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エロイカ詰め合わせ
🌹【マフラー】Z君より
デスクの椅子の背に掛けておいたはずのマフラーが見当たらない。
ロッカー室かと行ってみたが、やはり何処にもない。
「これは誰のかな」
戻ると、代わりに先程までは無かったEとイニシャルの入ったマフラーが僕のデスクの上に置かれていた。
もう出かけなければならない時間だ。
「借りてしまおうかな」
マフラーを手にし首に巻いてみる。煙草に珈琲の香が僕を包み込み、思わず深く吸い込んだ。
「おい、Z!」
はっと振り返った。
「それ、俺のマフラー。ごめん間違えてZのをしちゃったよ」
「E先輩のマフラーですか」
「全員に同じ柄のマフラーを支給して間違えちまうよな。イニシャルは小さいし」
「申し訳ありませんでした」
「えっ、間違えたのは俺だから」
マフラーを交換し、僕はZと入ったマフラーを首に巻く。
「どうした。元気出して行こうぜ」
「はい」
E先輩の煙草と珈琲が少佐と同じだとは知らずにいた。
勘違いばかりか嬉しいなどと。
大きく息を吸い込み、申し訳ないがE先輩の香は外に出し尽したい。
「この前は少佐が間違えたんだ。イニシャルだけは同じだからな」
僕は、吸い込んだ息を飲み込んだ。
🌹【秘密】ジェイムズ君より もしかすると同人本に収録したかな??
「僕、おはよう」目を擦りキッチンに向かう。
極上の珈琲豆をミルに入れてハンドルを回し、僕は朝から珈琲を淹れる。
銀盆に並べるのは2人分の珈琲茶碗。
だけど、淹れたばかりの珈琲を注ぎ入れるのは1人分だけ。
「さて、起こしに行くか」
「伯爵、少佐、おはようございます」
少佐が泊まりに来ている。
「珈琲をお持ちしました」
「ありがとう。そこに置いてくれ」
僕は無言でベッド脇のテーブルに2人分の茶碗を置く。1つは伯爵専用、もう1つは客人用のだ。
「ああ、いい香りだ」
挽き立ての珈琲の香りが部屋に充満し、伯爵が満足げに微笑む。
「俺にまでありがとう」
「いいえ。朝食の用意が整いましたら呼びにまいります」
僕はニコリともせずに軽く頭を下げ、部屋から辞した。
少佐の珈琲はもちろんインスタントのネスカフェだ。僕が選んで淹れた珈琲を飲ませるわけがない。
ドアを閉める寸前、茶碗に口を付ける少佐が口端を上げるのを見る。
お互い分かり切った茶番。だが伯爵を前に少佐は口をつぐむ。
僕が少佐をどう感じているのか
僕がどれほど伯爵を愛しているのか
朝、僕の淹れた珈琲を飲めるのは伯爵だけ。
僕と奇しくも共有となってしまった少佐との秘密。
🌹【パリの散歩道】ロレンスより
映画007を観ました。発作的にQとロレンスとの初共演があったとしたら妄想が膨らみました。 ちなみに山吹屋はQ推しです。
ふっ
息を吐き、首に巻いたマフラーをたなびかせる。
パリに来ていた。
私程ではないが、そこそこにお洒落な人々が行き交う。まぁ、私程ではないが。
通販で仕入れた007仕様のスパイ腕時計で時間を確かめる。
4万8900円もした。横のボタンを押すとカメラになり、その横を押すとビデオが回り始める。
反対側のスイッチを押しながら喋ると、指令室でココアばかり飲みドーナツをかじっているであろう上司のLとつながる。
バルト3国からの秘密文書を渡すべく、昼の11時過ぎにフランス空港に降り立った。
何人ものエージェントが失敗し、あの少佐さえもが入手に非常な困難を極めたらしい。
私に言ってくれればいいものを。ペッツとはお絵かき教室で1カ月に1度顔を会わせる仲なのだ。
「おい、」
誰かが私を呼んでいる。
「おい、ロレンス」
「おおっ君は! フランス情報局のすかしたQではないか!」
目の前には明らかに不機嫌な男が1人。
こんな街中で自分の名を暴露されても怒るでもなく無視するでもなく、私を4歩離れて眺めている。
「ふっ、歩きませんか」
「情報はここにはないのか」
「おお、シャンゼリゼ。どこかに美味い珈琲とホットドッグを食べさせるワゴンはないのか」
「珈琲とホットドッグ。そんな暗号は聞いてない」
不審げに見つめてくるQに私は慰める様に語りかけてやった。
「007最新作はみましたか。君と同じコードネームの美青年が出ていたが」
「見てはいない」
ふっ、腕時計をだし、時間を見る。
「さっきから時間を気にしているようだが、何かあるのか。そうか、ここから更なる場所で誰かと落ち合うのか。ならば時間より先に行って周りを窺おう」
私はここぞとばかりにQに流し目を送ってやった。
「本当に聞いていた通りの男だな。ここはシャンゼリゼ。007とホームズの国から来た私と、アルセーヌルパンの国のエージェントがこうやって歩いているんだ。もっと楽しもうじゃないか」
「それはこの通りを2人で歩きたいと言うことか」
いうなり腕を掴み早足で歩き始める。わわわ、足がもつれる。
「この世のロマンが分からないとは。そんなだから少佐と。」
急にQの顔色が変わりロレンスの耳元に迫ってきた。
「この先にネオン街がある。行きつけの店なら20%オフだ」
「何ですと!」
私は胸ポケットからチップを取り出した。
「これにすべては」
「ああっ、いきなり風が!」
いや、風ではなかった。
Qが私からチップをもぎ取り、代わりにちらしを渡してきた。ちらしから顔をあげると、そこにQの姿はすでにない。
「美少年クラブ・シャンゼリセ」
ふっ、私は女が好きなのだ。
仕方がない。このままパリを散歩してロンドンに帰ろう。
Lへの土産にチョコレートでも買っていってやるか。これがエージェントスパイのたしなみというもの。
私はコートの襟を立て木枯らしが吹くシャンゼリゼを後にしたのであった。
🌹【その男、筋肉増強につき】A君より
ゴールデンエッグ 「ブラじゃない!」ベースにしています。
僕は感じた事や考えてしまった事をすぐさま言葉にするタイプではない。一度、心の中に押し込み逡巡する。
だが、この時ばかりは屈辱感にも似た脳内と焦ってしまう身体的な、ともかく僕の口は開き1つの言葉を発した。
「少佐はブラジャーをなさっていたのですか。僕は今まで気が付きませんでした」
それは朝7時に気持ちよく目覚め、美しい妻と2匹のワンコとともに朝食を食べ、いつものスーツに着替えて出社した日だった。
もう一着ぐらい出社用のスーツが欲しいと妻に強請ってみようかと、
冬のボーナス一括払いにしようか3回払いのローンにしようか、
でももしかしたら妻も新しい服が欲しいかもしれないから僕のスーツは安いのでもいいかななどと、
少々早めにNATOに到着したのでエレベーターではなく階段で上がり、情報部のドアを開いた朝9時であった。
「少佐、おはようございます」
「ああ、部下Aか」
僕の他にも既に半数の同僚らが席についており、それぞれ仕事を始める準備をしている。
あとの半数は既に現場だろう。少佐は僕の数分前に来たようだ。上着を脱ぎ、椅子の背にかけようと僕に背中を向けた。
「あれは何だろう」
少佐の背中が妙な感じで浮き上がっている。
ああっ!
「部下Zは来ているか」
「はい」
「ではここに来て手伝ってくれ」
Zが足早に少佐の元に。少佐がYシャツを脱いだ。
その下にはいつも通りのアンダーシャツ。だが、そのシャツの背中の部分が妙な感じになっている。
「ホックが一つしか、はめられていません」
「部下Z、よく気が付いてくれた。何か変な感じだったんだ。アンダーシャツをまくるからはめてくれないか」
「僕はホックをはめるのが上手ではなくて。ああ、でもはめられました。少佐の背中は筋肉で硬いんですね」
「余計な事は言わんでよろしい」
「すみません」
背中をむき出しにしてZがホックをはめた。アンダーシャツも引き下ろし、少佐が整える。
「あれは、」
大きな声を上げそうになった僕は反射的に手で口を押さえた。
どう見てもあれはブラジャーのホックだったのではないだろうか。
それも、僕も見たがダブルホックなのに一つしかはまっておらず、もう1つがぶかぶかになっていた。
「ではきょうの任務を伝える」
Yシャツを着直した少佐が前を向き直った。他の同僚達も動かしていた手を休め、少佐の前に一列になる。Bが僕の脇をつつく。
「A、どうしたんだ」
皆も今のを見ていた筈だ。なのに驚いた顔もなく、メモ帳片手に少佐の今日の任務を待っている。
「本日の任務は、うむ、どうにもサイズが合わないようだ。上にずりあがってくる」
もぞもぞする少佐を見て僕はとうとう我慢ができなくなってしまった。
「何のサイズですか! 少佐、何がずり上がってきてしまうのですか。まさかアンダーシャツの下にあるダブルホックのあれではありませんか」
僕は言い放ち周りに同意を求めたが、だれもメモから目を離そうとせず、彼らの耳は少佐の今日の任務を聞き逃すまいと、僕の言葉など誰もうなずいてはくれない。
「今日の任務だ。部下DとEは昨日に引き続き空港を見張れ。他の皆は先週からの続きだ。ああ、部下G、頼みたい件がある」
「はい。あの例の件ならば、ばっちりですわ」
僕はGをちらり見る。例の件とは。僕は何も聞いていない。
例の件など見当もつかない。それよりも、少佐がYシャツの上から胸の辺りを触っている。また何かがずり上がっているのだろうか。
「あの、少佐。僕は何をすれば」
「部下A。俺はこれから部下Gと行く処がある。部下Zと待機していれくれ」
Gはこれ見よがしに僕に笑みを浮かべ、少佐の横に立つ。その位置は僕のなのに。
「少佐、私がお直しいたしますわ」
「すまない」
そればかりか、少佐の後ろに回り込みYシャツの上から、あの例のホックと横にひろがる布地を下に引き下ろす。
「A先輩、どうされましたか」
Zが僕に話しかけてきた。
「ちょうどいい、大切な話があるんだ」
僕は少佐とまだ何やらしているGを置いて、Zの腕を掴み情報部を出て行った。
「A先輩、こんな場所に僕を連れ出して一体何の真似でしょうか」
「こんな場所って。ただの男子トイレだ」
「まぁ、それはそうですけど。今週は社員旅行で誰もいない経理部のある階までくることでしょうか。それもここは個室の半分が壊れていて普段から誰も使わないトイレです」
「その方が都合が良いんだ」
「一体どうされたのですか」
「少佐の件だ。あの、少佐はいつからその、背中にホックのある例のあれを使用しているんだ」
「例のあれ? ちょっと待って下さい。少佐から呼び出しだ」
やおら胸ポケットから携帯を出す。
「はい、Zです。トイレにいます。いえ、大きい方は家でしてきました。
はい、少佐とG先輩を店まで車で送って欲しい。分かりました。裏の駐車場ですね。すぐに行きます。A先輩、申し訳ないですが」
「僕も付いて行く」
僕だけが何も知らずにいたのかもしれない。
これまで自分は部下筆頭として頑張ってきたつもりだ。少佐の横に立ち、寝食を共にし時には死線さえくぐり抜けてきた。
「少佐、お待たせしました!」
少佐はZよりも先に歩く僕を見て驚いている。
「僕が運転をします。少佐はどうぞ後部座席にお座りください」
「まぁ、いいが」
少佐にGが乗り込む。Zは助手席に座った。
僕は全員がシートベルトを着用したのを待ち、ミラー越しに少佐を見据える。確かめなければならない。確かめずにはいられない。
「少佐はブラジャーをなさっていたのですか。僕は今まで気が付きませんでした。申し訳ございませんでした。
さきほどちらり見たのですが、少佐のブラはトリンプシュリンプのではありませんか。行き先がブラジャーの店でしたら、僕の、否、妻の行きつけで場所は知っています。
さぁ、どうぞ。後部ならばブラがずれたりホックが外れてしまっても、Gに直させれば大丈夫です」
少佐が僕を凝視している。GとZは黙り込んだままだ。
「さぁ、少佐!」
「部下A君、ブラジャーとは一体何の話だ!」
「だから、少佐が付けてらっしゃるブラジャー」
Zが僕の隣で震え、Gはハンカチで口元を押さえた。
「ばかもの!」
「な、なんで、」
「これはブラではない」
「いいえ、それはどう見てブラジャーです。僕は知っています。少佐、新しい扉を開いたのですね。僕は構いません。少佐は僕の上司です。ブラジャーをつけようがパンティを穿こうが」
「ブラじゃない!」
「A先輩、運転ならば僕がしますので席を代わりませんか。このままではいつまでたっても発車できません」
「Zは黙っていろ。部下A君、君は俺がブラジャーをしているなどと言うのか」
「はい。少佐の胸に付いているのはブラジャーです。これからは胸ではなく雄っぱいと呼ばせてください」
「ブラじゃない。これは大胸筋矯正サポーターだ!」
「強制ブラサポーター?」
「違う。胸の大胸筋を鍛えるためのサポーターだ。ブラじゃない。
君は先月の会議で寝ていたのかね。アメリカのごり押しの筋肉を見たか。ミーシャの更に強烈アップしたムキムキは。
あまつさえフランスのQでさえ、ウエイトトレーニングを週2でやっているとほざいた。それも専任のトレーナーを雇っているらしい」
「少佐、イギリスを忘れていませんか」
Zがすかさず入り込む。
「ううむ、部下Z君は言ってはいけない事を言ったな」
「申し訳ございません。ですが、少佐のその大胸筋矯正サポーターもロレンスさんからの紹介で」
「それはそうだ。俺は第一線で活躍中の情報将校だ。筋肉だとて周りに後れを取るわけにはいかないのだ。そんなことよりもプロテインの手配は済んでいるだろうな」
「通販で本日午後に山ほど届きます」
「よろしい」
「少佐、僕の話は済んでいません。それはどこからみてもブラジャーです」
「ブラではない!」
「A先輩、運転を代わります」
Zと入れ替わり、僕は助手席に座る。
「あっ!」
不意によろけてしまい、運転席でシートの位置を直しているZの肩につかまった。
「えっ、Zの肩に」
Zが僕を見る。そうしながら上着の中に手を入れた。
「もちろん自分も少佐とお揃いです」
僕は後部座席のGを見た。
「あたしはオーダーよ」
「まさか、僕以外の全員がブラジャーを付けているのでしょうか。僕以外の全員が雄っぱいなんですか」
「雄っぱいブラじゃない!」
「A先輩、ブラじゃありません」
「いちおうね」
「ブラですよね。どう見ても雄っぱいブラですよね」
「部下Z、発車してくれ。途中でプロテインを買っていく。午後まで待っていられん。BとCも欲しがっていたからな」
頭がくらくらしてきた。
「少佐、納得がいきません。僕は、僕は! それはブラジャーで間違いありません!」
ああ、目の前がぼんやりする。
「部下A、どうしたんだ。部下Z、行き先変更だ。病院に直行だ」
僕は貧血を起こしたらしい。軍病院に数日入院した。BからZまでが見舞いに来てくれたが、Gだけは皆とは別に来た。
「今日の夕方には退院ですって。明日からもう出社だと聞いたわ。それでね、少佐から頼まれたの。メンズブラを選んでやって欲しいって。あたしも詳しい訳じゃないのよ。でも少佐に頼まれたのじゃ仕方がないわ。通販カタログよ」
Gから手渡されたカタログにはムキムキが雄っぱいなどと名目を付けてブラジャーを付けている。
「ブラじゃない。僕が欲しいのは大胸筋矯正サポーターだ!」
明日からの仕事が楽しみでもあり、恐怖でもある。
だが僕は、少佐にブラではなく大胸筋矯正サポーターを欲していることを言わなければならない。
「ブラじゃない! 大胸筋矯正サポーターだ!」
読了ありがとうございました。
この他にもピクシブに少々ですが話を置いています。
お時間のあります時にでも遊びにいらしてください。
山吹屋ピクシブ https://www.pixiv.net/users/13337633