サンドラとジェシカとマイクが豪雪の中不気味なお屋敷に入った時の話

サンドラとジェシカが護衛のマイクと一緒に迷い込んだ屋敷で強制的に、”死んだ人が生き返らない人狼ゲーム”をさせられる。初日はサンドラジェシカとついでにマイクの連携で狼を見破り無事に吊ることに成功。しかし、次の日占い師から残酷な結果を言い渡される。


占い結果、サンドラ黒

 占い師COした2人のうちの1人からそう告げられる。その後、初日に吊ったのは狼だったと霊能のジェシカからみんなに伝えられ、残りの狼は1人であると判明した。サンドラは回避も無く、占いから黒出しされたその状況を見て全員が察した。
”サンドラが黒でも白でも村側は確実に勝てる。”
 サンドラ自身もそう思っていた。そして全員の目線がサンドラへ向けられる。しかし。
「ダメだよ。サンドラは絶対に吊らない。私の唯一の家族なんだから」
 目に涙をいっぱいにしてジェシカがサンドラの前に立ち、両手を広げて庇い始めた。
「サンドラが狼なわけない。絶対にダメ。サンドラに黒出ししたこの占い師が偽物だから吊る」
 ジェシカはそう言って占い師に指をさす。占い師はギョッとしたが、すぐに平然を保つ。
「ジェシカとサンドラが血の繋がっている姉妹というのはわかりますが、自分の感情だけで特定の人物を霊能が庇うなんてこの村終わりじゃないですか?」
 サンドラに黒出しした占い師は、ニヤニヤしながら言う。周りの人間も確かにと同意する声が出てくる。マイクもそれには言い返せない。
「ジェシカ。気持ちはわかるがお前は進行だ。感情で判断したら市民陣営が負けるかもしれない。サンドラを生かしたいなら黒くない要素を拾ってくるんだ」
 マイクのその言葉を聞き、ジェシカは頷きログの精査を始めようとする。しかし、サンドラがジェシカにそっと諭す。

「ジェシカ、今ここで私を吊るべきよ。狩人が占い師を守れば明日確実に誰が狼なのかわかるから。」
 それを聞いたジェシカは首を横に振りながら言う。
「嫌だ」
「ねえジェシカ」
「嫌だ嫌だ」
「お願いジェシカ……」
 サンドラから涙がこぼれる。ジェシカはそれを見て溜めてた涙がこぼれ落ちる。

「なんで……。なんでサンドラに黒出しするの……」
「ごめんねジェシカ、つらい決断をさせてしまって……」
「もう会えないなんて嫌だよ…。嫌だ」
 ジェシカはサンドラを吊りたくない一心で嫌だと言い続ける。サンドラも心の中ではとても嬉しい。しかし、霊能の仕事を放棄してしまった場合、それこそ市民陣営の全滅もあり得てしまう。サンドラは1つの決断をした。
「ジェシカ…」
 サンドラはジェシカをマイクの所へ突き飛ばす。
「え、サンドラ急に…、え!?」
 サンドラから突如耳としっぽが生えてきた。人狼COしたのだ。
「はあ。お涙ちょーだいでなんとか吊り回避できたりしてって思ったけど、周り誰も何も言わないし諦めるわね。私吊れば終わりだからバイバイ」
 そう言ってサンドラは一人で処刑部屋へと入っていった。ジェシカはそれを見て更に涙を零す。
「サンドラに…、つらい思いさせちゃった……」
 ジェシカもサンドラを追いかけて処刑部屋に入っていった。
「サンドラ……指定……」
「うん」
 ジェシカは大声で泣いた。サンドラも静かに涙を零しながらジェシカを抱きしめる。

 サンドラは一人処刑台に立つ。全員が見ている中で処刑を行うのがルールだが、個人の意向もあってマイク以外は部屋から出ていた。
「マイク、ジェシカをお願いね」
 マイクはだんまりしている。サンドラが処刑台に立ち、GMが拳銃を構える。
「待ってくれ」
 マイクがサンドラの処刑を止める。
「サンドラの処刑、俺に任せてくれないか」
 マイクは真剣な表情で頼み込む。それを了承したGMは拳銃をマイクに渡す。
「どうして私を処刑したくなったの…?」
「処刑したくなったとかじゃねーよ。したいわけないだろ」
「じゃあなんで?」
 マイクはサンドラの手を握った。サンドラの手は震えている。
「吊りを飲むって言ったってさ、死ぬのは怖いに決まってるだろ。お前狼なわけないしさ。俺が手を握っててやれば、少しはマシになるかなと思っただけだ」
 サンドラはそれを聞いてきょとんとする。
「なんだよ」
 そしてクスクスと笑い出した。先ほどまで震えていた手が治まった。
「マイク、すごく優しいんだね。ありがとう。でも、手を握りながらその人を処刑するって結構なサイコパスよ?」
 そう言ってサンドラは握り返す。マイクは確かにという表情で何も言い返せない。
「ジェシカをお願いね……」
 マイクは頷き、サンドラは目をつむる。そしてマイクの手を強く握りしめた。その握り締めた手からは死にたくないという思いが伝わってくる。マイクもその手を強く握り返す。そしてもう片方の手で銃をサンドラに向けた。