「早く早く」と言ってしまうけれど
「早く」と言ってしまうことがある。
例えば出掛けの時。
靴下をはいて、
靴をはくとき。
そんなとき、娘はマーーーーイーーーーペーーースーーーーな人なので、靴下を持って「びんとぱい(足のなまえ)は3歳なの、びんはぁーおとうとで、ぱいはぁー……」などととうとうと話し始めたりする。手は止まったまま。「おーい、靴下はいて~」と言っても返事なし。いや、母の言葉が聞こえなかったように話続ける。
ああ、待ち合わせの時間なり、着かなければいけない時間が迫っている。
そんな時出てくる「早く」という言葉には、
「その作業に向き合ってやり終えてほしい」 という言葉が含まれている。
例えば片付けの時。
我が家はなるべく寝る前におもちゃを片付けてから寝たいと思っていて(ま、いっかの日もあるが)、遊びスペースを片付けて、寝室に行き、絵本を読んで寝るのがルーティーンだ。夜9時には入眠体制になっていたいと思うと、絵本を何冊読めるかは、片付けの終わり具合にかかっている。
それを伝えたうえで、一緒に片付けるのだが、片付けるはずのおもちゃで遊びはじめたりすると、「早くやろう。早くしないと絵本読めないよ」となってしまう。
この「早く」には、「遊んでないで片付けにとりかかろう」という思いがつまっている。
ひとつひとつ集中して丁寧にしまってたりするときは、早くとは思わないから、行動を素早くしてほしいというよりも、やったらできるんだから片付けやってよという意味が含まれている気がする。
じゃあなんで「早く」っていってしまうんだろう。
話は少しそれるが、保育士時代、最初に勤めていた保育園では「誰が早いかな?」みたいな競争に取り組ませがちだったが、転職したさきの園で先輩の先生からそういうやり方はしたくないんだと聞いて考え直した。
「勝ち負けという概念は、2,3歳は特に強くもちがちで。無用なこだわりや争いを生むことになる(一番がよかった等)。し、早いほうが良い、遅いとダメ(負け)という価値基準は、ゆっくりな子をダメな子とみかねない。だから、なるべく生活のなかに競争を持ち込みたくない。」
というものだった。
娘にも、遊び(じゃんけんとかの勝ち負け)は良いけれど、なるべく生活のなかで競争を持ち込まないように気を付け、早いから良い、遅いからダメ、という感覚をもたないようにと気を付けていたつもりだったが、それでも自然と早いほうが良いという感覚があったようで……。
それに気づいたのがつい先日のことだった。
2人でパパお手製の甘酒を飲んでいた時。
「娘(自分)ちゃん、ママより早く飲んじゃったぁー」
と得意気にいったのだ。
何気ない言葉にハッとした。
誉められるつもりで言ったと感じたからだ。
でも、そこを責めても仕方がない。明るく返すことにした。
「そうなんだー。ママは、ゆっくりのむんだー。早くのんでもゆっくりのんでも、パパの甘酒は美味しいねぇ」
娘は、きょとんとした顔で、
「娘ちゃんは、早くのんだ!」ともう一度言った。
「ママはゆっくりのんだ」と、私は飲み干してみせた。
お得意の「どうしてぇ?」がでたので
「美味しいから早く飲む人もいるし、美味しいからゆっくり飲む人もいるんだよ」というと、一応は納得してくれたみたいだった。
伝わったかな?
話は戻って、なんで「早く」って言ってしまうんだろう。
大人は時計とともに先をみながら、行動しているから、なのかな。要するにタイムキーパーなのだ。
だから、早くしないとあれができない、あれが遅れてしまうと、あとあとマイナスにならないように生きてる気がする。
一方、子どもは、刹那と、未来の楽しみで生きてる。
そのギャップが、「早く」や「早くしないと◯◯になっちゃうよ」みたいな言葉を生むのかもしれない。
片付けや、靴下はく時。
「早く」をグッとこらえて「じゃあ、この箱にきれいに入れてみてね」といってみるほうが真剣に入れてくれるのは、片付けが目の前の楽しみになったのかもしれない。
「まさか!まさか、靴下はいてないよねぇ!!」なんてふざけて大袈裟に言ってみて、娘が履き始めたら大袈裟に驚いたりすると、張り切って手早く履いちゃうのは、娘がもしかしたら、ママを驚かしちゃおうという少し先の楽しみを見つけたからかもしれない。
娘の場合、「早く」の言葉よりよっぽど効き目がある気がする。
でも、本当は大事なのはいかにさせるかじゃなくて。
自分で片付けたいと思ったり、外に行きたい、じゃあ靴下はこうと思う気持ち。
だから、昨日の夜、もう寝ようといったとき、「おもちゃさんが泣いてるから、一緒に片付けよう」と、娘から言ってきた、それがちょっと嬉しかった。
最後まで横道それずに片付けられるか、それは、繰り返しと成長。それこそ、「早く」できるようになれと思わずに、大人になるまでという長いスパンのなかで、急がず、少しずつやっていけたらなと思う。
そのためにも、時間の余裕をもつために、もっと自分が「早く」行動しなきゃなぁ……。精進、精進。