近代国家とプレ近代国家
世界の秩序についてロバート・クーパーは、プレ近代国家、近代国家、ポスト近代国家によって分割される、と指摘します。
プレ近代世界とは
近代世界とは、
ポスト近代世界とは、
日本の場合でいえば、近代国家とポスト近代国家への移行段階にある、と考えられているように、明確に区別できるものではないでしょうが、目安としては便利なものです。とくに、ポスト近代世界は定義においても矛盾がみられます。
ウクライナとロシアについていえば、ウクライナは、国家の形態が成立していないプレ近代国家、ロシアは、干渉を排除する強権的な近代国家に分類されるといえるでしょう。
この両タイプの国家には汚職と不正という大きな問題がありますが、おおよそ、近代国家ではそれが特権階級に限られ、プレ近代国家ではそのすそ野が広い、といえます。
いま、ロンドンでは「ウクライナ復興会議」が開かれていますが、それが有効なものとなるかどうかは、「汚職と不正」がネックとなるでしょう。それの解消こそが、ウクライナの復興の第一歩になる必要があります。
しかし、それはプレ近代国家であるウクライナが、近代国家を経ずに、他国からの内政への大きな干渉を受け入れる、ポスト近代国家へと移行していくことでもあります(このような国家はいまだ存在していません)。
今、ウクライナが統一的な国家であるのは、ロシアという強力な外敵の存在なくしてはありえないでしょう。そして、外敵としての存在感が弱くなれば、分裂国家に戻ってしまう可能性もあります。だとすれば、復興支援がゆき渡らないことになってしまいます。
非常に厳しい道のりですが、ナショナリズムによらない「統治形態」という観念が、支援をする側にも受ける側にも、今、何よりも必要だと考えています。
『国家の崩壊 新リベラル帝国主義と世界秩序』
ロバート・クーパー 北沢格訳 日本経済新聞出版 2008