見出し画像

雲南日本商工会通信2023年11月号「編集後記」

 不況が続く中国経済。明るい材料を常に探しているのですが、「“彼”が方針を改めること」を除いて何も見つかりません。
 昆明のある老板も「中国の不景気は30年続くだろう」と言っていました。なぜなら「人の寿命が伸びているせいで、“彼”は100歳まで生きるから」だそうです。
 続けて老板は、「海外ビザを求める小金持ちが周りに増えている」と言います。上海ロックダウン以降、資産分散や政治的安全性の確保を海外に求める傾向はありました。それがいまや、大金持ちだけでなく小金持ちまで広がっているのだと言います。
 大金持ちにとっての移住先候補はシンガポールやカナダなどですが、小金持ちにとっての候補は、ビザの取りやすさや文化的差異の少なさから日本となりつつあります。
 日本ビザ取得の手段として注目されているのが「経営・管理ビザ」。これは事業所を確保した上で500万円以上投資、加えて事業プランを入国管理局に提出し、持続可能な事業だと認められれば取得できます。
 「経営・管理ビザ」は投資ビザというより、経営・管理するためのビザです。したがって、日本でどんな事業をするにせよ、そのビジネスは、持続可能であることが求められます。これまで「速く、多く金を生み出すこと」を当然視していた中国人が、日本でそのような姿勢で事業を行うのは難しいこと。とはいえ、今後は「低成長時代の中国」で事業を行うことになる以上、中国本土での経営ノウハウを得るチャンスだとも言えるでしょう。
 そんなことを考えていたら、10月30日付日経新聞に「経営・管理ビザ」の条件のハードルが下げられるという記事が掲載されました。最初に「500万円以上の投資」がなくても、とりあえずの経営・管理ビザ(2年)が取得できるとのこと。他国が次々にビザ条件のハードルを上げていたので、この変更はかなり意外でした。日本政府の真意はどこにあるのでしょうか。
 記事によれば、「500万円」のハードルを撤廃することで、外国人留学生の起業意欲を高め、外国人ならではの発想を取り込むのが目的のようです。そして2年の猶予期間で資金を回せるようになることが期待されています。
 つまり日本政府にとって担保金(500万円)自体はどうでもよく、代わりに「日本で持続的に展開できる、新発想の事業プラン」を求めているのです。これを深読みすれば、「お金に対するハードルを下げる代わりに、事業プランに対する審査を厳格化するぞ」と表明したのと同義だと考えられます。
 ところで、このような状況に一抹の不快感を持つ日本人は少なくないのではないでしょうか。なぜなら、「中国人に日本が買われてしまう」といった雑誌等の記事に代表されるように、じわじわと日本人の日常生活に違和感・悪影響を与える懸念があるからです。ただその一方で、人口減少に対処するために、日本はもっと移民を増やすべきだとの議論もあります。
 個人的には、いずれ日本で移民を増やさざるを得ないのなら、見た目や文化面、宗教面であまり変わらない「当局を納得させる事業策定を行える素養または資産を持つ中国の小金持ちや留学生」に移民してもらったほうが、相対的に摩擦も少なく、周りに交じりやすいと思うので、日本人にとってもそれほど悪い話ではないと思います。
 

いいなと思ったら応援しよう!