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第六・五会(ミニ)タンメン会 練馬「小姑娘」

「おめーに食わすタンメンは並んでる!」
の巻

(2022年8月)

大川さんが体調不良だという。暑いもん、年寄りはみんな、そうたよ。
快復なんか待たず(しないかもしれないし。ぷぷ)マコトとふたり、お盆のミニタンメン会を開催することとなった。真夏の太陽照りつけるなか、13時に練馬駅に集合ということで。
「5分遅れます」
その昔マコトがレコード会社にいたとき担当していたキョン2(読めますよね。ちなみにマコトはギョーカイ人ぼく「コイズミがさー」と呼ぶ。ぷぷ)のアルバム聴きながら向かっていると、マコトからメール。まあ、5分なら許す。


店名が写っていない。


と思ったのも束の間、第二のメールが。
「バス乗り間違えた。大泉公園に13時15分着」
あー、いつもながら。まともに集合場所に来た試しがないマコトである。だいたい、バスって。電車で来いよ。十条から乗り換え一回なんだから。それに大泉公園なんてないよ、大泉学園だよ。しかも、そこは練馬駅の5駅も先だ。どうやったら、間違えられるんだ。
「お盆で運行が違ってた」
マコトのスマホには、ナビアプリは入っとらんのかいな。
仕方ないので、待ち合わせを30分遅らせる。
その間に、ぼくは目指す店を偵察に足をてくてく、汗はたらたら。すると、二人だけど店の前に待ちのひとがいるではないか。汗&冷や汗、たらり〜ん。ご先祖様、涼しくなったら墓参りしますから、なんとかして。
迎えに駅に戻ると、マコトはかたちだけ早足で改札を抜けてきた。
「ふー、間に合った」
「間に合ってないよ。本来より28分遅刻だ」
「だってバスが遠回りするんだよ。和光経由で来たんだ。バス代も行き先言わないと、教えてくれないし」
「それは一度、埼玉県に入ったからだ。和光市を地図で見なさい」
「地図はよく見るけど、練馬のあたりは見ないんだ。板橋区のライバルだから」
文京区を敵視する、荒川区在住の大川さんみたいなことをほざくが、ライバルなどいない(と、いやらしくも決めつけている)孤高の杉並区在住のぼくは聞き流して、歩き出す。
ぎらり、べとり。日本の夏である。キンチョーしてたら保たない高温多湿の夏。弛緩。
本日の店は「小姑娘」と書いて「しょうくうにゃん」と読む。大川元編集長さんなら「こじゅうとむすめ」と読んだだろう。「姑」は「しゅうとめ」だけど。いや、「こおんなふるおんなよし」と読んだかもしれない。

まさに、ぷはー。


店前の待ちは消えていた。
「俺の遅刻のおかげだ」
マコトが胸を張る。長生きするよ、肉もムシャムシャ食べるし。店内を覗くと、ちょうどテーブルがひとつ空いていた。たぶん、ぼくのご先祖様の計らいだ。
前回の池尻大橋に続き、我々には小綺麗すぎる店だが、前回と違うのは、ここは「タンメン」が売りだということ。
その証拠にジャーン。
「ビール、中瓶。あと麻婆豆腐」

夏ノ暑サニモ負ケズ


ではなくて、いや、それもいいが、メニュー表をよく見ろよ。
ラーメンを差し置いて、タンメンとギョーザのセットがイチオシにされている。次はヤキソバで、次はチャーハンだ。(写真参照)つまり、ラーメンを歯牙にもかけずタンメンの圧勝。こんな店、滅多にない。しかもタンメンの有名店でもないのだ。ぼくって、いい店見つけるよね。マコトは誉めてくれないけど。

タンメンイチオシ。


「あと、タンメンセットふたつ」
ビールで乾杯。ふー、生き返るってやつ。
麻婆豆腐は、ご飯なしでいける飲めそうな仕上がり。
「ずるずるずる」
あっという間に、マコトの取り皿がきれいになっていく。本当にビールと交互に飲んでいる。
「腹、減ってるんだ。バスのなかでヤキモキしたから」
「こっちは暑いなか店まで往復し、冷房のない駅の改札でヤキモキしたわい」

見えないけど、太麺です。
タンメンのためのギョーザ。


タンメン到着。
「胡椒かける前に、まずスープを飲む。さすがに覚えたよ」
とスープをすするマコト。
「うん、薄味でフツーだな」
「おい」
ひと口で結論を出すな。それにこの店の特徴は太い麺にあるのだ。
「おっ、太麺だ。俺、太麺好きなんだよね。つけ麺は嫌いだけど」
面倒なので、理由は聞いてあげないことにした。とにかくご機嫌になったのはよろしい。
ギョーザも到着。
「おおっ、3個かと思ったら6個じゃん。食べ出あるな。大川さんなら、残しちゃうな」
「大川さんはセットにしないで、ふたりが1個ずつあげればいいだろ」
「あー、そっか」
タンメンもギョーザもむしゃ食いして、マコトは完食。負けじとぼくも半分飲み込んで、なんとか完食。ギョーザにしっかり味があるので、そのぶんタンメンを薄味に仕立てているのだと思うが、マコトはそんなことには思い至りもしなかっただろう。味わって食べたかさえ、疑問だ。しかし夏の盛りにタンメン食べ切ったのだから、タンメン会会員としては合格なのだ。
店を出て喫茶店と思ったが、好きだった「アンデス」は、いまはない。でっかくて、マンガだらけで、タバコ臭くて、古臭い店をひとりで仕切っていたマスターの姿が懐かしい。
練馬は学生街でもないし、ぼくはガロファンでもないし、ひとりで来ていたが、♪時は流れた〜、なのだ。

あぢー。


蝉の鳴きしきる道を、隣駅の中村橋まで歩いた。半ミイラ化しつつ商店街を探したが、喫茶店がない。
けしからん。喫茶店とは、あってもなくてもいいようで、ないといま現在の我々みたいに困ったりする、いわば「街のゆとり」の代名詞である。中村橋よ、しっかりせい。
仕方なく、居酒屋に入りハイボールを2杯ずつ飲んだ。アイススケートの話になり、伊藤みどり(古い)について語った。バレーボールの話になり、木村沙織(古い)について語った。あと、大相撲の行司と高校野球の審判、アナウンサー、解説者を腐した。小人は閑居して悪事をなすが、老人は閑居して悪口を言うのだ。我ながら情けないが、スッキリした。あ、大川さんの悪口言うのを忘れてた。

水分補給は大切。


駅に向かうとドトール(ぎりぎり、喫茶店と認定)があったので、アイスコーヒーとホットコーヒーを1杯ずつ飲んだ。さすがに腹ぽこぽこになった。レコード業界について語り、マンガ配信業界について語り、俺たちはバカだという結論に至った。正しい。
近々のタンメン会開催を約して、今度はちゃんとマコトも電車で帰っていったのだった。

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