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東京大学大学院農学生命研究科を外部受験した話

はじめに

はじめまして。サムネはこの話題と全く関係ないですが、僕が好きなサッカーチームのほんのちょっとだけ面白い写真です。

この記事は、2024年夏に “東京大学大学院 農学生命科学研究科 応用生命化学専攻”を外部受験したときの体験記です。

自分が情報を集めていた際に東大の大学院の中でも農学生命科学研究科受験の情報が少ない、と感じたのでこのnoteを書こうと思いました。

皆様の参考になれば幸いです。

志望を決意〜ラボ見学

志望した理由としては主に2つあって

  • 専攻(自分の研究したいこと)を変えたかったから

  • 所属しているラボの雰囲気的に、博士に行く雰囲気ではなかったから(決して教授や同期が嫌いだったとかではありません、むしろ大好きです)

というところでした。

自分が研究したかった内容と学部のラボの研究内容が入ってみて想像以上に大きく違うこと、それに自分が博士に行くのだったら厳しい環境に飛び込んでもいいのではないか(学部のラボに博士に行っている人が留学生の1人を除けばいなかった)ということを3年の12月に感じ、ウェブサイトや知り合いを通じてさまざまな情報を集めました。

その中で、今回志望したラボの内容と自分の研究したい内容が重なってラボに問い合わせて3年生が終わった3月下旬や4年生が始まる直前の4月上旬に訪問しました。

個人的には訪問する前に、ある程度研究内容について目を通しておくことが大事だと考えています。できたらラボが出している論文を読んでおきたいですが、スケジュール的にもそうでない方の方が多いでしょうし、私はできませんでした。しかしながら、私も論文まで目を通しておけば良かったなとは思いました。

また、教授に対する質問内容を考えておくのが良いと思います。

どういう実験をしているのか、ラボのスケジュールはどのような感じか、博士にはどれくらい進んでいるのか、学会発表の時期や頻度などなど色々質問事項はあるでしょう。教授と話す時にはメモを取っておくのが良いと思います。ただ聞いているだけではすべては覚えきれないので、大事なところだけでも書いておくのは個人的には良かったと感じました。そういう姿勢を見せることで、「俺は/私はやる気ありますよ、ここで研究したいですよ」という教授に対するアピールになりますしね。

教授と面談した後に、ラボの施設を少しだけ見学させていただいたあと、ラボにいた学生の方と少しだけお話しすることがありました。

院試対策方法や、受けた科目、ラボの雰囲気や教授陣の人柄などを学生の目線から聞けることは貴重ですので、失礼にならない程度に質問しちゃいましょう。

院試対策開始

応用生命化学専攻は以下の試験科目と配点でした。

英語(TOEFL-ITP) 250点
一般教育科目(化学) 250点
専門科目(7つのうちから3つ選択) 500点
計 1000点
という内容でした。

ここで院試対策をする前の私の実力です。

TOEFL-ITP 590点(667点満点, 東大換算で約221点), IELTS 6.5
化学レベル: 色々忘れていてイオン化傾向なども覚えていない絶望的知識量

これをどう捉えるかは読者の方々次第です。

英語

TOEFL-ITPという試験当日に受ける形式の英語のテストでした。配点の1/4を占めるのでバカにはならない科目です。実際ここで差がつくとも言われています。

幸いにして僕は英語がそれなりに得意だったのでほとんど対策せず、所属している大学で4月末に練習で受験したのと、試験3日前くらいに公式サイトの模擬問題を軽く眺めた程度でした。

しかし、そうでない方の方が圧倒的多数だと思われるので、私なりに大事だと感じたことを述べておくと、「いかに時間内に全部解き切れるか」だと思います。リスニングは矢継ぎ早に質問が飛んできますし、文法問題やリーディングも1問に2分も悩んでいたら時間制限がくる。市販の問題集などで早めから継続的に勉強した方が良いです。一朝一夕でできるようにはならないので。

TOEFLに関しては、他の方の方が詳しく述べていらっしゃるのでそちらを参考にした方が良いと思います、あくまで私は外れ値のようなものです。

どうやら550点以上取れれば合格ラインらしいので、そこを目標にするのが良いでしょう。

一般教育科目

応用生命化学専攻では「化学」が指定されています。他の選択肢には物理や生物、数学などもありますがこれらは他の専攻の話です。

化学は1番対策が厄介だと感じました。高校化学の知識だけでは対策できないですし、範囲も生化学や有機化学、熱力学も入ってくるのでかなり大変でした。個人的には若干捨て科目にして有機と高校化学の知識の復習を、過去問を解くことと並行して行う程度でした。

後述しますが、手応えは全くなかったです(笑)

専門科目

専門科目は

  • 分析化学

  • 生物化学 

  • 有機化学・天然物化学

  • 分子生物学

  • 微生物学

  • 植物生理学・植物栄養学・土壌学

  • 食品科学

のうちから3つ選ぶ方式です。このなかで私が選んだのは “生物化学”, “食品科学”, “植物生理学・植物栄養学・土壌学(以下, 植物学)”にしました。

はじめは植物ではなく”有機化学・天然物化学”を選択していたのですが、生物化学と同じくらいの知識量が求められていたのと生物化学や食品科学とのオーバーラップが少なく、紐づけて勉強できないなと感じたからです。これはあくまで一例なので他の組み合わせも存在すると思います。

私は学部の卒業研究、バイトや部活もあって時間がなかったので、科目数が多いなかでいかに効率よく勉強できて点数が取れるのはどの組み合わせなのか、自分の得意分野(私の場合は生物化学でした)と近しいものがどれか、というのを考えました。選び方は自由です。好きなもの3つでもいいですし、院試のためだけに楽そうな科目を選択するでもいい。

個人的な意見ですが、この3つの組み合わせだと生物化学と食品科学はビタミンの機能や代謝経路の部分で共通する事柄が少なくないほか、生物化学と植物学は例えばC4回路や光合成経路、必須元素の機能(例えば電子伝達系を構成する複合体Ⅳの構成要素には植物の必須元素であるCuが存在している)で重なっていましたので割と対策はしやすいと思います。食品科学と植物学が重なる部分は少なかったですが。

専門科目の対策法

生物化学

代謝経路やタンパク質、酵素学が主に出題されます。学部でも生物化学は習って、自分でも少し勉強していたのでそこそこ知識があると過信していました。
4月くらいから持っていた「ストライヤー生化学」を読んでいましたが、6月から過去問を解き始めても知らないと解けないような問題がいくつかあったり、記述が多かったり、覚える量がかなり多かったりして、かなり苦戦しました。
最初は解けないですが、メンタルブレイクして「解けないよ〜」で終わらせるのでなくその後が大事です。間違えた問題、わからなかった問題の復習だけでなく、そこに関連する事項もまとめて勉強することで知識量が徐々に蓄積されていきました。参考書はストライヤー以外にも色々あるので、使いやすいものや慣れているものを選んでやるのが良いと思います。

食品科学

食品成分の機能・構造、栄養代謝、食品加工まで幅広く存在します。知り合いのつてや内部生と話した時に、なぜかたまたま持っていたけど全く使っていなかった「食品学(以下参照) 」からメインに出題されるとわかり、4月くらいから対策を始めました。しかし6月から過去問を解くうちに、栄養代謝の分野の出題も少なくないことがわかり、これは学部の授業の関係上元から持ってて使っていた「エッセンシャル栄養化学(以下参照)」も見るようにしました。割と過去問の使い回しの問題もありますが、範囲が狭くないので初見だと解けない問題もありました。
生物化学の時と同じように復習して知識の定着を図りました。


植物生理学・植物栄養学・土壌学 (植物学)

先にも述べた通り、最初は天然物化学の対策をしていたのですが、あまりの勉強量の多さにギブアップして、この科目にたどり着きました。知り合いのつてや内部生と話した時に「植物は楽だし、過去問の使い回しのところが多いよ」と言われていたことを思い出し6月から対策を始めました。過去問を5年分くらい解いていく中で土壌学以外は「過去問の使い回しだな、過去問と参考書をまとめれば高得点狙えるのではないか?」と感じるようになり、そこからは一気に頭に入るようになりました。参考書は東大がHPに載せているものを大学の図書館で借りて勉強しました。6月から8月まで延長や借り直しをしてずっと使っていました。

土壌学は2023年夏の試験から植物栄養学・植物生理学と合体した科目で、出題内容も色々あって7月くらいまで対策には手を焼きましたが、解いていくうちに慣れていき徐々に頭に入ってきました。

希望したラボの内容とは関係ない科目で、院試対策だけのために勉強していましたが、意外と楽しかったです(笑)
高得点を狙える科目かつ内部生がみんな受ける科目らしく、ここでの失点は致命的だと感じていたので結構対策しました。

一般教育科目、専門科目に共通して言えることですが、「過去問を解く→あやふやなところは参考書を見て復習する→余裕があれば関連事項まで目を通す」というサイクルをやるのみです。10年分やれば問題ないと思います。まあ、私は要領が悪く、復習と関連事項のチェックに時間を割いていたので8年分しか解答を作れませんでしたが…

特に専門科目では「個人的に効率よく点取れる組み合わせ」は選べたのに行った勉強のやり方は非効率だったかもしれません(笑)

また一般教育科目は60分、専門科目は試験時間が2時間45分となっていて、意外と時間が足りません。アウトプットの練習は必要だと感じましたし、時間測ってやっておくべきだったなと後々痛感しましたね。

あと解けない問題が絶対どこかで出るだろうなと考えていました。なので、もしそういった問題に遭遇しても焦らないことを意識しました。
特に生物化学は「知らないと手が動かない」問題が出る傾向にあったので、ある程度、知らないことがあるだろうな、という想定はできていました。

試験当日

英語

会場には9時集合でしたが30分前についていました。落ち着く時間を作ったり、トイレを済ませたりしておきましょう。

リスニングの音響がおかしかったこと以外は問題なく、後日リスニングパートは全員満点になりました。「おい、差がつかないだろうが」と思いましたね。
まあそこそこできたんじゃないか、っていう体感。

専門科目

とりあえず問題配置的に1番前にあった生物化学から解きましたが、時間がかかると思い後回しにして植物学に取り掛かりました。植物学は楽勝、食品科学ですが問題数がそこそこ多かったので最初面食らったところはありましたが、気持ちを落ち着かせてできるだけ多く書きました。生物化学は難しかったですね、ノーマークだったところがでてきて混乱しそうになりました。わかるところはできるだけ丁寧に記述しようと心がけました。

専門の中では手応えがあった順番で植物学>食品科学>生物化学でした。
とはいえ、植物学と食品科学でなんとかなったし受かるんじゃないかと勝手に盲信していました。
トータルで見たらまあまあやれることはやったかな、っていう体感。

一般教育科目

これがハードでしたね。過去問と異なり、大問が3つしかなく、個人的には難しく感じた他、計算量も多かったので時間内には解ききれませんでした。手応えはまったくなかったです。かなり心配になりながら試験が終わりました。体感4割行っていたら良い方かなと思っていました。

結果発表

心の中では「流石に受かっているよね…?」という気持ちと「化学でやらかしたしまずいかもなあ、リスニングも満点になって差がつかないし」という気持ちが7:3くらいの気持ちで発表日を迎えました。

よっしゃー!自分の番号があったぞー!

ほっと一安心して、すぐに家族と教授に連絡しました。

得点開示

気力があれば追加しようかな。

(2024/11/15追加)
英語 165.3/250 専門科目 452.0/750

英語結構やらかしてましたね…笑
専門科目は割とそれくらいだろうとは思ってましたが危なかったですね…

おわりに

全員が受ける試験ではありませんし、不合格者もそれなりにいます。ですが、慢心せずに対策し、心が折れることがなければ誰でも外部から受かる可能性はあります。

皆さんの健闘を祈ります。

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