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理容師・美容師の新規登録者数が増加!離職率は高い?低い?

理容師美容師試験研修センターが公表したデータによると、令和5年度の新規登録者は理容師で1515人、美容師で1万8329人だったとか。
美容店が増え続けている一方、理容店は11年連続で減少傾向にあります。
若者の理容店離れが進み、男性も女性も美容店を利用するようになったといわれていますが、店舗で働くスタッフにも変化があったのでしょうか。
今回は、近年の理美容師登録者数推移について見ていきましょう。

■理容師・美容師ともに前年度から増加

理容師は平成30年度に新規登録者数が1200人台まで大きく減少し、令和2年度に1500人台まで回復したものの、その後2年間は1400人台に留まっています。
美容師新規登録者は平成11年から21年まで2万人台をキープしていましたが、22年度以降はこれを割り込む形で推移しています。
過去10年間を見ても1万8000~1万9000人台に留まり、令和5年度も2万人には届きませんでした。
いっぽう2024年9月に発表された令和5年度理容師・美容師登録者数によると、理容師は前年度比+2.9%で1515人、美容師は前年度比+2.5%で1万8329人が新たに理美容のプロに加わることに。
理容師は過去8年間で最多人数となり、美容師は8年ぶりに前年度を上回る新規登録者数を記録しています。

■理美容師の新規登録者数が減るのは当たり前?

理美容師新規登録者数の減少が理容・美容サービスの衰退を表しているのではなく、若者が理容師・美容師を目指さなくなったわけでもありません。
高校卒業後に理美容専門学校へ入学する場合、2年間の修業を経て20歳の時に理美容師の資格を取得することになります。
20歳を迎える若者の数は平成8年から減少し続けており、令和4年には過去最少を記録しています。
若者の総数が減っているため、新規に理美容師の資格を取得する人の数が減少しているのも自然なことだといえるでしょう。
令和5年度は新20歳が増えていないのにも関わらず、理美容師新規登録者が前年度に比べて増えています。
これには業界からも喜びの声が挙がっており、若者にできるだけ長く理美容の現場で働いてもらうため、職場環境の見直しを図る経営者も多いようです。

■学生が理美容師を諦める理由は?

高校生の進学先として理美容専門学校は人気が高いですが、実際に資格を取得してプロの理容師・美容師になる人は減少しているといいます。
理美容師になるのを諦めてしまう理由として、次のようなことが考えられるでしょう。

・経済的な理由

美容師専門学校の学費は、2年間で200~300万円です。
入学後、学費が大きな負担となって自主退学する学生も少なくありません。
実家を離れて一人暮らしをする場合、さらに家賃や生活費がかかります。
学費や生活費を稼ぐためにアルバイトを始めたが、学業との両立が難しくなり、夢を諦めるケースも。
理美容師になるには多額の学費・膨大な時間・日々の努力が必要です。
もっと簡単に取得できる資格、効率良く稼げる仕事が見つかれば、理美容師でなくても良いという学生もいるでしょう。

・労働条件に対する不満

美容師を目指す学生のなかには美容サロンでのアルバイトをしている人もいますが、接客や人間関係による精神的な疲れ、立ち仕事や掃除などの肉体的な疲れに対して時給が低すぎると不満を持つことも多いようです。
資格を取得してプロの美容師になっても仕事が楽になるわけでなく、むしろアルバイトの頃より忙しくなり、責任も重くなります。
残業は当たり前、長時間労働になることも多く、理美容師になるには覚悟が必要です。
プロになる前に理美容師の現実に直面し、もっと条件の良い仕事を求めて進路を変更する学生も多いでしょう。

■理美容師が退職する理由

理美容師の資格を取得してお店に勤務した後、3年以内に半数以上の人が退職してしまうといわれています。
他の業種と比べても離職率が高く、経験者は身近な学生に「理容師・美容師だけはやめておけ」と言うことも多いとか。
それはなぜでしょうか。

・スキルアップやキャリアアップが難しい

お客様を満足させるには、理美容師のスキルアップは欠かせません。
資格を取得してからも、日々の練習や専門知識・最新トレンドの勉強は続ける必要があります。
営業中には練習や勉強ができないため、営業終了後に残って自主練習をしているスタッフも多いです。
これは勤務時間に含まれないので無給、練習したからといってすぐに上達することもないので、モチベーションを維持するのは難しいでしょう。
グループ企業の場合は社員のスキルアップ・キャリアアップのサポートが手厚いところも多いですが、個人店や少人数スタッフで運営している理美容店の場合は一人ひとりが戦力として扱われます。
社員同士がライバルであり、先輩・後輩関係なく顧客を取り合うようなお店もあります。
管理職社員や先輩スタッフに冷たくあしらわれたり、忙しすぎて十分な指導を受けられないこともあるでしょう。

・収入が低い

どんなに理美容師としての腕が上がっても、必ず昇給・昇格につながるわけではありません。
厚生労働省の調査によれば、10人以上のサロンに勤務する場合の理美容師の年収は約380万円でした。
これは他の職種と比べても低めの水準で、残業や休日出勤の量に対して給料が少なすぎると不満を持つ社員は多いです。

・下積み時代が長い

新人の頃は任される仕事も少なく、後片付けや自主練習ばかりの日々が続きます。
顧客の荷物を預かって席にご案内したり、会計処理や予約対応をしたり、基本的にはサポート役として働くことになるでしょう。
せっかく理美容師の資格を持っているのに、アシスタントに徹する毎日はつまらないと感じる人も多いです。
しかし、こうした下積み時代は短くて3年、長ければ10年以上続くこともあります。
個人としてのスキルが向上しても、先輩スタッフが退職しない限り主力メンバーとして認められない場合も。
どんなに頑張っても顧客に付かせてもらえない、自分の腕を試すことなくひたすら雑務をしている日々が嫌になり、退職を決意する理美容師も多いでしょう。

・お店のスタイルと合わない

お店によって、学生向け、主婦向け、メンズ向けなど、さまざまなカラーがあります。
自分が思い描いていた理美容師の姿を実現できるかは、どんなお店を選ぶかによって変わってくるでしょう。
最新トレンドのヘアスタイルを提供しようと思っても、年齢層が高めの顧客が多いお店ではほとんど需要がありません。
美容師はお客様に美を提供する職業であり、経営者や働いているスタッフはアーティストです。
自分が得意とするスタイルを提供したい、好きなスタイルを追求したいと思うのは当然のこと。
それが叶わない職場であれば、転職するのも良いでしょう。

・顧客との人間トラブル

要望されたものを提供するだけでなく、希望する以上の価値を提供するのが良い理美容師の条件だといわれています。
理美容師として成功するには、顧客とのコミュニケーション、良好な人間関係作りが大切です。
一見関係ないような日常会話や世間話、家族構成や趣味などの話も、顧客のニーズを引き出し、本当に似合うスタイルを見つける材料になる場合があります。
しかし、顧客に近付きすぎたために警戒されたり、好意を持たれたりしてトラブルに発展することも。
実際、常連客からストーカー行為をされて退職を余儀なくされた若い女性スタッフもいます。
対人関係が苦手で顧客とトラブルになることもありますが、コミュニケーション能力が高いがゆえに勘違いされてしまう可能性もあるので注意しましょう。
 

理美容師を目指す学生のなかには、インターンシップを利用する人もいます。
若さあふれる理美容学生から、忘れかけていた情熱や「理容・美容が好き」という気持ちを思い出させてもらえるかもしれません。
お返しに、先輩として技術についてのアドバイスをするのはもちろん、リアルな理美容業界の話や実際に就職した後の体験談などを教えてあげてはいかがでしょうか。

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