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出版社・三五館の話(2000年~)

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#就活

倒産する出版社に就職する方法・第1回

1998年春、就職氷河期とうたわれた時代。
麹町にある文藝春秋社での一次面接の結果は、電話でかかってくることになっていました。ケータイを部屋のすぐに目につくところに置いておきつつも、私がケータイを注視していることをケータイに悟られぬよう、テレビを見たり、本を読んだり…。

年末恒例のTBS「プロ野球戦力外通告」でおなじみの、呼び出し音がなるとともに過剰に手振れしたカメラがケータイにフォーカスし、満

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倒産する出版社に就職する方法・第2回

メロスは激怒した。

いや、俺だって激怒した。

こんなに何社も何社も受けているのに、なぜ採用されない!
30社も受けてるんだから、一社くらい、「君、いいね!」とか言ってくれるところあってもよくない?
ただの一社もないもんかね?
こんなにやる気みなぎっていて、なんでもやります!って言っているのに!
給料要らないから出版社で働きたい!とまで言っている人間をなぜ採らない!?

怒り。

それにしても、

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当たり屋就活記……S社との邂逅ーー倒産する出版社に就職する方法・第7回

オッス!オラの相棒、グラストラッカービックボーイ! 連載のつながりとか時系列とか起承転結とか完全無視して、過去と現在を自在に行き来できるすげえやつなんだ。心が清くないと乗れねえけどな。頼むぜ相棒。そんじゃ、ここまでの流れを無視して2000年4月にレッツゴー!

出版社設立資金300万円貯金を目的としたアルバイト生活を2000年3月いっぱいで打ち切った私は、再び出版社に入る決意を固めます。

「人生

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サイババと、膝のゆらぎーー倒産する出版社に就職する方法・第8回

ガクガクガクガク……。

あっ、これ、私の膝の震えです。

2000年当時、三五館といって私が真っ先に思い浮かべたのは、アフロヘアのインド人、サイババでした。

覚えてますか、サイババ。

私が高校生のころ、手のひらから聖なる灰とか貴金属とか時計とかを出現させる「物質化現象」を起こすというサイババは、ゴールデンタイムに何度も特別番組が組まれるほどの話題を集めていました。

その火付け役となったのが

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約束の日:sentimental Ver.――倒産する出版社に就職する方法・第9回

約束の日。

まだ4月だというのに日中30度近くまで上昇した気温がその勢いを翳らしはじめたころ、俺は家を出る。

もう後戻りはしない。振り返るな。泥道に足跡など残っちゃいない。

俺は俺に言い聞かせる。

「今日、決める」

15:××、京成線に乗り込む。念のため、京成線と都営浅草線と総武線、中央線すべてが遅延し、三五館の場所がなかなか見つからなかった場合を想定したタイムスケジュールで四谷へ。遅刻

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折りと祈りーー倒産する出版社に就職する方法・第12回

およそ1週間後、電話で再訪日を指示された私は、ふたたび四谷を訪れます。

(あっ、前の第11回から読んだ方、つながりありませんので。連載第10回から今回につながります。2000年の話です。なんで私が過去と現在を頻繁に行き来できる能力を手に入れたかについては連載第3回と第7回あたりを参照)

この時点で私は自分の処遇がどうなるのかを知らされていません。

「忙しいのに、わざわざ時間つくって呼び出して

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