時には、出生した赤ちゃん45人に影響が出てうち、11人が死亡した。風疹は、目が見えないといった後遺症が出るケースが多い。妊娠中に妊婦は予防接種ができない。自己防衛するしかない。また5年前の悲劇が繰り返されるのか、この「防げる疾患」をなんとかできないものか、多くの産婦人科医・小児科医などが呼びかけているがマスコミの周知も行き届いていない。風疹などは抗体検査を無料にしている自治体もあるが、行政側がアクションを起こして大人の予防接種を無料化するなど対策を取ってほしい。金がないのはわかる。でも防げる疾患なのだから ※その後、無料化の対策など打ち出されてきていて良い方向に来ていますね

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