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246.商品にケチをつける奴は、それを買う奴だ。

助手の秋田君とはオンライン会議したりもするのだが、その時こんな話を聞いた。なんでもamazonジャパンがCMに保守的とされる国際政治学者の三浦瑠麗さんを使ったので、会員登録をやめる呼びかけが起こったというのだ。

これを聞いて私が思うところは、amazonはこれで儲けたな、ということだ。会費が年間45ドル程度(¥4,900)だとのことだがこの騒動で一体いくらの人が会員をやめたのか。実際の会員数の規模から考えればかなり微々たるものだし、これで悪評が広まってということも考えにくい。
実際アマゾン側はこの騒動によって、件のCMも取り下げてはいないし、そうするつもりもないだろう。

さて、私だったらどう考えるか、という仮定の話を考えてみよう。

まずCM に出た政治学者の三浦さん、彼女はあくまで学者であり本来タレント業を生業にしている人ではないとしてギャラは少し安い目に抑えられていると考えられる。賛否ある人物の起用で議論を起こすことは広告効果がある。そもそも国際的に見てやや極端ではあろうがそこまでおかしいスタンスでもないので、amazon的には何が問題にされたのかわかっていない可能性もある。
また、ある考えを持つ人を起用したからといって、起用した側がその考えを支持しているということではないというのがamazonの考え方なのかもしれない。例えば映画俳優のトム・クルーズさんやジョン・トラボルタさんはある新興宗教の熱心な信者であることが知られているが、だからといって彼らの出演した映画が必ずしもその新興宗教を広めるためのものではないのと同じことである。

ネットの炎上というものはもっとひどいものでも数週間もあれば収まっていくものだ。たかがCMのタレント起用程度で離れていくような客はもともとamazonにとって利益のある客でもないので、まぁ放っておいてもいいという程度の考えなのだろう。
やはり、商売をするなら、離れていく客をつなぎとめるより、炎上があっても残る顧客を大事にしたほうが利益につながるのは明らかだ。この騒動でアマゾンプライムを知って加入する会員が増えればそれで十分だろう。

さて、ここで別の話がある。以前にアマゾンプライムのホーム画面がプライムビデオで番組を持つタレントの松本人志さんで埋め尽くされるという事件があった。そうならない人もいたので、サジェスト機能/ターゲッティング広告機能で表示を操作しているというところで、何かシステム的な不具合という部分もあったのかもしれない。
ただ、この画面がSPAM状態に陥ってしまったことに対して、さすがにこれは不快だと思い、クレームのメールを入れた人がいたらしい。するとamazon側は300円のクーポン券を配布したという。その話が広まると追随して同じことをする人が続出したという

ここで300円配るのにamazon側は特に躊躇はなかっただろうと思われる。会員に残っている以上いずれ回収できるカネであり、300円で何が買えるかといえば結局なにかの買い物の足しにするわけで、損して得取れ的な話ではある。画面がSPAMぽい程度でクレームを言ってくるということは、その部分に文句があるだけで他にはおおむね不満がないという意見の表明でもある。結局はいい客であり、やはり300円ならお安いことである。500万人の日本の会員全てに配るなら相当な額になるが、それでもamazon的には安いだろう。
というのはよくある話だが、話には続きがある。

この広告騒動の原因は、サジェスト/ターゲッティング広告機能にあったのではないかという予想だが、まぁ外れかもしれない。しかし、この仕組みは画面に見えるものよりかなり高度に制御されており、AIの発展などによってさらに高度化されていくのだろうと思われる。さっきの松本さんの広告騒動についても、クレームで「これを表示しないでくれ」といったら、ちゃんとその要望が聞き入れられた人もいたというので、やはりその辺を加味するような操作ができるようになっていると思われる節もある。

利用者が購入しそうな商品を先回りして個人別にカスタマイズして広告を出す、高度な分析をするこの仕組みだが、購入・検索・視聴の各履歴を基本として分析しているようだ。各画面への滞留時間や購入決定までの時間、購入するものの価格帯、amazonのクレジットカードを使っていればその決済履歴や支払い状況なども要素として利用しているかもしれない。

この仕組みにより個人レベルで広告がカスタムがなされているというのは、別な言い方をすれば、他の人には違う広告が表示されているがそれを知ることはできないということでもある。
つまり、内部的に顧客にスコアをつけて顧客の購買行動が最大になるように広告を表示する。まさかamazonが本当にやるとは思わないが、同じ商品を人によって値段を変えて表示したりすることも可能だろう。
そこにすでにやっているタイムセール、さらに選ばれた会員様だけの特別セールみたいなものも加えれば、価格の1%やそこらを人によって上下させたところで他人が同じものをいくらで買ったか知ることはだんだんできなくなっていき、ついには新しい価格破壊が始まる。儲けを出すに割と有効な手段かもしれない。


※助手からひと言
 相手によって値段が違うというのはインド式商習慣には時々ある話で、同じものであっても持つ人によってその価値は違うという考えをベースにしている。インドの商人気質を持つ人がamazonを動かし始めているので、価格も個人カスタムされる日は遠くないのかもしれないね。

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