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「ファーストキス 1ST KISS」考察



映画 ファーストキス 1ST KISS 
監督 塚原あゆ子
脚本 坂元裕二
上映時間 124分

今回の映画は、「怪物」などの脚本で脚光を浴びている坂元裕二さんと「アンナチュラル」や「ラストマイル」で注目の的となっている塚原あゆ子さんの作品!今回の映画も楽しみでわっくわくしながら観に行ってきました!!

・あらすじ(※ネタバレ有り※)

古生物学の研究をしている硯駈(すずり かける)は、デザイナーの高畠カンナと出逢い、恋に落ち、付き合って1ヶ月で結婚する。

そんな順風満帆な2人の生活は時間と共に一変していく。

同棲を伴う結婚生活では、お互いが相手の嫌な部分を指摘し、それに対してお互いが辟易していまう。徐々に喧嘩が増え、会話がなくなり、出逢いから15年経った現在では家庭内別居のような状態へ。

ある日2人は離婚を決意し、離婚届にサインをする。
ところが、まさにその日の朝方、ベビーカーが駅のホームから線路に落下してしまう現場に居合わせた駈は、1人だけ線路に降り立ち、赤ちゃんを助けるものの、自らの命をなくしてしまう。

離婚を決意していたものの1人取り残されたカンナはショックを受けながらも自らの生活を続けていく。
そんな最中、首都高を走行中にカンナはタイムトラベルしてしまう。到着した先は駈と出逢う前の15年前。

一時は動揺し現代に戻ってくるも、過去を変えることで駈の死を避けられるのではないかと思い、タイムトラベルを複数回行ってみるも上手くいかない。
ある時には駈だけが亡くなっていたという事故が60人以上が亡くなってしまう事故へと変換されてしまうケースもあった。

カンナはふと思い立ち、自分と結婚しなければ駈は死なないのではないかと考え、実行してみるものの、結果的に駈を傷つけるだけで死という結果は変えられなかった。

そこで改めてカンナは本来の駈との生活を楽しいものにすることで駈の亡くなる日の予定を変えようとしていくが、タイムトラベル中にカンナは駈に未来からきていることがバレてしまう。

そこでカンナは駈に告げることとなる。
"カンナとの結婚"
"ギクシャクした結婚生活"
"2人の離婚"
"駈の死"

それを聞いた上で、駈は「死という結果は変えられなくてもカンナと結婚生活を送りたい」と想いを伝える。

そして駈は15年前のカンナと改めて出逢い、結婚生活を送っていく。
それは未来の2人の姿からは遠くかけ離れたもので、2人で一緒にいられることの幸せを充分に感じ、お互いが思いやりの気持ちを持ち、リスペクトし合う関係へと変化していた。

そして駈が亡くなる当日も、仲睦まじい関係のまま駈はやはりいなくなってしまう。
茫然自失とするカンナは、自宅で駈からの手紙を見つける。
その中には、これまでの15年間がすごく幸せだったこと、結果は変えられなくても2人で過ごした時間があるから寂しいという想いはマイナスなものではないこと、カンナを元気づけたい。そんな駈の想いが綴られていた。

カンナは駈の想いに涙する。

・主の感想(映画のメッセージ性について)

塚原あゆ子監督の作品は、社会性があり、メッセージ性が強くわかりやすい作品が多い印象だが、自分はそこが超絶好きなポイント!
(逆に結末がどちらとも受け取れるみたいな映画は好きではない(笑))

今回の作品では、端的に言うと「幸せを感じる事の至要さ」かなと。
この映画を観た時に「ほんとそれ!!」って思ったよね(笑)

台詞にもある通り、地球の歴史から考えたら人間の一生などほっっっっんの一瞬で、そのほっっっっんの一瞬で出逢った人間が惹かれ合い、一緒に生活をしていくという事自体、奇跡的な事なんだと。その奇跡的な生活に彩を加えるのは自分自身だということ。

駈とカンナの15年近くの結婚生活の様相が、未来情報の一部を伝えただけで全く良い方向に変わってしまうというのも、駈の思いやり、心遣いによるものだよね。

自分はこの映画を観て、一つ思い出した話があった。
ホールケーキの6ピースの内1ピースだけ無くなっているのを見た時に、通常の人間は"無い部分"に焦点を当ててしまう。しかし、本当に重要なのは、"ケーキが5ピースある"という点で、人間はそちらに焦点をあてるためには訓練が必要だ、と。
以前そんな話を聞いたことがあった。

日常生活で、相手がいることが当たり前になり相手の嫌なところを探す毎日では、ケーキの無い部分を探し続けているようなもの。
そんな減点法では一生幸せは感じられないと思う。
だって全てが"有る"なんてことは対人間関係ではほぼあり得ない。
常に"無い"ことが不幸せを意味してしまうから。

この映画のメッセージ性は、決して夫婦関係だけでなく、友人関係、恋人関係などの人間関係にも当てはまることだよね。
そういった意味では、今回も社会性がある映画だと思う。

個人的にめっちゃ好きだし素敵な内容だった♪

・映画の切り口

今回の映画は、近年流行りのタイムトラベル物だが、ほとんどのタイムトラベル物は、「結果」を変えるためにタイムトラベルし、何かの行動を変えることで、「結果」を変え、ハッピーエンドという終わり方だ。

ところが、ファーストキスに関してはその真逆を行く。
「結果」ではなく「過程」を変え、駈が亡くなることから「ハッピーエンド」とも言い切れない。

そんな斬新な切り口に面白さはあったかなぁと思う。

ただ、個人的にすごく気になったのは、CGが明らかにCGだったり、松さんの若かりし頃が顔面修正だいぶ入ってるなーとは思った(笑)
まぁ、タイムトラベル自体に着目した映画ではないので、許容範囲かなという感じだが、折角ならもう少しリアリティがあっても良かったかも。

・主の気づいた点(キャラクターについて)

何度も映画に登場し、決して無視のできないアイテム。
それは「靴下」!!

駈はカンナの靴下を履くシーンは一度もないのに対して、
カンナは駈の靴下を何度も履いているシーンが映されている。

またこちらも映画初手と最終手に使われる「餃子」!!
こちらも無視できないアイテムだ。

冒頭、カンナが3年も待ったお取り寄せ餃子を焼いている最中に
ふと亡くなってしまった駈に想いを馳せてしまい、
餃子を焦がしてしまうというシーン。

上記の2点のアイテムから推測できるのは、
カンナは結婚相手とあらゆるものを共有(シェア)することに幸せを感じているのではないかと考えられる。
餃子についても3年待って取り寄せた物をきっかけにあまり良くなかった駈との関係の修復を少しは考えていたのではないだろうか。
離婚届をサインした日の駈の出勤時シーンで、最後にカンナは駈に何かを言おうとしたことからも推測は間違っていなさそうだ。

新たな駈はカンナとの結婚生活では、
自らは食べもしないパンを美味しく焼けるトースターを買ってみたり(想いのシェア)、
出勤前までカンナとボードゲームをしていたり(時間のシェア)、
と物事に捉われずシェアしているシーンが散見された。

二人の幸せに心温まるシーンでした、すごく、うん。(涙)

・解読難なシーン

最後から2番目のタイムトラベルの際に、カンナは駈と結ばれなければ駈は助かるかもという思いから、駈に冷たくあたることで距離を置くことに成功する。

しかし、現代に帰ってきたカンナが見ていたのは、恐竜博物館での恐竜の化石。そこに駈の姿は無く、研究者である駈の名前も無かった。
まぁそこまでは、カンナが駈と結ばれなくても、駈は研究者として大成もしなければ、死も避けられないというのはわかる。最後のタイムトラベルの時に、何をやっても駄目だったとカンナが発言しているしね。

しかし!!なぜかカンナが恐竜博物館を見物中にチケットを2枚持っているシーンが一瞬映されるのだ。

….どういう意味だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

と未だに深い理解に至っておりませんので、解読できた方は教えてください。

・演技について

これは演技といってよいのかわからないが、松村北斗君の最後の手紙を読む声がめちゃくちゃ良かった。
カンナへの愛に溢れ、包み込むような優しさが表現されていたと思う。
最高だったよね。

他にもファニーなシーンで松さんがおちゃらける演技も観てて面白かったなぁ。

・まとめ

以上 今回はファーストキス FIRST KISSの考察でした!
総じて、良い映画でしたね!
何よりも「想い」を大切にして作られた映画だなぁというのが、流石塚原あゆ子監督というべきか。
一つ一つのキャラクター理解の解像度が誰よりも高いからこそ、ディティールに拘れるんだろうなぁと感じました。

楽しい時間をありがとうございました!

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