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雲南日本商工会通信2022年6月号「会長の挨拶」
毎年行われている雲南省内の大学の日本語を学ぶ学生の能力を競うスピーチコンテスト。今回はコロナ禍のため各学生が撮影したビデオによる審査となりました。商工会役員として毎年私も審査に参加させていただいていますが、“今どきの学生”に直接触れることができる機会なので毎回楽しみにしています。
今回の命題スピーチの題目は<私にとってのスーパーヒーロー>と<大学時代に身につけておきたいこと>でした。この二つの題目を見て、ほとんどの学生が後者を選択するだろうと思いましたが、驚いたことに参加した16名の学生のちょうど半分がそれぞれの題目を選択していました。ある意味主催者側の意図がはっきりカタチになったとも言え、良い題目だったのでしょう。
<私にとってのスーパーヒーロー>
スーパーヒーローというと映画に登場するヒーローを思い浮かべますが、実は自分にとってのスーパーヒーローは、ここまで自分を育ててくれた両親や、身近で一見平凡な人であるという発表が多かったですね。なかでも両親に対する感謝を表した内容を発表する学生が多く、これはどんなお題にでも両親に対する感謝と結びつけるこの国の良い特徴とも言えますね。ただし、どうして皆が皆、まるで口裏を合わせたように同じ内容になるかには少々「?」マークもありますが。
「“まじめな話”をするときは、どうしなければいけない」という概念がその国や時代の学生の間で画一化されてしまうのは、どこの国でも同じなのでしょう。
なかにはヘレンケラーやナポレオンを例に出した学生もいて楽しめましたが、中国での歴史上の人物を挙げる学生がいたら良かったなどと勝手な感想も残りました。
<大学時代に身につけておきたいこと>
こちらも画一化された発表が多かったですね。なかでも多かったのはコミュニケーション能力を身につけたいという発表でした。大学でコミュニケーション能力? これには正直驚きましたね。というのは中国で仕事をしていると、社員、取引先、顧客のほとんどの人がコミュニケーション能力を武器に仕事をしていると感じるからです。これは元来中国人が持つ特徴で、大学で身につけなければならないようなことでは無いという印象ですから。
最近の学生にこの能力が薄れているとしたら、それも時代の背景があるのでしょうか。また、高校までの12年間は詰め込み教育を強いられてきただけに、大学では思考力を身につけたいとの発表も興味深かったですね。何か次に進もうとした時に、アイデアがたくさんありすぎて決断できないという学生もいました。情報が氾濫する昨今、学生たちの考えや方法も明らかに昭和のおじさんの考え方とは違ってきているのでしょうね。
さて、実際の審査とは関係なく、仕事や会社の目線でつい学生たちを見てしまうのは悪い癖です。
コンテストの主眼はあくまで日本語能力であり、今年の学生たちは特にレベルが高かったのではないかと感じています。確かに、ぶっつけ本番ではなく、取り直しのきくビデオ審査ではあったにせよ、日本語の表現は年々上がっているのではないかと感じます。これは良い意味で情報が氾濫している賜物ではないでしょうか。
通常であればその場でお題を出す即興スピーチがあり、そこで日本語能力の差がはっきりと現れるのですが、今回はそれが無かっただけに、学生に優劣をつけるのに頭を抱えるほどでした。