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入社3日目で、泣いたのは母。娘の一言に。

仕事3日目、まだ研修生に毛が生えた気持ちでいたいのはやまやまなのだが、どうやらここでは即戦力にならなければいけないらしい。どころか、引っ張っていかなければいけない。いや、3日目でカッターの場所さえわからない人間がなにがリードできることがあるというのか。あっちに聞き、こっちに聞き、あっちに尋ね、こっちで教えてもらい……。
場所の把握から出勤簿の付け方から、今の現状から、今後の予定、毎月のまとめから、そのまとめ方のコツまで、大から小から一気に聞きながら、そして、忘れながら、どうにかこうにか1日が終わり、いろいろ山のように聞きたいことを聞き、そして、自分の作業が納得できるまで終わら
ぬままタイムアップ。
途中で追われるように出て、

自転車で保育園にむかった。

ああ、明日は急遽会議だ。

お迎えが遅くなる旨を、先生に伝えなければならない。

そう思いながら娘のところに着いた。
慣らし保育が終わったのが先週なので、昨日から夕方17:30。
今日は涙出ていない。
昨日、目に涙をためて抱きついてきたときと違う。遊んでいる。ちゃんと母が来たのを確認して、先生と遊んでいたものを片付けて、落ち着いてやってきた。

普段と変わらない様子で、自転車の後部座席に乗り込む。


「ママ、明日は早く帰ってきて」
そういったのは、もうすぐ家に着こうかというときだった。
先生との話は聞いていたはず。
私は自転車を止めながら、
「ごめんね、明日は6時お迎えでもいいかなー?会議に出なくちゃいけないんだ……」と答えた。
「6時って5時より遅いの?」
「うん……。すこーしだけいつもより遅いの。すこーしだけ。」

申し訳ない。そう思っていると、娘が言った。

「やったー。遅い方がいっぱい遊べるから、娘ちゃん遅い方が良いんだっ!」

その一言が。その一言が。
グッとこらえたはずなのに、感情と共に溢れてくる。
涙を隠しながら、ドアを開ける。

「元気ぜろぱーせんと」って言って、靴を脱がせてもらいたがるくせに、「ママのお手伝いの分は残ってる」と言って、はりきって手伝いしてくれる。

もっともっと、母を困らせてもいいのに。行きたくないとか、お迎え早くがいいとか、泣いて暴れて困らせてもいいのに。
それをすると、本気で母が困ることを、よく分かっているから。
仕事の中身も知っていて、応援してくれているから。

ポツリと、明日は保育園お風邪で休むとか、早く帰ってきてとか、言うくせに、すぐに気持ちを切り替えて、元気に登園している。

この小さな体の中で、どれだけ頑張っているんだろう。
新しい生活と、新しい価値観と、新しい人に囲まれて、どれだけの楽しみを見つけ、ギャップを乗り越えようとしているのだろう。

早く帰ってきてって言った直後に遅い方がいいだなんて、いつの間にそんな優しさを出せるようになったのだろう。
娘にあわせていた日々を終えて、娘に合わせてもらう日々。

その小さな胸の内を想像すると、胸が張り裂けそうになる。

お昼寝はまだしていない。娘なりに、布団の上で楽しく遊んでいると言っていた。
夫が夕飯の作り置きをしてくれるようになった。

みんなみんな、頑張っている。
新しい生活を、頑張ってる。





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