Web3.0時代に向けて美容業界が積極的な試み
ブロックチェーンやNFT、ChatGPTなど、最新技術を活用した試みが美容業界でも始まっています。
ビューティーガレージの新サービスやデジタルサロン協会設立について詳細をみていきましょう。
■ビューティーガレージがChatGPTを活用したサービスをスタート
美容業界のDX推進を目指すビューティーガレージ。
ビジョンである「開業と繁盛を総合支援するサロンコンシェルジュ」を実現するための取り組みの一つとして、対話型AIの活用を発表しました。
2023年6月6日より、AIChatサービス「ChatGPT」を活用した2つのサービスをスタートしています。
・ECサイトにChatGPT連携チャットボットを導入
ビューティーガレージの主な事業であるプロ向けECサイト「ビューティーガレージオンラインショップ」にてChatGPT連携のチャットボットを導入。
会員である美容サロンなどからの問い合わせに対してより精度の高い対応ができるようになるとのこと。
チャットボットは無料で利用可能。
ECサイトには元々、シナリオ型のチャットボットが搭載されていました。
しかし質問内容によっては的確でない対応になってしまうこともあったため、対話型生成AIによるチャットボットへの置き換えを実施し、サービスの向上を図る。
・美容サロン開業相談チャットボットを導入
ビューティーガレージでは独立開業や新規出店を支援しています。
成功させるためにはより多くの情報を収集する必要があるものの、手間も時間もかかるため難しいのが現実です。
そこでビューティーガレージが導入したのが対話型生成AIによるチャットボットです。
美容サロンの独立開業を支援する情報メディア「SALONスターター」に搭載しました。
チャットボットには年間約600もの美容サロン開業をサポートしているビューティーガレージのノウハウが組み込まれており、的確で役立つ情報が素早く入手できるようになるとのこと。
こちらのチャットボットも無料で提供しており、独立開業や新規出店を後押ししています。
■美容業界ではAIを積極的に活用
ビューティーガレージのChatGPT活用は美容業界初の試みではあるものの、そもそも美容業界ではAIの活用に積極的です。
2023年4月15日には「デジタルサロン協会」が設立され、話題になりました。
デジタルサロン協会が目指すのは美容とテクノロジーを通して国を豊かにすること。
美容師自身が美容業界の構造改革を推進することを目的として設立されました。
・代表理事はAIが務める
デジタルサロン協会の代表理事はAIが務めます。
このAIは導き出された回答に至るまでの経緯を説明できる特徴を持っており、テクノロジーを通して美容業界に貢献していくとしています。
メンバーは次の通り。
【特別顧問】
◎伊藤庸一郎氏(日本福祉大学情報社会研究所准教授、大阪大学大学院人間科学研究科特任教授)
◎上野宏史氏(前衆議院議員、元厚生労働大臣政務官)
【監事】
◎長田忠千代氏(元三菱UFJ銀行代表取締役専務)
【事務局長】
◎森越道大氏(SENJYU代表)
事務局長を務める森越道大氏はパーマ美容師として有名だが、IT関連の活動を積極的に行っており、一般社団法人メタバース推進協議会(代表理事:養老孟司氏)の青年部リーダーとしても活躍しています。
特別顧問を務める伊藤庸一郎氏と森越道大氏らで立ち上げた共同プロジェクト「寄り添い美容師AI」は、従来は美容師が行っていたカウンセリングや提案などをクローンAIが行うというもの。
デジタルサロン協会の設立により、人に寄り添う人間中心型AIや、感情のAIといった様々なAIのテクノロジーによって美容業界に還元できるものを追求していくとしています。
・デジタルサロン協会の仕組み
デジタルサロン協会は、VRやAI、DAOやブロックチェーンといったWeb3.0時代を、美容業界がどのように取り組んでいくかを会員とともに協議・推進するために立ち上げられました。
美容師・メーカー・ディーラーなど、だれでも参加可能で、会員は次の3つに分けられます。
◎賛同会員
◎一般会員
◎賛助会員
それぞれ異なる役割で協議に参加し、美を通した豊かさを提供するとしています。
■デジタルサロン協会のミッション
デジタルサロン協会が掲げるミッションは4つ。
それぞれ具体的な方針を打ち出しています。
・ヘアサロンの経営環境を支援
全国のヘアサロンに共通した課題についてデジタル化の推進で解決に導く。
産学官が連携して最先端のデジタルテクノロジーを推進し、共通課題の解決に導く。
健全な経営環境に向けたブランディングで持続可能な事業継承を支援。
・最先端のデジタルテクノロジーを開発支援
デジタルサロンプラットフォームの開発と運営を行い、コミュニティを開設する。
美容師クローンAIの共同開発と普及支援。
これまで美容業界が培ってきた美容文化について、未来に継承するものと進化させるものに仕分ける。
・美容業界の社会的地位向上を支援
ヘアサロン・ネイルサロン・エステサロンなど美容業界全体を包括連携し、日本の美容全般の発展に寄与する。
新たなキャリアデザインにより、美容業界の社会的地位向上に資する人財を支援。
日本の美容を本質から追及する人財を育成するため、業界を超えた共助のコミュニティを形成する。
美容師が誇りを持てる業界に進化・発展させるため、社会活動へ積極的に参加する。
・理美容師の資質向上と業務改善を支援
全国すべての理美容師が参加できる、オープンな共助コミュニティの運営。
接客・技術・完成・知識・対話力といったスキルを理美容師自らが学ぶ機会の提供。
世界的視点で未来の人材を育成するため、世界に誇れる日本の美容文化を学べる場を提供する。
■デジタルサロン協会の活動
デジタルサロン協会はどのような活動を行っていくのか、設立時に掲げていた方針は次の3つです。
・DAO化による美容業界ステークホルダーすべての窓口
美容業界すべてのステークホルダーによる民主的なガバナンス構造の構築を目指す。
それに向けて、将来的に協会運営の仕組みを完全にDAO(分散型自立組織)化する。
・業界構造の改善
業界構造を改善するためにAIやブロックチェーン、DXなどを活用する。
美容師だけでなく有識者や企業を終結させ、利益追求型でなく、業界還元型プロジェクトを発足させ支援していく。
・定期勉強会
ITやNFT、Web3.0関連の有識者を招いて月1回程度の定例会を開催。
勉強やディスカッションの場とするだけでなく、美容業界側との意見交流会の場としても活用し、業界全体のリテラシーの底上げとなる活動をしていく。
■業界初となるデジタルディプロマサービスの提供開始
Web3.0時代に向けてどのように取り組んでいくかを協議するデジタルサロン協会が2023年11月1日からスタートさせたのが「デジタルディプロマサービス」です。
・高い技術を持つ美容師が正しく評価される仕組み
これは美容技術講習修了証やセミナー参加証をデジタル証明し、同時にNFTアートを提供するというもの。
これまでの修了証は紙の証明書やアクリル製の盾などが一般的でした。
それをNFT化することでサロンのサイトや美容師のSNSなどで公開が可能になり、技術的に優れたスタイリストであることをアピールしやすくなります。
NFTは協会からURLが提供されるとのこと。
・美容師の技術料を透明化
デジタルディプロマサービスのもう一つの目的が美容師の技術料の透明化です。
今の美容業界は、顧客にいつでも対応する、人気のスタイリング画像をSNSで共有する、大手予約ポータルサイトでピックアップされる、などで成功するといわれています。
デジタルサロン協会はデジタル証明・NFT化を進めることでこの流れを変え、本当に優れた技術を持つスタイリストの印象を高められるとしています。
ビューティーガレージのChatGPT活用やデジタルサロン協会の設立など、美容業界はWeb3.0時代に向けて積極的な取り組みを見せています。
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