直系家族ではないドイツ
エマニエル・ドット『我々はどこから来て、今どこにいるのか?』(堀茂訳 文藝春秋 2022)に以下の記述があります。
これを読んで、マルクス・ガブリエル生まれ育った街である「ジンツィッヒ」を連想しました(『マルクス・ガブリエル新時代を生きる「道徳哲学」』NHK出版新書 2021 の122頁-135頁に紹介されています。
ジンツィッヒ(ベルギーとルクセンブルクとの国境に近い)にあるヘレーネンベルクという名の(おそらく、カトリック聖人の名前であると推測しています)通りの家は全部、親戚であり、ガブリエルは、この通りのほとんどの家で、過ごしたことがある、と述べています。
そして、〈この町は徹底したカトリック的環境にありました〉。つまり、一般的に知られているドイツ社会の特徴である、プロテスタント、直系家族(相続が一人だけに限られる)から外れています。
ここからは想像なのですが、これは直系家族と「複数の核家族を結びつけた共同体」が並立しているのではないでしょうか。
ヘレーネンベルク通りにはすべてが親戚である、という「複数の核家族を結びつけた共同体」という状態にあります。しかし、各核家族は何代かにわたって受け継がれていたでしょうから、相続は分割しておらず一人が大部分を受け継いでいたように考えられます。